第154話 1周年記念配信⑧

茶葉「さて、マネージャー部門もそろそろ終わりと言うことで」

つぼみ『いや~、来ちゃったね』

茶葉「来ちゃったよ。ここからは私ら2人が選定したクリップですね。順番どうする?」

つぼみ『凪ちゃんからいこう』

茶葉「おうけ~い。じゃあまずは凪ちゃんの迷シーンから行きましょうか。マネージャーは私です!」


 順番を間違えてしまったようで、威力の強すぎた梓ちゃんのせいで他のシーンがかすんでしまったが、とうとう私らが選んだシーンの番がやってきた。互いに互いのマネージャーをしている私達は、マネージャー部門でも切り抜きを選定している。

 スタートは凪ちゃんのクリップから。




『いや~、疲れたね。まさかここまで時間が掛かるとは……』


茶葉「これは凪ちゃんがフルーツゲームでスイカ耐久をしていたときのやつだね」

つぼみ『凪ちゃん下手すぎて結局10時間かかっちゃったやつね』


『なんかいつの間にか太陽登っててテラワロス』


元配信コメント

:さすがに下手くそ

:マジで長かった

:ニートで良かったぁ、あやうく会社に遅刻するところだったぜ

:できた瞬間の発狂草

:さすが茶葉ちゃんの担当だけはある

:相当掛かったね


『そうだね。さすがの私もこんなに掛かると思ってなかったわ。まあじゃあそろそろ配信切ろうかな』


――♪


『んぐっ、ちょっとまって……』


 配信を切ろうと伸びをしたところ、配信に耳なじみのある音楽が載ってしまい、凪ちゃんが驚きと笑いの混じった変な声を出した。


元配信コメント

:wwwww

:草

:そりゃあ6時だもん

:健康的で草

:体動かそうぜ

:いいやん

:もうこのまましよう


『うん、そうだね。ほらみんな立った立った! 私もやってやるよ!』


 そう言うと、軽快なピアノのリズムと共にのびのびと背伸びの運動を始めた凪ちゃん。つられるようにリスナーのみんなも体操を始めたようだ。


『ラ○オ体操とか久しぶり~、この時間は寝てるか港の方にいるからなぁ』


 そこから配信には服の擦れる音のみがしばし乗っていたのだが……、突如として地響きのような大きな音が鳴り響いた。


『ぐわぁぁぁあッ?!』カランコロン……


『いて~ッ!』


 ジャンプの運動で思いっきり飛び上がった凪ちゃんの頭に吊下げ灯が激突し、バランスを崩した凪ちゃんは机に激突。机の上に置いてあったステンレス製タンブラーが思いっきり地面へと落下した(本人談)。


『……やっぱり室内でやることじゃないわ』





茶葉「と言うシーンでした。あの後DMに散乱した部屋の写真が送られてきて絶句したね」

つぼみ『私このシーン知らなかったけど、なかなかのカオスだね』

茶葉「でしょでしょ。家の近くに体操をやってる広場があるって言うのも田舎ならではで結構好き」

つぼみ『凪ちゃんの家マジでドドド田舎だからね~』


 凪ちゃんの家は緑豊かな人口100人以下の小さな島だ。この豊かな緑だからこその光景なのだろう。




茶葉「じゃあ次はつぼみのクリップだね」

つぼみ『いや~、なんかはずかちい……』




『エェ、ナンデ?』


元配信コメント

:なんかロボットみたい

:これはこれでおもろい


『オモロクナイワッ!』


つぼみ『あー、これか!』

茶葉「これマジお気に入り」


 そう思わず笑ってしまいたくなるほど、私は頻繁にこのクリップを見返している。

 これはまだSunLive.ができる前の雑談配信にて発生した珍事なのだが、機械の不調でつぼみの声がロボットのようになってしまった事件だ。


『エー、ドウシタライインダロ……』カチッ カチッ


 なにやらマウスを弄っている音が聞こえるが、その音でさえロボットのような音がしてこれまたシュールだ。



『アァ⤵デキタ⤴?』


元配信コメント

:悪化したwww

:wwwwww

:もうこれでいいだろw

:これでやろう

:草

:マジでロボットで草

:w

:おなか痛いwwww


『モォ~⤴! ナンデ~~』ドンッドンッ


ザザザッ、ボッ!


 イライラしてきた香織が思いっきり机を叩く音が鳴り響くと、若干のノイズが入った後、ボンッと言う大きな音が鳴った。コメントはそれに驚いたようなものであふれている。


『あ! できた!』ア! デキタ! ア!デキタ!


『できてない……』デキテナイ……デキテナイ…


『なんかめっちゃハウリングみたいになっちゃった』ナンカメッチャハウリング……



 それから、パソコンをカチカチ弄るような音がするが、その音がひたすらに反復され、配信はいつの間にか元の音が何だったのかも分からない電子音で満たされた。


元配信コメント

:【桜木つぼみ】ごめんなさい。ちょっとマイクが壊れちゃったみたいなので今日の配信はここで終わります





つぼみ『あれマジで原因何だったんだろう』

茶葉「だね。すぐマイク交換したよね」

つぼみ『ちなみにこの配信中断コメント打ったの茶葉ちゃんなんだよ~、これ初耳学ね』


 結局あの後ソフトとかそういうのを弄ってみても一向に回復せず、急遽新たなマイクを買いに行ったんだよね。原因は未だに不明だが、なかなかの面白さで私は結構好きだ。








つぼみ『じゃあ最後、茶葉ちゃんのやつね』

茶葉「マジで最悪」

つぼみ『じゃあ流しまーす!』




『あ~、あ~、えっと、聞こえてますか?』


茶葉「おい、ちょっとまて」


『えっと、皆さん初めまして? あ、え、あれ? あ、初めましてじゃないかも……? こんにちは。今日から個人でも少し活動してみることにしました、桜木つぼみの裏方の茶葉です。どうぞよろしくおねがいしますっ(照)』


ドンドンドンッ!


茶葉「ちょっとまって、本当にダメ」

つぼみ『いやいや、さっき私の初配信見たでしょ? 私この動画保存しててたまに見るんだよね~』

茶葉「今すぐ消せッッ!!」

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