第153話 1周年記念配信⑦

*後半若干閲覧注意です。ダメだと思ったタイミングで飛ばしてください。


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『うへへっ、ちょ、ちょっと見ても良い……?』


茶葉「おいいきなりこれかよ!」

つぼみ『終わった』


『きもいぞオタクって、いやいやいや、せっかくご厚意で作って下さっているのだから、見なかったら作者に失礼でしょ』


 早速1つ目の映像。某アニメの美少女フィギュアを持ってキョドっているのは鷹治百合である。

 元々狂人枠として採用したものの、彼女のイカれぶりは日に日に増しているように感じる。


『で、では失礼しやス~……』


『んほッ、あ、あら~、エッティだね……』ハスハス……




茶葉「えっと、リスナーコメント『この配信を機にコイツのネジが外れました。Goサインを出したのは誰でしょうか』とのことです」

つぼみ『茶葉ちゃんだね』

茶葉「……まさかこんなになるとはおもわないじゃん」


 ……切り抜きの内容に関しては是非察してほしいのだが、まあつまりそういうことだ。まあもちろん一種の楽しみ方ではあるものの、初めての実写手元配信でやることではない。

 そして、単純に気持ちが悪かった。


 なお、当時はまだ私が全員のマネージャーを兼任していたときであったが故に、Goサインを出したのは私である。


茶葉「まあ軽く説明すると、これは鷹治百合がフィギュアを画面外で逆さまにしてしたから見ている場面ですね。時折混じる鼻息が非常に気持ち悪い場面です」

つぼみ『実はこれ2人でリアタイしてたよね』

茶葉「してたね。結構空気凍ったぞ」






……一方その頃


百合『ねえちょっと待って、マジでいきなりこれ?』

梓『でた~~』


 休憩と言いながらも朱里のチャンネルで垂れ流されている楽屋トークはカオスその物であった。

 玲音ちゃんの笑い声が響き、百合ちゃんの弁明の騒ぎ声がこだまする。


朱里『大丈夫だよ。私もやるから』


 もちろん、朱里のフォローも虚しく。である。








茶葉「はい。数が多いのでサクサク行きますよ。お次の映像はこちらです」



『ご飯おいしかった? う~ん、そうだね……、まあ別に言われてるほどマズくはなかったよ』

『何食べた? えっとね。あ、でも結構パスタとか食べたよ』


元配信コメント

:パスタはイタリア料理であり、イギリス料理と混同しないでください!!

:↑イタリアニキキレてる?


『え? あ、え? パスタってイギリスじゃない?』


元配信コメント

:イタリアのパスタはおいしい💢


『えー、イギリスの食事、イギリアン? あれ? 普通にイギリスのご飯か。えっとね、パスタってイタリアンか』

『他何か食べなかった? えっとね、パンとかは食べたけど、あ! フィッシュアンドチップス? って奴おいしかったかも』


『でも別にそんなに言われてるほどマズくはなかったよ。中華料理とか!』


元配信コメント

:そりゃ中華だもんwww

:イギリス料理じゃねぇ


『でもでもでも、あの時計台? 良かったよ! アイアムアイみたいな奴』


元配信コメント

:ロンドンアイな。時計台はビッグベンだね

:本当にイギリス行ったの?





茶葉「えっと、これは撫子ちゃんがイギリス旅行に行った後の雑談配信だね。イギリス旅行で食べた料理の例でパスタを上げたからイタリアニキからちょっと怒られちゃったんだよね。リスナーからのコメントは『イタリア人の食へのこだわりが見えたワンシーンでした』とのことですね」

つぼみ『これあとでイギリス料理って何があるんですかって連絡来て混乱したよね。後で切り抜き見てことの経緯を知ったよ』

茶葉「うんうん。ちなみに後から聞いた話だけど、スターゲージパイは思ったよりおいしかったそうだよ。ただあの白目と目が合う感覚は食欲が失せるって」

つぼみ『結構ぎょっとはするもんね~』








茶葉「はい。じゃあここまでリスナーさんから送られてきたものを何個か見てみたけど、ここからはマネージャー目線で面白かったものを紹介していきましょう。マネージャーさんはそれぞれ裏話とかもたくさんつけているみたいだから、そういうのも紹介していきます!」


つぼみ『じゃあ一つ目どうぞ~』




『そうなのよ。でね、動かした棚の裏側から変な小豆みたいな奴出てきたんだよね』


 マネージャー編トップナンバーは梓ちゃんである。表面はしっかりしているが私生活は案外ずぼらな彼女が部屋の大掃除をしたことについて雑談配信で話している。


『まあでも小豆っぽくはなかったんだよね。とりあえず掃除機で吸っといた』


元配信コメント

:ちょっとまって、それマジでやばくない?

:掃除機で吸っちゃったの?!

:早く潰して!!!!

:wwwwwwwwwwww

:終わりで草

:1匹いたら100匹いるとおもえ

:草


『え? なに?』


元配信コメント

:多分それGのたまごだよ。多分掃除機の中で孵ってるんじゃない?


『……ぅ』



つぼみ『最悪』


 あまりのひどさに思わず漏れてしまった最悪という一言。なおまだ切り抜きは続く。



『……ねぇ、私どうすればいいと思う?』


 半泣きのような声で呟く梓ちゃん。もうどうしようもない。


元配信コメント

:終わったな

:こまめに部屋を掃除しなさい

:燻煙式の殺虫剤が良いんじゃない



『よしわかった。こういうときのためにいるんだと思う』


 そういうと、梓ちゃんは黙り込んだ。そして、アバターが動く様子から何かをしているのが伝わる。


『もしもしマネージャーさん?』

『嫌ですよ』

『……見てました?』

『ええ。嫌ですからね』

『私も嫌ですが』

『そうですか』

『……』

『……』



『ね"ぇぇぇェェ"ェ"、お願いします!! どうにかしてください!!』

『ムリですよ!! 本当に嫌です!!』

『後生、後生ですから!!』





茶葉「人間って醜いですね」

つぼみ『梓ちゃん……』


 そう配信がどんよりとした空気になると、静かな配信にピロリという電子音が鳴った。


梓『ねえぇぇぇえ!! ちょっと本当に最悪! 私の株を下げようとしていますか?!』

つぼみ『割と手遅れ?』

梓『くっ……、まだ私のリスナーの人にしかバレていないと……』

茶葉「どうも梓さん。おつかれさまです」

梓『敬語やめてください』

茶葉「えっと、こちらのことはよろしいのでお部屋の片付けに行かれては?」

梓『今はきれいですから――』


 そう言い残して帰って行った。


茶葉「えっと、まあ一応マネージャーさんのメッセージがあるんですけど、長いので映し出しますね。ご自分でお読みください」




『今でも鮮明に思い出せます。もともと久しぶりに掃除をするというメッセージを頂いたときから何か不穏な空気は感じていたんです。背中がぞわぞわするような、そんな雰囲気です。ですがやはり彼女は割としっかりしている人です。社会経験も豊富であり、掃除を始めればとことんきれいになりますから。なのでなんとかなるだろうと思っていました。しかし、やはりどうにも不穏な空気は私の周りを取り囲んでいたんです。ふと、掃除が終わったあとの雑談配信を開いたとき、ちょうどそのシーンでした。やはり私の予感は間違っていなかったんだと、そこで確信したのです。それからはもう怒濤でした。このシーンの後、見ていた方なら分かって頂けるように配信はすぐに終わりました。その後の連絡はなく、安心していたところ、彼女は事務所に自分で車を運転してやってきました。そのときの彼女は、彼女は片手に長細く、そしてビニールで厳重に包まれた棒状のものを持ってきたのです。掃除機でした』


つぼみ『掃除機でした(絶望)』


『もちろんその掃除機には例の小豆が入っています。彼女はオフィスに入ってきてそれを我々に見せびらかしながらこう言いました。今から私はこのビニールを開封します。と。正気かと、本当にそう思いました。今すぐその掃除機を投げ捨てて、深い土の中へと埋めてやろうと思いました。ですがその掃除機は企業様から案件で頂いたものであります。そして、もしこれを放り投げてしまえば数日後、オフィスの近くでたまごが孵るのです。SunLive.プロダクション株式会社はすべての業務を停止しました。従業員の何人かは近くのコンビニまで走り、大量の殺虫剤を買ってきましたが、急いで調べたネットの情報では、卵には殺虫剤は効かないということでした。我々は締め切った会議室の中でそのビニールを開け、ゆっくりとそれを取りだしたのです。幸い、まだ孵っていなかった卵をしっかりと踏み潰しました。その日、梓さんはオフィスに泊まりました。そして翌日、私を含めたSunLive.社員の数名で梓さんの自宅を訪れ、殺虫剤を炊きました。確かに片付いていてきれいな部屋ではあったものの、ここには奴がいる。そのような気配を感じ、我々の緊張はマックスでした。以後、私は2週間に1度彼女に部屋の写真を送るように指示しています』


茶葉「お疲れ様でした……」

つぼみ『これもうボーナスいるでしょ』

茶葉「間違いない。後で社長に言っておく」


コメント

:【SunLive.公式】派遣メンバーには特別ボーナス出したけど、今の話を聞いてさらに出したくなりました。


 部屋の掃除はこまめにしよう。 

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