第146話 1周年へ

 自宅配信が決まった翌日。急ピッチで作業が進められている。


「ファイル届いてますか?」

『大丈夫です。映像確認をお願いします』

「はい」


 限定公開で配信をつけ、東京のスタジオと連絡を取りながら準備を進めていく。雨風の音がうるさくいつもの配信部屋では音が乗ってしまうので、防音室で配信を行う。 

 防音室にも配信用の機材は揃っていたが、いつもと多少環境が変わってしまうので細かい調整を行った。


 ちなみに今の外は曇りで風が強い。雨は降っていないようだ。

 大きな台風はまだ上陸すらしていない。ここからが本番なのだ。台風は今日の夕方あたりに静岡に最接近し、明日の記念配信の最中に東京に着くようだ。


 昨晩はあの後香織が永遠と電話をかけてきて、大泣きしながら『配信には出ない』だとか、『今から浜松に帰る』だとか、本当に止めてほしいことばかりを言っていた。

 お陰で少し冷静になれた。香織が私の代わりに泣き叫んでくれなければ、今頃私は部屋でうずくまっていただろう。こうやって配信準備ができているのは香織のお陰だ。


 私が3Dで出られなくなってしまったことで、内容に大幅な変更があった。それの対応でみんな忙しいらしく、今日はスタジオに来ない予定であったみんなも急遽スタジオ入り。そして台風が接近しているために今日はみんな泊まりらしい。


「ふう……」

『お疲れ様です。昨日は眠れましたか?』

「ダメだね。外がうるさすぎる」


 調整が一段落し、通話に神田さんがやってきた。神田さんはどうやら今日はずっと働きっぱなしらしい。私以外の全員が泊まりになったのでその準備とかで忙しいそうだ。


「昨日はありがとう。連絡がなければ案件をすっぽかしてたかも」

『あれはしょうがないですよ。元々なかった仕事ですから』

「はぁ……。ほんとだよね。こっちの事情も汲んでほしかった」


 私が昨日行った案件配信は、急遽私のスケジュールにねじ込まれたものであった。先方が絶対この日にやってくれと要望を出してきたらしい。ゲームのリリースとか、そういった事情から昨日ではないとダメだったようだ。

 予定にある程度余裕があった梓ちゃんに変えるという案が出たのだが、どうしても私じゃないとダメなんだという要望の多いこと。あれがなかったら今頃私は東京にいたのだ。


 正直あの配信中は私も焦っていたのでほとんど覚えていない。案件先から大興奮で感謝電話が来たらしいので成功はしたみたいだが、最悪な気分。


『そういえば先輩がオフで出ないということをそろそろ告知しないといけないみたいなんですけど、自分でやりますか? 一応私に任されているんですが』

「ああ、確かにやらないとね。私にやらせてほしい」

『分かりました』







茶葉ちゃん @chaba_Sakuragi

 【1周年記念配信についての御報告】

 台風の影響でスタジオ入りができず、私だけオンラインで自宅から配信に参加するということになりました。その影響で私の3Dお披露目は延期になります。

 楽しみにしてくれていた皆さん、本当に申し訳ございません。本当にただひたすら悔しいです。

 記念配信は内容の一部変更等ありますが、概ね予定通り行います。






 私のこのつぶやきにはすぐにたくさんの反応が来た。中には私の配信でよくコメントをしてくれている人や、同じVTuberのみんなもいた。

 しかしどれも温かい言葉ばかりだ。


 →千把まい☆彡てらなど2期生 @Maimai_senba

  台風なら仕方がないです……。なにか手伝えることがあれば連絡ください……!


 →礼文梓【SunLive.】 @Azusa_SunLive

  みんなのママ役、任せてください。成長を見せますよ~!!


 →ネタミ @netami0_0

  大丈夫。安全第一だよ





「頑張らないとな」


 別に配信に出られなくなったわけではない。ただみんなと同じ空間にいないだけ。なにも心配する必要はない。ここまで綿密に準備を重ねてきて、ただ場所だけが異なってしまったという話なのだ。

 リスナーは怒ったりはしない。私のことを待ってくれているのだ。だからそれに答えなければ。




 →桜木つぼみ @Tsubomi_Sakuragi

  私達はただ楽しむだけだよ!頑張ろう!!








======あとがき======

いつも読んでくださってありがとうございます。ついに1周年記念配信が始まります。作者としましてはなんとか5月12日に間に合ったといった感じです。というのも、『VTuberの裏方仕事』も12日で1周年なのです。いつも読んでくださりありがとうございます!

本当は12日に1周年記念配信のラストを持ってきたかったのですが、勉強に加えて腱鞘炎になってしまいましたので間に合いそうにありません。執筆ができないわけではないのですが……。なのでこうして記念配信前の話で書かせていただきます。


1周年記念配信で完結なんて言うことはありませんが、私としてはここで1段落付くかなぁと言う感じです。章の変わり目といった感じでしょうか。

この作品はプロットなどを作らず、キャラ達に自由に動いて貰うという形で執筆しています。なので1話時点での思い描いていたイメージとは大分異なっているなぁと感じています。設定忘れたりいろいろガバガバなので一度全話修正したりとかもしたいですね。


配信ネタややってほしいこと、大募集しています。どしどしコメントください!誤字脱字報告や矛盾点などの指摘、いつもありがとうございます。非常に助かっています。

一部コメントにしか返信できていませんが、しっかり読んでいます。いつもありがとうございます。これからはもっとたくさん返信していきたいです。


長々すみません。これからも私のこと、私の作品のこと、どうぞよろしくお願いします。

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