第127話
「自分でつったからかわからないけどおいしい!」
調理を済ませ、みんなで魚の塩焼きを食べている。
香織がいったように、自分が釣った効果を加えて非常においしい塩焼きになっている。
塩焼きにしなかった分は下処理をしてしまってある。事務所に着いたらみんなに配ろうと思っている。
この様子はもちろん動画に載るので、話しながらわいわい食べている。
香織がお酒を飲みたそうにしているが、この後車の運転なので押さえ込んでいる。ていうかまずお酒を持ってきていない。
食事を終えた私たちは、カメラを止めて帰りの支度をしている。
既に締めの挨拶なども取り終えていて、後はデータを持って帰るだけ。
「もし良かったら事務所ついたら3人でコラボ配信しない?」
釣りの道具を片付けていた凪ちゃんがそう言った。香織はその言葉を聞いてうれしそうに良いよと返事をしている。
「汐ちゃんは?」
「……ごめん。私午後から玲音ちゃんとオフコラボだ……」
「まじか~!」
私は先日約束したコラボ配信を今日の午後から玲音ちゃんとしようと決めていたのだ。
集合が3時なので、今から戻っても配信をできるほどの余裕はない。
どうして次の日配信があるのに私はここでキャンプっぽいことをしていたのだろう……。と思うが仕事なのでと割り切る。
「じゃあ夜からなら~?」
「……お泊まりなんだよね」
「あちゃ~!」
今日の配信はお泊まりオフコラボである。
3時頃に集合して、そこからいろいろ2人で作業した後に8時頃から配信する予定。
作業というのは以前から玲音ちゃんのマネージャー経由で私に話が来ていた仕事だ。その打ち合わせを今日やってしまおうということ。
大まかな内容は既に玲音ちゃんのマネージャーと済ませているので、それの確認と最終すりあわせといった形だ。
玲音ちゃんとは私ともそこそこ年が離れているが、所属Vの中では年齢が近い部類に入るのだ。
元々社会人だったけれどやめてVTuberになった子とかもいるからね。
だから一度しっかりお話ししてみたかった。この前電車の中でしたけど、それだけじゃあ足りない。
「うーん、配信何時からがいいかな……」
「私たちの配信と時間を合わせなければ玲音ちゃんのマネージャーがつける、かも? 後手が空いてたら私もモデレーターやるよ」
「じゃあちょっと玲音ちゃんのマネージャーと連絡取ってみる!」
「マネージャーがVTuberだとちょっと大変だね~。そうしたの私だけど!」
「そうなんだよ。やっぱり私は裏方に徹するべきだった」
「え? 汐ちゃんが裏方に徹していたら凪塚美波は誕生してないぞよ?」
「……」
しばらくして、連絡担当の香織のターン。
「
「じゃあ3時からにしよ~!」
曵埜さんとは、玲音ちゃんの担当マネージャーさんである。
現在の時刻はまだ業務時間外であるが、返信をしてくれたらしい。ありがとう。
「じゃあ事務所に着いたら私が話通しておくから。玲音ちゃんに関しても話すことあるし」
「りょうかーい!」
「じゃあ、よろしくお願いします。あ、冷蔵庫に魚が入っているので良かったら持って帰って下さい」
「え、あ、魚ですか?」
「そう魚。私と香織と凪ちゃんの3人でさっきまで釣りに行ってたやつ」
「あー、なるほどなるほど。大分釣ったんですね」
「そうですそうです。玲音ちゃんの家にも持って行こうと思うんですが、大丈夫かな……?」
「多分大丈夫だと思いますよ」
事務所に戻ってきて、一通りの片付けを終わらせた後に曵埜さんと少し打ち合わせのようなものをしている。
最近業務の半分以上を個人勢のサポート事業が占めているのだが、その事業で曵埜は才能を発揮している。彼女は話を聞くのが上手で、仕事のペースも速い優秀なマネージャーだ。
要領が良く、会話がスムーズに行くので話していて楽しい。
「私まだ玲音ちゃんの家って行ったことがないんですよ。どうぞ親御さんによろしくお伝え下さい」
「はい。それにしても玲音ちゃんって本当に現役女子高生なの驚きじゃないですか?」
「できた子ですよね。己の使い分けが上手いといいますか。マネジメントしててやはりやりやすいですね。個人勢の子達も良い子が多いのですが、年齢を考えると玲音ちゃんは凄いですよ」
私は個人勢のサポート事業にほとんど加わったことがないので、正直どのような人たちをサポートしているのかあまり知らない。
しかしバリバリ仕事をしている曵埜さんが言うのだから凄いのだろう。
「では、3時頃からのモデレーターお願いします」
「はい。何かありましたら電話しますね」
「うちの2人がお世話になります……」
「は~い。お世話しますね~」
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