第119話
眠りについたのが遅かったと言うこともあり、翌日はお昼手前頃に目が覚めた。他の社員さんはみんな既に出社して仕事をしているみたいだ。
私は1期生と言うこともあって他のスタッフに比べて仕事の量が非常に少ない。
そりゃあスタッフとしての仕事ももちろん持っているが、書類仕事をしている暇があるなら配信でもしてなさいという社長の意思を感じている。
香織はまだ寝ているみたい。
彼女は寝起きがあまり良くなく、いつもだらだらとお昼頃まで寝ている。今日はきっと午後のよくわからないタイミングで目を覚ますと思う。
ひとまず仮眠エリアのキッチンに常備されているコーンフレークをサクッと食べ、下の階へと降りることにした。降りれば何かしらの仕事があるはずだ。
「おはようございます」
私がそう言うと、仕事をしていた社員さん達は一度こちらを見て挨拶を返してくれた。その中、一人の女性が私の方へと急いでやってきて話しかけてきた。
「昨晩はありがとうございました!!」
律ちゃんの担当、西原さんだ。西原さんは今、私の下について本社でのマネジメント業務の管理を任されている。
つまりはうちの会社のお偉いさんというわけだ。
「いやいや、大丈夫大丈夫。公式配信開けで疲れていただろうし、急に始めちゃったから」
「いやー、申し訳ない! 起こしてもらえれば全然マネージャーしましたよ!!」
「いやいや悪いよ。西原さんにはこっちでの仕事をいろいろと任せちゃってるし」
この会社に西原さんが入ってきたときは香織みたいに脳天気な人で、正直大丈夫か不安を覚えたこともあった。
ただ、物事の吸収能力に長けていることに加えて、臨機応変に対応出来る彼女の柔軟さで、あっという間に仕事に馴染んだ。今では社内で最も信用出来る人の一人だ。
「あ、そうそう、私やることないから手伝えることとかあれば全然手伝うんだけど、何か仕事ある?」
ここで話していても迷惑になるだけかなと思って仕事があるか聞いてみたところ、西原さんは待っていたかと言わんばかりに満面の笑みを浮かべた。
「え、まじですか! だったらちょっと手伝ってほしいことが……」
そういうと、付いてきて下さいといって私を会議室の1つへと案内した。
会議室の中へ入ると、その机の上に2つの段ボールが置かれていた。
「これは?」
「新作グッズなんですよ。これから量産する予定なんですが、試作が送られてきたのでいろいろ意見が欲しくて」
「あー、なるほどなるほど」
どうやら箱の中身に入っていたのはまだ発売前のグッズの新作らしい。どうやらこれの検品であったりというのをしないといけないらしく、1人でやっても良かったのだが意見が聞きたいと言うことらしい。
「どうしてマネージャーの西原さんが検品を?」
「タレントに一番詳しいのは常に関わっているマネージャーでしょうと社長がおっしゃいまして」
「あ~、つまり押しつけられたと……」
私がそう言うと、頬をかきながら苦笑いを浮かべた。
「まあ、そんなところです……」
西原さんが持ってきていた段ボールカッターを使って2つの段ボールを開封し、早速中身を取り出してみる。
「今回は何を発注したの?」
「メインは3期生の子達のグッズですね。アクスタにアクキー、缶バッチなどなどですね。他にも2期生のものもありますし、もちろん茶葉ちゃんのありますよ」
「えー、聞いてないかも……」
「あはは、じゃあこれが初見ですね~」
どうやら私のグッズも含まれているみたいで、少しドキドキする。先ほど上げられた3つ以外にもいくつかの種類があるみたい。
タペストリーや、ぬいぐるみなんて言うものもある。凄い。
グッズの販売を始めてから相当売れ行きが良いみたいで、グッズを販売しているお店なんかに卸したりもしているそうだ。それからうちで作ってはいないが、別の会社がグッズを作るための使用料とか、そう言うのでグッズ関連の売り上げは相当あるそう。
「じゃあ早速見ていきましょうか。変なところなどありましたら教えて下さい」
「了解」
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