第118話 律ちゃんコラボ②

茶葉「私は準備良いよ」


 ギターを膝の上にのせ、開放弦でギターを一度鳴らす。

 足下にはマルチエフェクターが置かれているが、これからの雰囲気を考えながらゴリゴリに歪ませてと言うよりは、全体的にクリーンな音で行きたい。

 睡眠導入のような、そういった感じで。


律「じゃあ先輩の合図で」

茶葉「おーけー」


 律ちゃんも準備が良いみたいだったので、ギターの位置とかを軽く調整して早速曲を始めることにする。

 曲を始める際、ドラムがいないときなどは弦に軽く触れてミュートをした状態で4拍のカウントを取ることが多いのだが、今からやる曲にはイントロがあるため、不要と思い省略する。


 そうして始まった曲は非常に落ち着いた雰囲気の曲。私の好きな曲だ。

 この星の未来を願うような、そういった美しい歌詞の曲。


 前奏もそろそろ終わりという頃、律ちゃんは一度私に目を合わせ、小さく頷いてからマイクへと向き直した。


 そうして律ちゃんが紡いでいくメロディーは爽やかで、ただひたすらにきれいだった。










茶葉「じゃじゃ~ん……と」

律「やっぱり茶葉先輩ギター上手ですね」

茶葉「ありがとう。律ちゃんも歌上手だね」


コメント

:マジで鳥肌立った

:初めて聞いたけどめちゃくちゃ良い曲じゃん……

:幻想的すぎる

:声透き通りすぎでは……

:美しさが限界突破してる

:ていうか茶葉ちゃんのギターがきれいすぎる

:狂いがない

:音楽の相性良すぎない?

:完璧

:涙出た

:素敵

:曲選も神過ぎる


 私のお気に入りの曲と言うこともあって、感情が入りすぎていたかもしれないのだが、律ちゃんは完璧にそこに合わせてくれた。非常にやりやすかった。


律「ひとまず1曲目はおしまいですね。今のはドラマの主題歌だったかな。次はアニソン行きましょう」


 1曲目が終わり、打ち合わせ通りに2曲目に入る。

 先ほどの曲は私はそのドラマを見たことがなかったのだが、どうやらドラマの主題歌だったらしい。

 次の曲は有名なアニメの劇中歌だ。卒業のシーンの時に流れる奴だけれど、私も非常に好きな曲だ。

 正直私はアニメ見たときに号泣した奴だ。カラオケで歌うと毎回泣きそうになるんだよね。


茶葉「じゃあいくね」

律「はい」











 あれからいくつかの曲を演奏していったが、リスナーのみんなの反応は非常に良かった。

 正直初めて一緒に演奏するとは思えないくらいに、律ちゃんとの音楽は私にぴったりマッチした。

 声の質というのか、はたまた歌い方というのか、そういったものが私の理想にぴったりマッチしたのだ。


つぼみ「ブラボー……、ちょっと良すぎて盛り上げ役すっぽかしちゃった……」

律「ありがとうございます。私もあまりにも歌い易すぎてビックリしました」

茶葉「私もだよ。本当にバッチリフィットだった」


 あのとてつもなく楽しかった演奏、どうやら律ちゃんも同じことを思っていてくれていたみたいだ。


つぼみ「正直もっと聞いていたいかも」

律「私ももっと演奏してたいです」

茶葉「ちょっともっと時間があるときにちゃんとやりたいね」


 まだ30分しか配信はしていないが、時間的にももうこれ以降の配信続行はやめておいた方が良いだろうという判断に至っている。

 なぜならば明日は律ちゃん学校があるし、私たちもせっかくオフィスに来ているのだからいろいろしたいわけで、オールをしようという判断にはならないわけだ。

 なのでこのタイミングで配信自体は切ることになるだろう。

 ただ絶対またやりたいと思う。


コメント

:マジで良かった

:泣いたかも

:ぐっすり寝れそう

:神だった。

:めちゃええやん

:えっと、公式配信の振り返りは……


つぼみ「あ、公式配信の振り返り!」

茶葉「あ」

律「あちゃ~……、すっかり忘れてましたね」


 そろそろ配信を閉めようという流れにしていたのだが、ここでようやく公式配信の振り返りをすっぽかしていたことに気がついた。


茶葉「えっと、軽く振り返りをしようか」

つぼみ「個人的にツボだったのは茶葉ちゃんの縄跳び無双かな」

律「あ~! アレは面白かったです! 目の前で少女がえげつない速度で縄跳びするんですもん」


 律ちゃんが香織の話に反応して笑いながらそういう。せっかく良い気持ちだったのだが……。


茶葉「えっと、少女とは? 私の方が年上では?」

つぼみ「うははっ! 確かに――」


 私がそう言うと、香織が大爆笑しながら煽りだそうとしたのだが、それを遮るように律ちゃんが叫び声を上げた。


律「えぇ?! 先輩年上なんですか?!」

茶葉「えっと、年下だと思ってた?」

律「はい……」

茶葉「私今22だよ。あと少しで23になるよ」

つぼみ「あー、誕生日すぐだもんね」


 私の誕生日は7月20日。もう1ヶ月もしないで誕生日なのだ。そうしたらもう23歳。

 高校卒業からこのままこの業界に入って、もうここまできたもんだ。


律「嘘でしょ……、私21歳ですよ……」


コメント

:合法ロリwwwww

:犯罪臭がしてて草

:www

:うそだろっっっw

:23歳なの?!


茶葉「まだ22な」


 まさかの年下に見られていたことに、多少のショックを覚えたのだった。     

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