第116話
「じゃあ何して遊ぼうか」
「そうですね……、私としては是非歌で行きたいですけど」
「あー、いいねいいね。じゃあ歌の配信でもする?」
「え?! 配信するんですか?! 今からですか?!」
会議室に集合した私たちは、今から何をするかの話し合いを始めた。
当初の予定ではただオフで遊ぼうという話だったのだが、せっかくおなじVTuberで遊ぶのだし、今ここは事務所だと言うこともあるので、配信をしようかという流れに無理矢理持って行った。
まあ理由としては、私が久しぶりにちゃんと配信をしたくなったからだ。
先ほど公式配信をしたとは言え、公式配信と普段の配信では感覚が大分違うのだ。だからその感覚を味わいたい。
なんというか、リスナーとの距離が近いんだよ。
公式配信となると全員で一緒に進行していくわけだから、勝手にコメントを返したりすると進行が止まってしまって全体的にぐだぐだとした配信になってしまう。
ただ、こうした個人配信であったり少人数のコラボであればコメントに返信したって良いわけだ。
一種の公式配信振り返り配信のようなモノをしたいなっていう。
「カラオケ配信とかですか?」
「そうだね、それもいいんだけど……。あ、そういえば倉庫にあったかも……」
律ちゃんは普段の配信で主に歌を扱っている。カラオケ配信が非常に多いVTuberだ。ただ、カラオケ配信だけだと単調になってしまうので、ゲームもやっていたりする。配信頻度はSunLive.の中だと現状少なめだ。まだデビューしたてと言うこともあるが。
カラオケだと普段の律ちゃんの配信と内容がかぶってしまうと言うわけだ。
そんな私は事務所の倉庫にとあるモノを放置していたことを思い出した。そのため、それを取りに一度会議室をでる。
この前まで私と香織はここに住んでいたわけだ。引っ越しの時に荷物を減らすため、いくつかの私物を事務所の倉庫の中に置かせて貰っていた。
「えっと、どこだったかなぁ……」
先ほどの公式配信で使われたモノをしまうために、つい先ほどこの倉庫が一度整理されたみたいで、倉庫の中身は比較的整っていた。ホコリかぶっているというのもなく、普段から使われている部屋という感じだ。
そんな部屋の奥の方に、私が探していたモノを見つけた。それ以外の周辺機器はおそらくスタジオに置かれているのでそれだけを持って行く。
「ごめんお待たせ」
「汐ちゃん何を探してたの?」
「ああ、これこれ」
「えっと、ギターですか?」
「そうそう、エレキね」
引っ越しの時、何本かあるギターのうちの1つを誰でも使って良いよと言うことで事務所において行っていたのだ。
今まで私は4本のギターを買ってきた。私が2回目に買ったギターを置いていったのだ。
ケースを開けて中からギターを取り出す。
「レスポール、ですか?」
「本家じゃないけどね。私はこの形状が一番好みなんだよ。どうかな、私が弾いて律ちゃんが歌うって言うのは」
「いいですね! 楽しそう!」
私がやりたいと思ったのはカラオケ配信ではなく、2人バージョン弾き語りみたいな、そういうことをやりたかったんだよね。
今は時間的にも夜で、今からカラオケってなると配信内容としては少し重いかなと思った。
本当はアコギがあれば良かったのだが、エレキで音を調整すれば大丈夫なはずだ。
ローテンポで少し落ち着けるような配信をしたい。
「ちょ、ちょっとまって、私の仕事は?」
ある程度やる内容について固まってきたと思ったら、香織がそうぶっ込んできた。
そう、この場合香織のやることがないのだ。
「歌えば?」
「ハモリとかどうですか」
「いや、マラカスだな」
「ねぇ! ひどいひどい! ハモリやりますー」
「ハモれるの?」
「……マラカスで、っていいたいところだけど、完全に雰囲気をぶち壊す気しかしないから、曲の合間合間の進行役で……」
香織も決して歌が下手なわけではないが、律ちゃんと比べると多少劣る。ハモろうにもいきなしハモれるほどの才能は私と香織は保有していない。
かといってマラカスをやると曲の雰囲気を壊してしまう可能性がある。なので進行役にすることにしたのだ。
「じゃあ準備しよう」
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