第111話 全員集合配信⑤

 その後もいくつかクイズを行った後、お題が変わってSunLive.に関係するクイズが出るターンになった。


社長「まあね、SunLive.に所属するみんななら全問正解ですよね?」

つぼみ「楽勝」


 もちろん楽勝である。私がどれだけSunLive.に時間を割いてきたと思っているのか。

 そう自信満々に腕を組んでいると、凪ちゃんが不満そうに声を上げた。


美波「私たち不利じゃ――」


 確かに加入が遅い3期生達は少し不利かもしれない。とは言っても私たちと1年も離れていないのだ。つまりは……


朱里「甘いッ!! 甘すぎるぞッ!!」

茶葉「そうだそうだ! 面接で語ったうちへの愛は嘘だったのか?!」


コメント

:面接www

:メタイなぁwww

:凪ちゃん面接なんだ

:急に叫ぶからビックリした。

:ワイもこのクイズミスる気しない


玲音「あれじゃないか? 面接用に勉強してきてたはずだから、逆に有利?」

柄爲「ちょっと! 勉強とか言わないでください!」

律「公式配信……?」

社長「あはは、ほどほどに~……」









社長「気を取り直して、早速第一問!」


 相当尺をとったガヤガヤもなんとか静まり、早速クイズ大会再開である。


社長「第一問。SunLive.プロダクション株式会社の“元会社”の設立はいつでしょうか」

百合「は?! 元会社?!」

つぼみ「あ~、掛川電気システム株式会社のこと?」

玲音「しらねーぞそんな会社!!」


 この会社は元々VTuber事業を行うために作られた会社ではない。とある地で家電製品やパソコン関係の仕事を行うために設立された掛川電気システム株式会社の業務形態が徐々にWEB開発に切り替わり、途中で香織の両親が代表をしている会社の傘下に組み込まれたわけ。

 その後に、香織が事務所を作ると言うことで事業を分割して今の会社を設立、元々あった掛川電気システム株式会社はその後に本社に吸収合併で消えたというわけ。

 いろいろややこしいが、元をたどればこの会社は、実際にはVTuberとはまったく関係のない別の会社。


 もちろんそんなことを他の人たちは知っているわけもなく、スタッフも頭にはてなを浮かべているし、タレント達から非難の嵐が聞こえる。


社長「いいから早くしてね~」

律「わかるわけね~」




社長「回答出揃いました。うんうん、2022、2013、1922年、みんな大分外しているね。じゃあ答えドン」


 そう言って正解としてオープンされたのは、私とつぼみと、まさかまさかの朱里であった。


社長「正解は、1998年! 茶葉ちゃん、つぼみちゃんとまさかの朱里が正解!」

「「「えええぇぇ!?」」」

朱里「まあ、こんなもんよ。SunLive.への愛があれば楽勝かな?」


 そうニヤニヤと笑っている。


社長「1期生2人はさすがだね」

つぼみ「まあ、うちの会社のことなので」


 おそらく香織のこの発言はSunLive.のこともあるだろうが、親の会社がメインだろう。


梓「朱里ちゃんなんで合ってたの?」

朱里「だから、愛の力だよ」


 そう格好つけながら言っているが、どうせ適当に答えて当たったのだろう。


玲音「適当だろ!」

朱里「っ……、ふーん、負け犬の遠吠えが聞こえるけ~」

柄爲「先輩見苦しいです~」

朱里「んぐっ、ま、まさか柄爲ちゃんに……」

茶葉「柄爲ちゃんってそういうこと言うんだ……」

柄爲「え!? あ! せ、先輩違います!!」


 あー……。


社長「こほんっ。次言ってもよろしいでしょうか?」


 キャラ崩壊の現場をなんとか押さえるために社長が無理矢理話を遮った。


~~~~~~~~~~


社長「次の問題です。2期生のデビュー配信があったのは何月何日でしょう」

玲音「楽勝だな」

撫子「ん。さすがに間違えない」

柄爲「予習済みです~」


 みんな楽勝そうにペンを走らせている。あ、マウスか。

 もちろん私も楽勝。なんて言ったってあの日は私がほぼ一人でマネジメントをやっていたのだから。あの大変な日々、思い出しただけで血を吐きそう。


 サクサクと回答が出揃っていく中、一人だけ明らかにわかっていなさそうな顔をしながらマウスを動かすものがいた。


???「ん~~~……」









社長「さすがですね。もう一気に正解を発表! 正解は10月2日でした! もちろんみんなせいか……、ん?」

???「ッスーーー……」

玲音「先輩……」

百合「お仕置きでしょこれ……」


 10人中9人が正解。つまりこの中に間違えた人がいるというわけだ。


つぼみ「本当に申し訳ございませんでした……」

茶葉「お前!! 私がマネジメントしてるからって部屋でゲームしてただろ!」

つぼみ「ゲームはしてないの! Webサイトとか公式SNSとかで忙しくて、日にちまでは覚えてられなかったの!」


 つぼみは大事な大事な日を覚えていなかったようだ。

 もちろんみんなから白い目を向けられていたが、確かにあのときはゲームなんてしていられる余裕はなかったしなぁと思った。


玲音「懐かしいな。我が輩初配信の後サムネ作ってないのに気がついて……」

茶葉「あ!! そうだよマジでふざけんな」

梓「え? どうしたんですか?」

茶葉「玲音ちゃん一斉デビューの後その日のうちに個人配信したでしょ? そのサムネが2時間前の時点でできてなくて、急に私に頼んできたんだよ」

朱里「うわ、さいてー」

玲音「本当に申し訳ない」


 玲音ちゃんはそう言うと私の所へ歩いてきて土下座しだした。


茶葉「いや、そこまでは――」

律「こ、これがパワハラ……」

茶葉「違う! 違うから!!」

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