第102話 合流
「もう着いてますよっと」
表示が旅客降機中になったため、チャットアプリでメッセージを送って置いた。服装も伝えてあるため、こちらに気がつけば寄ってくるはずだ。
了解という返信も帰ってきているので、そろそろ合流できるはず。
今日は連休中というわけではないので、人は少ない方だと思う。それでも空港というのはいつも人がいるわけで、いろいろな人がいて非常に面白い。
こういうときに人間観察をしていればあっという間に時間が過ぎていくので、私は人を待っている時間も結構好きだ。
飛行機を降りた瞬間に感じる空気の違い。鹿児島と東京だとどのくらいの差があるのだろうか。
東京と沖縄とかだったら大分差があるだろうけれど。
そう考えごとをしながら人間観察をしていると、明らかにそれっぽい人を発見した。
セミロングくらいの黒髪で、全身日焼けをした人。
まだ梅雨にも入っていないというのに明らかに夏用の格好をした人。ただ、私が予想していたよりは幼い印象。
20歳を超えていて酒飲みと言うことから、やさぐれたお姉さんみたいなのを想像していたんだけど、高校生? みたいな感じだった。
胸がないって言っていたけれど、まあ確かにぼいんって感じじゃないかなっていう。私よりは……。って、これはいいんだよ!
私は多分あの人が凪ちゃんだと思う。
スマホを弄って何かを確認しながら辺りをキョロキョロとしている。
そんな姿をぼーっと見ていたら、一瞬目が合ったような気がする。そしてニコニコしながらこっちにてくてくと走ってきた。
「あの、浅海さんをご存じでしょうか?」
「うん。私」
「あ! よかった! 私です私!」
「やあ凪ちゃん。思っていたより幼いね」
「そお?」
「もっとやさぐれ残念美人を想像していた」
「なにそれ!!」
どうやらこの人が凪ちゃんだったようだ。
話してみてすぐわかった。確かに私の脳内で想像していた人物像はこのしゃべり方には合わないや。こんくらいはっちゃけてそうな人じゃないとね。
「で、はっちゃけるのは良いけど、何その格好?」
「あー、ちょっと寒いなって思ってた。あっちは梅雨入りとかしててね、結構蒸し暑いから」
そういいながら着てきたタンクトップの胸元をパタパタとする凪ちゃん。
「あ~~!! コラっ!! ダメダメダメー!」
今は寒いのになぜか胸元をパタパタするし、明らかに露出度が高いし……。
「明らかにその格好はおかしい! ほら、羽織って!」
そう言って私が着ていた上着を着せた。そのままだとわきもへそも出てて寒そうだし、なにより怪しい人とかに目をつけられそうで怖かったから……。
「あら、ありがと」
「はぁ……。ここは島とは違って全員が顔見知りというわけじゃないからね」
「わかった」
これはなかなかお転婆な娘だ……。
「事務所までは電車?」
「そう。乗り換えは1回だよ」
「へー。島にはバスも電車もないから久しぶりだな~」
「あれ? 鹿児島は?」
「鹿児島ではバスに乗ったよ。でも電車は本当に久しぶり」
来た電車に乗り込み、早速事務所へ向かうことにした。
「いやぁ、それにしても本当にちっさいね」
「うるさいな」
そういいながらニヤニヤとこちらを見てくる凪ちゃん。人のことを言えたもんではないなと思う。もしかしたら仲間を見つけて喜んでいるだけなのだろうか。
「いやぁ、私今めっちゃドキドキしてる。東京って憧れだから」
「たしかに。私も初めて東京来たときはドキドキしたかも」
「まず島からあんまり出ないからさ、島って何もないけど何でもあるんだよね。出る必要がないって言うか」
「そっかぁ」
何もないけど何でもある? 矛盾しているように感じるけど、なんとなくわかるような気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます