第101話

 現在時刻は午後4時。ここからの今日1日は会議等はなく、私たちは自由にしていても良いと言われている。ただ、香織は明日の配信内容についての確認がしたいとスタッフさんを捕まえて会議室で打ち合わせを行っている。

 マネージャーである私が行かなくても良いのかという疑問が出るだろうが、私は私でやりたいことがあるので今回は社長に任せている。

 会議の内容に関してはスタッフさんに後ほどメールで送って貰うようにお願いしてあるため、参加しなくても別にたいした問題はない。


 今からおよそ2時間後、凪ちゃんが羽田空港に降り立つ。凪ちゃんは移動に長い時間を掛け、天候によって船が出なくなることもあるために、余裕を持って今日にオフィス入りするという形になっている。1日できても良かったのだが、それだと羽田空港到着が午後10時を回ってしまうと言うことで、前日は鹿児島で泊まって今日の飛行機で来る。

 正直私はオフィスまで凪ちゃん一人で来て貰うというのが不安で不安で仕方がないわけだ。

 多分大丈夫だと思うけれど、あまり島から出ないし、都会に行くときは九州に行くと行っていたので、東京をちゃんと移動できるのかが不安なわけ。


 オフィスの最寄り駅から羽田空港までは電車で1時間半かからないくらい。ここから駅まで少し歩くと言うことを考えて、今から出て電車で迎えに行くことにした。

 キャンピングカーで迎えに行くのも考えたのだが、ぺーぺーの私がいきなり東京の道を運転できるわけがない。そのため座っているだけで目的地へと運んでくれる電車で移動をすることにしたわけだ。




 そうしていざオフィスを出て迎えに行こうというタイミングで、西原さんが飛ぶようにこちらへとやってきた。


「先輩! 1人で大丈夫ですか!?」

「大丈夫だよ!!」


 私の見た目が幼いからって、1人で電車に乗れないなんて考えは大間違いである。

 羽田空港は何回も行ったことがあるし、乗り換えだって1回きり。西原さんは少し私を心配しすぎだ。出会った頃の香織のよう。






 そんなこんなで、電車に乗って羽田空港の方向へと進んでいる。オフィスの最寄り駅は始発駅のため、座席の一番端、袖仕切りの横に陣取って座っている。

 ここが私の定位置。袖仕切りに寄りかかるようにしてスマートフォンを弄るのが電車の中でのルーティンなのだ。

 羽田空港までは途中駅で乗り換え一回。乗り換え案内アプリでしっかりとルート等も検索済みで、乗り換えはどの号車に乗るのが一番早いかというのもしっかり調べてある。

 ICにお金もしっかりチャージして、スマートフォンにイヤホン、念のためのモバイル充電機にお財布など。しっかりと荷物だって持ってきている。


 少し前に凪ちゃんから飛行機に乗ったという連絡が届いている。

 凪ちゃんは鹿児島空港からこちらを目指して飛行中。もしかしたらまだ空を飛んではいないかもしれないけど。

 飛行機という物は凄いもので、鹿児島から羽田までを100分でつなぐという。さすがは科学の力である。




 そんなこんなで、もちろんトラブルなんてあるわけもなく、私は羽田空港第2ターミナルの到着ロビーに着いたわけだ。


「凪ちゃんが乗っているのは……、この飛行機だね」


 電光掲示板におそらく凪ちゃんが乗っているであろう飛行機の表示が出ていた。途中大雨で荒れていたみたいだが、ほぼ定刻通りの到着だそう。船もしっかりと出て、こちらもトラブルなく到着したわけだ。

 あとは合流できるかどうかという問題。まぁ普段の言動から凪ちゃんがどんな人かの想像が付いているので、おそらく大丈夫だ。

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