第94話 部屋割り
「ここが新しい家かぁ」
最寄りの駅からは徒歩十分。近くにコンビニがあって、2階建ての良い感じのおうち。そこそこの大きさの畑があって、少しくらいなら野菜とかも育てられるかもしれない。今のところその予定はないが、企画とかでやってみても面白いかも。
車を買うことを見越して、駐車場もしっかり用意してある。しかも2台止められる屋根付きの駐車場。
元々誰かが住んでいて、それを家主さんが軽くリフォームしてくれた家。なので築年数に比べてきれい。
東京に比べて家賃も安く、自然が多くて空気も澄んでいる。基本的に夜中は自動車などの音が聞こえていた東京とは違い、ここら辺は夜中になると虫の鳴き声が聞こえてくるだろう。
のどかで良いね。
「おお! 案外広いかも!」
6LDKの家。トイレは1階と2階に1つずつの計2つ。朝の忙しい時間もこれで安心だ。
まあ私たちは朝忙しくないけど。
6つの内の3つの部屋は畳で、掘りごたつなんかもある。そのうちの2つの部屋は襖で仕切られているので襖を開けて1つの部屋として扱うことも可能だ。
2階には部屋が3つある。1つは畳で、他2つはフローリングだ。
「じゃあ部屋割りとか考えてみる?」
「そうしよう!」
部屋の数が今までよりも多くなった。2つ前に住んでいた家は1階建てで、部屋数は3つ。それに比べると2倍に増えた。
「畳の部屋は来客用かなって思ったんだけど……」
「でも冬とかは掘りごたつもあるし、どっちにも使えるようにするのが良いんじゃないかなぁ?」
とまあ、こんな感じでくつろぐ間もなく部屋割りだ。
「まあ、いったん荷物置こうか」
「それもそうだね~」
リビングの端っこの方にとりあえず持ってきていた荷物を置いた。
部屋割りが決まった。揉めたりはせずに結構サクッと決まったよ。
我が家は2階の3部屋の内、畳の部屋を私たちの寝室にすることにした。そこに布団を敷いて寝る形だ。本当はベッドをこっちで買おうと思っていたのだが、大きな家具を買わなくて済むというのは非常に楽だ。
そして、もう1つのフローリングの部屋は香織の配信部屋となる。
2階のあまりの1部屋は後ほど。
1階は3部屋中2部屋が畳の部屋で、例の襖を開けると1部屋になる奴だ。
そこを配信部屋には出来ないので、あまりの1部屋、フローリングを私の配信部屋というか、作業部屋にした。仕事場だね。
本当は2階に2人の配信部屋を置きたかったのだが、同時に配信をしたときに声が入り込んだりしたらいけないと思ったので、1階と2階で分けることにしたのだ。
それぞれ思い思いに機材を大量に詰め込んだ配信部屋を作ろうと思っている。
私は作曲とかをするので、それ関連の物をたくさん置きたいなと思っている。
香織は一角を自身のオタクスペースにして、いろいろなグッズを飾りたいと言っていた。配信のモチベーションが上がるから凄く良いと思う。
どうせ実写を撮ることなんてめったにないと思うのだが、配信者っぽくグリーンバックなんかも買ってみたりしてね、ちょっといろいろやってみたい。
昇降のデスクを置いて、立って仕事なんかしてみたりね?
さて、後に回した2階のあまり部屋。しっかりと用途を考えてある。
この部屋には防音室を設置して、声を出すような配信を出来るようにしようと思っている。
例えば歌ってみたとか、そういう感じの物だね。大きめの防音室を設置して、オフィスにあったようなスタジオを簡易的に再現しようと思っているのだ。
多分今後コラボ配信なんかでこの家に来てくれる人もいると思う。そのときに配信部屋として使えたりとか、多目的なスタジオにしたいのだ。
あとは楽器の演奏もここでしたりね。
私たちはこの家を、本気の配信ホームにしたいと考えている。配信が仕事になっている以上、家はそれに特化して打ち込めるような体制を作るべきだ。
こっちに引っ越してきたから配信の質が下がったなんて言うのはあってはならない。
回線も極太の物を引いてくる。機材だって場合によっては東京のオフィスを頼っておくって貰ったりもする。私たちはこの場所で今まで以上に本気で頑張るんだ。
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