第90話
私は桜木つぼみと凪塚美波の担当であるが故に、今絶賛デビュー配信中である尾鳥柄爲の配信を見る必要はない。見たって別に仕事があるわけでもない。
がしかし、見ないわけはないだろう。
なんて言ったって私はSunLive.の創立メンバーの1人。そんな人が自社から出る新人の配信を見ないわけがないんだよ。
「また新しいキャラクターだね~」
「そうだね。ロリだけど玲音ちゃんとは違う感じだね」
内の会社には既にロリ枠として柊玲音がいるわけだが、この尾鳥柄爲はその玲音ちゃんとはまた異なったタイプのロリとなる。
玲音ちゃんは厨二病キャラ。もう既にその皮は剥がれてしまってきているのだが、それでもある程度は厨二病としてやっている。
柄爲ちゃんは静かなキャラクター。おとなしくて良い子だね。
『私は主にゲームをやっていきます。戦うゲームじゃないから、育成ゲームとかやりたいかなぁ』
コメント
:育成ゲームいいね~
:うんうん
:ゲームするんだ。おじさんと一緒だね
:かわいい
:ぴょこぴょこしてて可愛いね
:育成か。育成されるんじゃないの?
:タコ娘みたいな?
『そうそう! タコ娘やりたいなぁ』
タコ娘とは、タコを美少女に擬人化した作品で、タコのトレーナーとなって一人前のマッチョに育て上げるゲームだ。最近とても流行っている。
最近アニメも放送されて、それも非常に評判が良かったそうだ。
タコはマッチョになって他の美少女タコたちとボディービルディングで戦っていくんだよね。どこを重点的に強化していくかで結果が変わっていくから相当面白い。
「なるほどね~、柄爲ちゃんはこういうタイプかぁ」
「鷹治っぽい?」
「そうだね~、百合ちゃんタイプかも!」
この手のゲームは鷹治百合の舞台だ。鷹治百合は基本的に美少女には目がないので、こういう美少女が出るゲームをひたすらにやっている。この事務所に入ったのも美少女を食べるためだし、SunLive.のやばい奴。
そんなやばい奴は美少女が出るゲームをやり、気持ちの悪い発言をしては切り抜かれている。
朱里よりも鷹治の方が狂人だという認識もあり。
「道を踏み外さないで欲しいね~」
「まったく同感」
出来ればこの可愛いままでいて欲しいが。
「一安心、と言ったところでしょうか……」
「そうだな。お疲れ様」
「はいぃ、ありがとうございます」
初配信が終わり、下の階に降りてみると机の上でぐったりとなっている神田さんの姿があった。なんとか初めての新人を送り出し、ぐったりとしている様子だ。
「伸びも良いです。登録者もフォロワーも右肩で伸びてますから。でもやっぱり凪塚美波を抜けない」
「ああ、そりゃこの私がマネージャーですからね~」
「はい、本当に凄いです……。やっぱり長年の経験と言いますか、配信をしていると言うのも強いのでしょうか……」
「あ、あれ~?」
冗談のつもりで言ったのだが、これは相当気にしているっぽい。別にここまで成功しているのだから良いじゃないかと思ってしまうのだが。
ていうか凪ちゃんの成功に関して私はほとんど何もしていない。彼女が自分でいろいろと考えて、SunLive.で発生した不祥事をきれいに片付けてくれた。その結果として付いてきたリスナーだから、特別私が何かをしたというわけではないのだが。
「まあ今はとにかくお疲れ様。相当疲れているでしょう」
「そりゃあもう疲れましたよ。心臓がドッキドキ。私は仕事が出来ていたのでしょうか、覚えていないのでわからないですね」
普段はきっちりとしている神田さんがここまでぐでっとなっているのが非常に珍しい。それほどまでに身体的にも精神的にも疲労がたまっていたのだろう。
「しばらくは尾鳥さんの配信予定はある?」
「いえ、ないですね。彼女も疲れているでしょうから、しばらく開けてから配信をしようと言うことになっているんです」
「じゃあ休みを取っちゃいなよ。有休使っちゃってぱーっと遊んできな~」
「なるほど……、前向きに検討します!」
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