第83話 緊急会議

「どどど、どうしましょう!!」

「どうしましょうと言われても……、とりあえず投稿を消させないようにだけ連絡しておいて」

「え!? 消させないんですか? 早く消した方が……」

「ここで消したら明らかに言ってはいけない情報だったってことがバレるでしょ。ここはあたかもどうせすぐ公開する予定だったから口止めしていない。みたいなのを演じるのが良いんだ」


 さて、面倒くさいことになった。

 幸い今回公に出してしまった情報が個人情報とかではなくて良かった。どうせ3期生の情報は公開されるし……。

 ひとまず朱里はSNSをいったん使用禁止にさせている。該当の投稿の削除もなし。

 本当に不幸中の幸いだったのが、『凪塚美波』というフルの名前ではなく、あくまで『凪ちゃん』としか出回っていないこと。

 これならいくらでも収集……、収集付くかなぁ……。

 

 ひとまずは呼べる人を集めて社内会議だ。









「と言うことがありました」

「なるほど……」


 会議室に人を集め、今後の対応についての協議を行っている。ひとまずVTuberのみんなに関しては予定通りの配信及び活動を行うことで、それ関連のコメントがあったら「3期生の子だね~」といった感じで上手く濁して貰うように言ってある。

 ただ、できるだけ拾わないように。あまり拾わなすぎるとそれはそれで怪しまれるからたまに拾う程度という感じ。


「ひとまず情報は早めに出すことにしようか」

「そうですね……」

「凪塚さんのデビュー日ってある程度そっちで決まってる?」

「それが、2週間後を予定していて……」

「そうか……、できるだけ早めにデビューして貰った方が良いのだが」


 幸い出回ったのは名前だけ。今後の対応次第では予定はほとんど崩れずにいける。

 でもそのまま2週間後のデビューというのはどうなのだろうか。私たちも初めての状況過ぎて対応が分からない。

 デビューは2週間後だが、キャラアバターなどの発表が2週間後であると入っていない。別に明日発表して2週間後配信でも良いわけだが、今後の『凪ちゃん』投稿の広がり次第では怪しまれる可能性もある。


「あ、すみません。メッセージ来ました」




『凪塚美波 4/08 19:06

 なんか私の情報がネットに出回ってる!! どうすればいいの!?』

『茶葉 4/08 19:06

 どうやら鬼灯朱里が情報を漏らしたようです。今社内協議中ですので、そのままお待ちください。詳しいことは会議が終わり次第お伝えいたします』




「とりあえず返事をしておきました」

「わかった。デビューはどれだけ早められそう?」

「そうっすね……、浅海さん、正直凪塚さんがどのような計画を立てているのかが分からなくて……」

「はい。2週間の準備期間の間に、デビュー配信用のスライド等を準備したいと言っていました」

「汐ちゃん、凪塚さんは会議に呼べるかい?」

「……ちょっと連絡取ってみます」


 ここは当事者を交えて話したほうがいいだろう。こちらで勝手にデビューの方針を決められるよりは、自分も交えて行われた方が凪ちゃん的にも安心なはず。

 まさかまさかの事態で凪ちゃんも相当心配しているはず……。






 急いでメッセージを送り、なんとか会議に出席して貰えることになった。

 あまりにも驚きすぎて酔いが覚めてしまったらしく、デビューの予定が早まる可能性を考えて、一応準備を急いで進めているとのこと。

 ゆっくり作る予定だったスライドも、量を少なくして急ピッチで作成中。オープニング映像はひとまずは保留中だとのこと。


『はい、凪塚です』

「凪塚さんですか? この度はうちの朱里が大変ご迷惑を……」

『いやいや、全然大丈夫なんで。それより、私に良い案があるんですけど聞いて貰って良いですか?』


 彼女が言うには、通常通りのデビューでは『凪ちゃん』という名前の一部情報だけであらぬ噂を流されてしまう可能性があって、デビュー後しばらくは配信活動に影響が出るのではないか、下手すればそのままずっと引き摺るのではないか。と考えているらしい。

 だからなんとかしてでもそうならないよう、急いでデビューをする。それも予定とは大幅に異なる形で。だからそのために、最低限の配信準備をしながら案を考えていたそう。

 でもその大幅に異なる形って言うのはどういう物なのだろう……。


「そうか、聞かせて貰っても良いかい?」

『はい。この失敗をコメディーチックに仕上げませんか?』

「「コメディーチック?」」

『はい。私の初配信を鬼灯先輩の謝罪配信にしましょう』

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