第82話 事件発生
「モデル送りました。テストしておいて下さいっと」
『凪塚美波 4/08 14:24
ありがとう!!』
『茶葉 4/08 14:25
あ、そうそう。そろそろ打ち合わせしたいので、空いている日時を教えて下さい』
『凪塚美波 4/08 14:25
今海の上! 陸に戻ったらメッセ送ります~』
ん? 海の上?
『いや~、大量だわ~』
「あー、釣りに行っていたんですね」
『そそ、マルアジ大量! もう下処理終わってるから後でフライかな~』
大分初めて通話したときから印象が変わった気がする。仲良くなったって言うことで良いんだろうか。
うん、多分大丈夫だと思う。なんていうか、だるがらみをしてくる近所のお姉さんって言う感じ。多分お酒飲んだら面倒くさいんだろうなぁって思っているけど、これはこれでやっぱりリスナー受けはいいと思う。それに話していて面白いしね。
「そういえば、モデルのテストやりました? 送ったカメラとかの機能確認とかもお願いしたいんですが」
『ああ、順調順調~。やっぱり凄いよね。憧れの桜木先輩に描いて頂いた絵が、パパの力によって動く。なんというか、涙腺が刺激されて……』
というと、なぜか途端に泣き出した。
「あの~……、お酒飲んでます?」
『グスッ……、うん……』
あ~、やっぱりね。
『ごめんね~茶葉ちゃん……。私ったら年上なのに……』
「あー、はいはい。分かりましたから」
(あ~、こりゃ今日はもう無理だな……)
ここからしばらくは彼女のネガティブ話を聞かされ……、時々元気を取り戻したと思えば号泣しだし……。これはもう典型的な酔っ払いだな。
彼女の様子を見る――、見る? 聞く?
聞いている限り、これはもう打ち合わせが無理だと確信した。初めのうちはなんとか理性を保っていたみたいだけど、完全に飲まれていったな。これはしばらく泣き止まない。
「はぁ……。これからアジフライを作ると言うことは油を使うんですよね?」
『うん……』
「本当に気をつけて下さいね。今日はなそうと思っていたことはまた後日話しますから」
「あれ? 汐ちゃん打ち合わせは~?」
「ああ、凪ちゃんが酔っ払ってて無理だった」
「あ~、弱いからね~」
私もお酒はあまり強くないのだが、凪ちゃんもなかなか同類だと思う。
香織は最近凪ちゃんとオンライン呑み会とやらをしていたのだが、そのときも大分酔っ払っていて、最終的に私が出動することになった。
凪ちゃんより私の方がお酒に弱いのだが、私はお酒に弱いと言うことを自覚しているので、酔って手がつけられなくなる前に飲むのをやめる。
ただあの人はやめないから困ったものだ。ご自愛下さい。
「調子はどうですか?」
『あ"~、二日酔い……』
「でしょうね。打ち合わせできますか?」
『できりゅ~……』
「はぁ、じゃあ始めますよ」
翌日、どうせ二日酔いで動けてないだろうなぁと思ってお昼頃に電話を掛けたのだが、案の定である。なんとか打ち合わせは出来るようなので、このまま進める。
「デビューの準備がある程度整ってきたのですが、いつ頃デビューにします?」
『いつ頃が良いかなぁ』
元々は長期休暇の前にデビューしようとかの計画もあったのだけれど、あの社長がその意見を貫き通すわけもなく、そのままデビューしたいときにデビューすることにした。
まだ3期生の詳細情報等は発表されていなく、デビュー日が決まったら発表していくことになった。
『よし、ちょっとスライドとかの準備もしたいんで、2週間後とかでどう?』
「あ~、了解です。ちょっと予定等見てみます」
こうして打ち合わせは何の問題もなく終わった。
「先輩お疲れ様です」
「あー、お疲れ。どう? 仕事は慣れました?」
「ある程度は……」
私が通話終了するのを待っていたのだろうか。新入社員の1人が話しかけてきた。
「で、何か用とかあった?」
「あの、この投稿を見て欲しくて」
「ん?」
そういうと、彼女は私にスマートフォンの画面を見せてきた。
鬼灯朱里【SunLive.】@Akari_SunLive
茶葉ちゃんが最近凪ちゃんと遊んでてかまってくれない~!
→SunLive.ファン太@SunLiveFun
凪ちゃんってだれ?
→鬼灯朱里【SunLive.】@Akari_SunLive
3期生の子だよ~!
「あの、これって――」
「ぎゃぁぁぁあああああああっ!!!! 情報漏洩だよっ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます