第79話 フェチ

「じゃあ、よろしくお願いします」

『お願いします。すみませんオンラインにして貰っちゃって』

「ああ、全然気にしないで下さい。別にオンラインでも支障はないですから」


 早速予定を合わせて話し合い。トカラの子である。他の2人は実際にこちらに出向いてくれると言うことだったので、とりあえずは先にオンラインで話し合い。

 まだどのようなデザインにするかも決まっていなく、名前すらも決まっていない。イラストレーターも決めていない。とりあえずイラストレーターさんからデザインが上がってきたら名前を決めようとは思っている。


「まあ最初にデザインから決めていきましょう。設定等は後付けで良いので」

『了解です』

「何かこだわりとかはありますか?」

『特にないですが、私まあご存じの通り南の出身で島なので、それっぽい感じが良いなぁとは』

「ほう、趣味とかってどんなことやられてます?」

『うーん、釣り?』

「釣りですか、ある程度固まってきましたよ!」


 そんな感じでデザインについての話し合いが始まった。




 決まったデザインとして、まず日焼け。これは実際にリアルアバターも相当日焼けているらしいのでそれでいきたいとのこと。加えて、胸がないので盛って欲しいと言うことだったので、貧乳で行かせて貰うことにした。

 いやいや、どうせバレるからね? ここはもうステータスを生かしていくしかないでしょ!

 仲間が増えてうれしいなぁと思ったり思わなかったり。


 あとは趣味は釣りと自然散策で、島の自然をこよなく愛する島っ子の女の子というイメージのデザインで行きたいと思っている。

 性格は少々荒っぽい感じ。髪はミディアムかな? ここら辺はイラストレーターさん全体のバランスを考えて貰いながら調節して貰う。口頭で詰め込みたい特徴をどんどん挙げていって、それをそのままイラストに起こすと変だったりするからね。


「じゃあ、後要望とかあります?」

『名前はどんなもん?』

「未定ですね」

『じゃあ私考えても良いですか!』

「ああ、全然良いですよ」

『ありがとうございます!』

「絵柄とかの指定はなくても大丈夫ですか?」

『あー、可愛い系って言うよりはかっこいい系の、線がキリッとしているタイプが良いですね』

「分かりました」

『あと是非ともつぼみさんにお願いしたい』

「あー……、わかり、ました。まあちょっと相談してみます」

『はい!』


 なるほど、香織に絵を描いて欲しいと。なるほどね……。まあ確かにせっかく社内に絵を描ける人がいるわけだし、任せても良いかもしれない。

 ママと娘コンビで配信も出来るかもしれないし、話した感じ2人が合わされば相当面白い配信になると思う。香織はボケもツッコミも出来るし、おそらく彼女もボケツッコミ両対応型の人間だ。


 これはいっちょ声かけてみるか。






「ていうことなんだけど、やる気はある?」

「うーん、ちょっとめんどくさいかなぁ~」

「ですよね~」


 香織はシンプル目なデザインが好き。実際に桜木つぼみと茶葉ちゃんのデザインはシンプル目で、2期生の中に混じると質素な印象を受けるかもしれない。

 でもこれはこれで1期生としての個性でなんとかなっていた。

 だが3期生の中に組み込むとなると微妙だ。他の2人のデザインにもよるが、フリフリだったり、装飾バチバチだったりするとちょっと寂しいかもしれない。


「ちょっと設定見せて貰ってもいい?」

「ああ、いいよ」


 でも今回の設定的に香織は受けてくれると思う。香織が好きなタイプの設定だ。ちょっとダメなんだけど、仕事や趣味の時は本気で取り組んでかっこいい人。

 普段はかっこいいところが多いんだけど、時折出る可愛い所にぐっとくるのが香織だから。

 他の2人はおそらく可愛い系の路線で来ると思う。それこそ派手だったり、大きなアクセントポイントが付くと映えるタイプ。巨大リボンとか、猫耳とかそういう感じね。

 その中に混ぜるにはいい。


「ふむ、良い設定じゃない」

「どう? やる気になった?」

「……まあやってみようかなぁ~、でもあまり期待しないでね~」

「期待するよ。大丈夫だから思い思いに描いてみて」


 もうこの時点でどんな感じのデザインで来るか分かった。








「とりあえずラフ描いてみたけどどうかな~?」

「いいね。これでいこう」

「ねぇ~! 見てから言ってよ!!」


 もうどんなのか分かる。

 ほら見た。


 上はノースリーブっぽいアレ。下半ズボンのジーンズで、髪の毛はミディアムボブ。なんかネックレスつけてるし、適度に筋肉のせてきた。

 おなか少し出してるし。


「うん、フェチだね」

「うへへ、楽しくなっちゃった~!」


 髪の毛黒。肌は日焼けで褐色。完全にフェチ及び癖である。

 大分ラフ早いなぁと思ったら、多分相当没頭して描いたんだとすぐに分かった。香織ってマジで私と同じなんだけど、一度集中するともうそのままガツンと言っちゃうタイプ。しかも今回みたいなフェチを詰め込めるやつときたら、もう止まらないよね。

 ラフ状態なのにもかかわらず、腋の辺りの描き込みが凄まじいことや、脇腹辺りのちょっとした筋肉の線がしっかり描いてあるところ。うん、やったなコイツ。


「あー、なんか夕日を見ながら海岸で黄昏れてて欲しい……」

「ッスー……」


 良いなそれ……。


「ま、まぁ、ありがとうね。じゃあこれで送ってみる」


 ラフ画に「どうですか」と添えて送ってみたところ、相当良かったらしく大盛り上がりであった。可愛い! かっこいい! あー、抱きしめたい! 等と大興奮だったらしい。

 やっぱり香織と気が合うんじゃないかな。


 ちなみに名前が決定した。命名『凪塚なぎつか美波みなみ』。

 スタンダードでシンプルだけど、私もデザインに合った良い名前だと思う。


『茶葉 4/03 13:25

 では凪塚さん、これからよろしくお願いします』


『凪塚美波 4/03 13:28

 頑張ります!!!!!』

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