第78話
「じゃあ、本日からどうぞよろしくお願いいたします」
『はい、よろしくお願いします』
旅行から帰ってきてまたしばらく。ついにサポート事業が始まった。サムネイルや動画編集などのサポートは行わず、行うのは案件の管理であったり、スタジオの手配やうちのスタジオの貸し出しと言ったことだ。
あとはスケジュールの管理や、権利関係のあれこれなど、そこそこやることは多いと思う。動画編集に関しては個人で依頼をしている人もいるみたいだし、私たちが出る幕ではないと言うことでやらないことにした。
あと少しで4月。1週間ほどで新入社員さんが入ってくる。しかも今回は新卒の人たちがどばばっと。ちなみに全員私と同い年か上。
引っ越しの準備も着々と進んでいて1ヶ月もしないうちに実際にあって一緒に仕事をする機会は大分減るだろう。
ただ、香織がスタジオを使うとか、大人数でコラボするときとかなんかは実際にあって作業をするわけだし、良好な関係を築いておきたい。
サポート事業を担当させて貰う個人勢の人数は11人となった。その中には香織がコラボをしたことがある人も混じっていて、その人は私も何度か話したことがあったので案外楽に仕事は進みそうだ。
困ったのは男性のVTuberで、相談とかに乗る機会があれば少し困るかもしれない。まあこれも新卒の人がきたら一斉解決だからね。それまで頑張ろう。
ホームページも改良が加わって、サポート事業を担当させて貰っているVTuberは所属とは別の欄に一覧が載っている。個人勢にとっては多少の宣伝効果はあるのだろうか。
また数日。
「先輩、朱里さんが個人勢の人とコラボしたいらしいんですけど」
「サポートの子ってこと?」
「はい。そうなります」
「いいんじゃない? そっちで声かけてみて」
「分かりました」
作業をしていたら神田さんがそう言ってきた。朱里さんの担当マネージャーは神田さんなので、神田さんに個人勢とのコラボの手配をやって貰おうと思う。
こういうコラボ関連のことも円滑に進められて正直このサポート事業は得しかないかもしれない。忙しくなることを除いて。
でも案外サクッと回せてはいる。確かに忙しいは忙しいけれど、良い感じに仕事の分担が出来ている。ていうか私が香織以外のマネージャーを担当していないと言うこともあって、サポート事業に労力を割ける。
「浅海さん、3期生の件なんですが」
「はい、どうされました?」
「もう最終選考終わりまして、話し合いをしていこうという段階なんですが、ここはマネージャーの統括である浅海さんにやって頂いた方が良いのかなと思いまして。同性ですし」
「あー、なるほどです。分かりました。じゃあこっちでやっておくので資料等あればお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
今度は3期生の採用を担当していた社員さんだ。どうやらもう誰を採用するか決定したらしい。ていうか私も面接に関わっていたから知っているんだけど。
今回採用した3期生は3人。少ないかもしれないが、結構凄腕がそろっている。少数精鋭と言うことで行かせて貰おう。
まあ、そういうこともあるのだが、全員でコラボをするときに1期生2人、2期生5人、3期生3人で計10人にすることで数が良い感じになると言うこともある。
やっぱり5人ずつ2チームに分けられるというのは活動しやすい。チーム戦において非常に扱いやすい人数が10人なんだ。ていうか5の倍数は扱いやすい。
さて、どういう形式で話し合いをしようか。実際にあって話した方がいいのだが、住んでいるところがなかなか遠い。
埼玉に住んでいる人が1人いる。その人は比較的来やすいかもしれないけど、SunLive.のオフィスの場所は埼玉から少し来にくい位置にある。直線で来にくいから遠回りしないといけないという。
まあそれはいいのだ。多少遠回りすれば良いし、バスに乗ってしまえば大丈夫だし。
そして2人目が北海道の人。まあこれも飛行機なり新幹線なりで来ればいいのだけれど、正直交通費だけでもバカにならない。でもまあ来られるよね。
ただ問題はこの人。
「トカラねぇ……、ちょっと遠いなぁ」
その人は、鹿児島県のトカラ列島の中の島に住んでいて、アクセスがとんでもなく悪い。 まず空港がない。なので羽田まで1本というのが無理なわけだ。島と言うことで残された交通手段はフェリーなのだが、それもまた問題。
フェリーがなんと週に2回のみ。天候によってはその2回のフェリーも運休になってしまうし。
フェリーで鹿児島港に付いたらバスで空港行って東京に来る。正直丸1日の大移動。ていうかフェリーの時間的にも、鹿児島に着いてからその日のうちに東京に着く飛行機がないかもしれない。
だから実質二日がかりの大移動。これは東京まで来てって言うのも酷だよなぁ。でも大型コラボの時は東京来て貰わないといけないし。
一応引っ越しの提案をしてみた。でも回答は"しない"だと。まあ別にそれは良いのだ。私は引っ越しを強制したくないし、彼女が住む島は豊かな自然で非常に有名な良いところ。離れたくないというのもよく分かる。ていうか是非とも休みの日にお邪魔させて貰いたいと思っている。
どうやら土地を持っていて、その土地を守っていかないといけないそうだ。だから東京には引っ越せない。
とりあえず話し合いはオンラインで行おう。
うちの会社は結構柔軟な方だと思う。今回の3期生の面接に関しても、来れる人は来て貰って来られない人はオンラインで対応した。ちなみに今回採用の3人のうち2人はオンライン。
じゃあもうフルオンラインでもいけるでしょ。よし、解決解決!
にはならないね。大型コラボの時どうしよう。
でも今はそんなこと考えても仕方がない。住んでいる場所が遠いからとか言う理由で彼女を手放すわけには行かない。VTuberはインターネットで活動できるというのが利点で、インターネットで活動できると言うことは住んでいる場所は問わないと言うこと。
だから大丈夫。なんとかなるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます