第74話
「50人と面接するの大変すぎる……」
想像以上に応募がきてしまい、とりあえず50人にしたのだけれども、こんな弱小企業からしてみればその数の面接がめちゃくちゃ大変だった。
幸いにもすべてオンラインで行ったため、比較的楽であった物の、もしこれで実際にあって面接とかであれば非常に面倒くさいことになっていただろう。
地方から来る人に対しては宿泊施設とかの準備をやらなければいけない場合もあるだろうし、場合によっては交通費等の支給もあったわけで、それが大きな事務作業としてのしかかっていた可能性もある。
ちなみに3期生の方ではそれらを行うらしいのだが、私からすればほとんど関係のないことなので別に良い。
まあそんなこんなであっという間に面接自体は終わり、あとは10人を選出するだけになったわけだ。
事業紹介として一応ホームページでサポート事業を行っているVTuberをのせることになるそうなので、それはWeb担当の人にお任せである。
ただ、誰をサポートするかに関しては公式に声明文を出したりはしない。ぬるっとWebに追加されてスタートである。あとはどういうサポートを望むのかとか、契約形態とかの細かい話し合い。そこら辺で意見をすりあわせる必要がある。
それはさすがに実際に合ってといった感じになるだろう。オフィスまできて貰うことになる。
これからこのオフィスを使うことになるだろうから、場所を覚えて貰う点でもきて貰った方が良いだろう。
そういえば、ある程度仕事が落ち着いたら東京から抜け出そうという計画だけれど、結構進んでいるわけだ。
私たちには生まれ育ちの地があるわけだけれど、東京に来る前にいたド田舎で生まれたわけではない。あそこは故郷ではなくて単にお金がなかったから行っただけ。
さすがにあそこは不便すぎたなぁと今になって感じるので、故郷に家を借りてそこに戻ろうと思っている。借りるのは一軒家だけれど、買ったりはしない。
もしかしたらまた東京に戻ってくる可能性もあるわけだし、VTuberなんて住所バレとかした瞬間大変なことになるわけだ。だから買ったりとかは出来ない。
私たちが今いる家は良い感じにリフォームされてオフィスの一部になるらしい。サポート事業のVTuber達も含めたり、3期生とかも含めるとそろそろブースの拡張が必要だろう。それに社員さんも増えるわけだし、結構がっつりと改装するらしい。
ちなみに私たちの故郷、別にド田舎と言うほど田舎ではないと思う。確かに畑とかはいっぱいあるけれど、近くにコンビニだってあったし、電車もしっかり通っていた。1時間に1本とかではなくしっかりね。
ちゃんと家もたくさんあったし、畑付きの少し大きめの家を借りて、そこでゆっくり農作業とかもしたいなぁとは思っているけれど、そこの家すべてに畑があるわけでもなかった。
ド田舎ではない。そこは加えておきたいね。
「汐ちゃん達がいなくなるのはなかなか悲しいね」
「いやいや、まだ先のことですから」
「でももう半年ないだろう? まあこのオフィスにずっと住むというのも危険ではあったからね。別にそれも1つの選択だ」
オフィスの住所は調べようと思えば出てくるわけで、そこに私たちが住んでいるのは危険だったわけだ。だから引っ越そうという話が出たというのもある。
「まあ気合い入れていこう。まだまだ忙しいときは続くしね」
「あ、でもそろそろお休みいただきますよ」
「そういえばもう19日すぐだね」
バタバタしていたために時間の経過が早かったのだが、もう個人勢の面接も終わり、気がつけばあと少しで香織の誕生日という日に近づいているわけだ。実はまだ香織にはお出かけをすることを伝えていない。
「じゃあ私そろそろ上がりますね」
「うん。お疲れ~」
書類作業があらかた片付いていたので、私はおうちに戻ることにした。
「ただいま」
「お帰り~、お疲れ様!」
「ありがと」
そういって部屋にノートパソコンを置いたらリビングのソファーにだらっと腰掛けた。
外に出て出社とかしないので、私は基本スーツを着たりはしない。さすがに他社の方が来るときとかはするけれど、基本的には私服。
だからそのままソファーにだらっと出来るわけだ。
「ねぇ香織」
「ん? どうしたの?」
だらっとしていると香織が顔をのぞき込んできたので、ここかなぁと思って旅行の話を切り出すことにした。
「19日20日って予定あいてる?」
「う~ん、空いていないとでも思った?」
少し考える素振りを見せたあと、ニッコリと笑ってそう返事した。そう、香織は毎年自身の誕生日付近を開けておくのだ。だから私も伝えずに予定を入れることが出来た。
誕生日配信も行わない。これはデビューしてから毎回のことで、誕生日の前後あたりに変わりの配信を行うのだ。これが香織のスタイル。
「じゃあさ、旅行行こうよ」
「いいよ~! どこ行くの?」
「それはお楽しみ」
「わかった! 楽しみにしてるね!」
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