第73話
「まずはこの50人を通過としたいと思います」
「おっけ~。とりあえずサポート事業はまず10人で行こうと思っているから、5分の1に絞ろうか」
「わかりました」
早いもので、もう既に募集の期間が過ぎて締め切られている。私たちはもう1次審査通過者を決め、次の2次審査を最終審査として結果を発表する予定だ。
所属とは違いあくまでサポート事業なので、実際に合ったりとかはしない。2次は面接だけど、そんな堅いものでもなくて簡単に話を聞くと言った程度。
3期生の方も噂では1次審査は終わっていて、あとは2次と3次を行っていくらしい。ここから始まるのは審査の報告メール大量量産期。そこが少し大変だ。
メールを送って終わりなら良いんだけど、それでどこがダメだったとか、なんでダメなのかと言ったクレームめいたこととか、そういったメールが返信に付いてくることがある。
それが結構精神を削られるわけ。返信は返せないって書いてあるのが読めないのかね。
「はぁ……、まあ仕事だから頑張りますかね」
個人勢の人の中には、今後の活動を掛けて応募してくれている人もいたと思う。だから少し憂鬱度は高いかも。まあ音楽でも聴きながらやっていこうと思うよ。
「とりあえず今日はこんなもんで良いかな」
外が暗くなっている。相当集中して仕事が出来ていたらしい。気がつけばオフィスにはもう社長と私しかいない。一度スイッチが入るとやっぱりのめり込んでしまう。
私の良いところ何だろうけど、同時に悪いことでもあるなって思う。今頃香織が私の帰りを待ち望んでいるだろう。いや、別に下の階に降りてくればいいだけの話だからそんなことないかもしれないけど。
香織にメールを任せるのは怖かったので、私が今回はすべて担当している。いや、出来るんだろうけど私が過保護なのだろう。
「はぁ、もう今年も2ヶ月経ったのか」
「ほんとね。早いものね」
「そうですね~」
私の独り言に社長が入ってきた。今は3月。3月には1つ大きな行事があって、私もそろそろそれに向けて考えないといけない時期かもしれない。
「……プレゼント、何にしようかな」
「ん? 誰へのプレゼント?」
「香織です。香織は3月の20日が誕生日なんですよ」
「あら、汐ちゃんの方が年上だったのね」
「年上って言っても1年も変わらないですよ」
「まあね~」
プレゼントねぇ……。
3月20日なんて言ったらもう大忙しの時期かもしれない。早いうちに買っておいた方が良いかなぁ。
「汐ちゃんさ、その数日休みとれば?」
「え? 忙しくないですか?」
「いやいや、そこまでで十分忙しかったんだから、少しくらい抜けても良いわよ。しかもそこから先も新入社員さんがきてもっと忙しくなる」
「あぁ、そういうことですか。じゃあお言葉に甘えましょうかね」
「そうそう。お子様は大人に甘えるべきよ」
「いや、私成人なんで」
お風呂に浸かりながらほっと一息。
香織はどこに行きたがるだろうか。別に香織が行きたいところをわざわざ選ぶ必要はないかもしれない。私が行きたいところを選べば大抵それが香織も行きたいところだ。
私は温泉に行きたいな。私も香織も基本この家兼オフィス周辺でしか暮らしていないわけで、たまにはゆっくりと自然の中で温泉とかも入ってみたいわけよ。
3月20日は春休みに入っている人とかもいるかもしれない。私に春休みとか言う概念はないからあんまり実感湧かないけど。だから早いうちに予約を取っていった方が良いだろう。
まず行く場所を決めるべきだね。あんまり遠くに行っても大変だから、関東近郊でここから行きやすいところが良い。
鬼怒川温泉とかが人気だけど、ここからだとそっち方面の電車は少し行きにくい。関東西側の方が行きやすいかな。箱根とか湯河原とかそっち方面。
「あ、こことか良いかも」
インターネットで調べていたら、良い感じの温泉地が出てきた。お風呂から出たらそこら辺の温泉宿をさくっと予約してしまおう。
3月19日から20日までの2日間。そこまで仕事を乗り切れば温泉に入れる。
それをモチベーションに頑張ろう。
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