第66話 案件動画②
当初の予定では、説明書を用意して貰ってそれに沿って作るということだったのだが、せっかく香織がきてくれていると言うことで、香織に教えて貰いながら作ることにした。
ちなみに香織は横で企業の方から教えて貰っているよ。でも自由にやってね~っていうことだったので、できるだけ自分で考えながらやっていこうと思っている。
「ということで、まずは水槽を紹介します」
と言って横の方に置いてあったものを画面の中央側に持ってくる。
「これが今回使っていく水槽です。まあみんなが水槽と言って思い浮かべるものかなって思います」
今回使うのは金魚鉢のようなものではなくて、スタンダードな直方体の水槽だ。机の上に置いてちょうど良いようなサイズで、水槽用の台においてでかでかと楽しむようなサイズではない。
「で、この水槽ちょっと凄いんです。じゃあつぼみよろしく」
『は~い、バトンタッチ! ということで、案件らしく紹介していきますよ~!
まずこの水槽、フィルターをセットするところとライトが初めから付いているそうで、しかもライトは自動で制御してくれるそうです!
酸素のぶくぶくっていうか、フィルター? 用のものとライト用のコンセントとかを2つ用意している人とかもいるかもですが、なんと! 一体型だから1つで良いんです!』
「凄い!」
明らかに棒読みだったが、まあ担当さんが笑顔なので良いでしょう。
「やっぱりせっかくアクアリウム楽しむんだったら明るく楽しみたいよね」
『そうだね! きれいな模様の金魚ちゃんをきれいに見たいからね!』
ということで、水槽の紹介が終わったので早速作っていく。
『はい、じゃあまずは水が入ったバケツあるでしょそこに』
「あるね」
『その中に砂を入れてジャブジャブ洗って~』
「え? 砂って洗うんだ」
『らしいよ~』
一応出荷段階で洗ってはいるそうなのだが、まだゴミとか付いていると言うことで、お米をとぐような形で洗うそう。
一応ゴム手袋をつけて洗う。
「え? こんなもんでいい?」
『大丈夫じゃない? 濁らなくなった?』
「うん」
『じゃあおっけ! それを水槽に移してね~、あ、水は入れちゃダメよ!』
「おっけー」
ちなみに、今回使用する砂は小粒でメインが白、赤とか黒とかがチマチマ混じっているような感じの砂。砂って言うより砂利かな?
小粒って言ってもさらさらって言う感じではなく、ちゃんと原形をとどめているタイプのやつを使う。
それをばーっと敷き詰めて、軽くならす。
「出来た」
『じゃあ次はレイアウトをしていこう! 流木とか水草とかあると思うので、思い思いに置いていって~』
流木はしばらく水につけておいたらしい。なんかそうしないといけないって担当者さんが言っていた。私はよく知らない。
その流木を左側の方において、その後ろに水草の根っこを隠すような感じでどんどん植えていった。
葉っぱが堅いやつから柔らかいやつまで、後ろに行くほど背丈が高くなるように設置。これが寝床になるのだろうか。
固定するところはケーブルタイを使って流木だったりに固定していく。
「よし、水草類はおっけ」
水草類が出来たので、後は石とかを置いていく。
配信と違ってこういう作業の間は無言でも良いのが楽。カットが聞くのは凄く便利だね。
「出来た!」
『いいじゃん! 普通におしゃれかも!』
「え? 普通にって何?」
『いやぁ、茶葉ちゃんの独特センスが出るかと思ったんだけど、まだ被害は最小限』
「……」
この野郎。
『はいはーい、すすめていきますよ~』
水槽には水もしっかり入れた。後はこのまま数日間放置するらしい。数日間フィルターとかを回しながら放置して、水質が安定するのを待ってから魚を入れるんだそう。
ちなみにちゃんと水は塩素中和剤とバクテリアを入れている。分量を量ってね。
水を入れるときはビニール袋を砂の所に引いて入れると、砂が巻き上がらないからお勧めらしい。香織経由で担当さんから聞いたけど、実際にやってみたら良い感じだったよ。
「ということで、数日後に移動!」
「はいオッケーです」
「ありがとうございました~」
「いやぁ、浅海さんセンスありますよ」
「そうですか? ありがとうございます」
撮影が一度終わると、担当者さんがそう言ってくれた。香織とは大違いでやさしいよ。
「この水槽ってしばらくここで良いんですか?」
「そうだねぇ、まあ撮影で使うとかあったら退かすとかありかもしれないけど、今んとこそういう予定ないから置きっぱで良いよ」
「分かりました」
「汐ちゃんお疲れ様」
「香織もお疲れ」
「魚楽しみだね~」
「そうだね」
さっきはチクチク言葉を言ってきたけど、案外香織も気に入っているらしい。
私は長い間田舎に住んでいて、派手なものがあまり好きではない。だから日本っぽい自然な感じのレイアウトにしているのだが、やっぱり趣味が合うらしい。
香織もどちらかというと和風のものが好きで、だから熱帯魚とかではなく金魚を選んだのだ。
この水槽についに魚も入って、私たちの家に新しい家族が来るわけだ。
「名前考えた?」
「考えてないよ」
「じゃあ私つけても良い!?」
「え? いいけど……」
「やった!」
あ、名前つけるんだ。
香織ってぬいぐるみとかにも名前つけるタイプだからね。センスあるものを求む。
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