第65話 案件動画①
「じゃあカメラ回しまーす」
「お願いします」
あれからしばらく時が経ち、ついに案件の動画を撮影する日がやってきた。
結局水槽の置き場所は私たちの家と言うことになった。オフィスに置くよりも、絶対誰かが居るような所に置いた方が良いだろうと言うことでここになった。
オフィスの入り口に置いて、来た人が「あー、これが動画のやつかぁ」ってなるような仕組みにしようかとも考えたのだが、餌とかをあげるためにわざわざ入り口まで行くのも大変なので、家に置くことにした。
愛でられないしね。
「こんにちは。SunLive.裏方兼1期生の茶葉です。今日は珍しく切り抜きとか、音楽とか以外で動画を撮っています。しかも実写で! まあ1回実写配信をやっているし、裏方だからと言うことでこうやって出来るわけです」
そういいながらカメラに向かって手を振る。謎の馬のかぶり物をした人がカメラに向かって手を振るというカオス状況になっているが、まあ大丈夫だろう。
「ということで、今日は案件なんですけど、さすがにSunLive.初の案件を1人でやるのもなぁということで、ゲストがいます」
『はーい、つぼみですよ~』
「ということで、つぼみは実写をやったことがないので声だけの参戦となります」
誰をゲストに呼ぶかと考えたのだが、まあ安定で香織だよね。他の人を呼んでも良かったのだが、私たちの家に置くのだし2人で作ろうって言うことになったよ。
わざわざ撮影のためにスタジオまできて貰うのも大変だしね。
香織はガラス1枚挟んだところから私のことを見ている。私にはイヤホン越しで声が聞こえているよ。
ちなみに、ガラスの奥、香織達の周りには社長とか社員さんとか、企業の方とかもいるよ。
また私言い忘れちゃって、今日の朝録画準備をしているときに私が茶葉って言うことを言ったら驚かれちゃった。まさか本当に裏方だったとは……! みたいなね。
ちゃんと配信見てくれてるんだね。
『で茶葉ちゃん、今日は何をするのかい?』
「大分棒読みだな……、まあいいや。今日はアクアリウムを作っていこうと思います」
『いえい!』
「いえい!」
……いえいで終わると会話が途切れるんだよね。ちょっと失敗してしまった。
まあいいや。気を取り直していこう。
「今回の動画は、アクアリウムグッズをたくさん使っておしゃれな水槽をレイアウトしていこうって言うことです。実際に生体を入れて私たちの家に飾ります」
『いえーい。私たち同棲してますよ~』
「今はその話は良いんだよ。じゃあね、実際に今回使うものの紹介に移ります」
「はいいったんここまでで!」
「了解です。お疲れ様でーす」
まずはオープニング部分の撮影と言うことで、ここまでで一回撮影を止める。今は机の上に何も出ていないから、ここから机に上に使うアイテムをのせて撮影を再開すると言った感じ。
「今のところこんな感じですけど、大丈夫そうですか?」
用意されていたお茶を飲んで、録画の様子を見ていた取引先の方に聞いてみる。
「バッチリですね。でももっとはっちゃけちゃっても良いですよ~、気軽にやっちゃってください」
「はい! 気軽にやらせていただきます!」
「え? ちょっと香織……!」
私が話していたところに、香織が突然入ってきた。香織がはっちゃける? ちょっと危ないかもしれないけど……、まあさすがにわきまえるでしょう。一応社会人だし。
「じゃあね、今回使っていくのはこんな感じ」
『おお、大分量が多いね』
撮影再開。机の上には水槽やフィルターだったり、そこに敷く砂とか水草とか流木とかが用意されている。
今回私たちは金魚を1匹水槽に入れようと考えているのだが、金魚って結構大きくなるらしいので1匹で飼育するにしては少し大きいかな~、程度のサイズ。時が経つにつれて大きくなると思うし、狭かったらのびのび泳げなくてかわいそうだから。
1匹だと寂しいかな? と思ったけど、ちゃんと1匹でも見栄えする柄の子を選んでいるし、1匹の方がしっかり愛情注げるからいいよねっていう話を香織としたよ。
金魚は水草を結構食べちゃうらしい。でも別に食べられちゃったら新しく水草を買って入れれば良いし、何かあったときのおやつにもなるから良いかなっていうことで、柔らかい水草を用意した。
「じゃあ早速作っていきましょう!」
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