第63話

茶葉「あぁ、もう疲れたわ。このサーバーカオスすぎるでしょ……」

つぼみ「たのしいところでしょ?」

茶葉「そりゃそうだけどね……」


 あれから玲音ちゃんとも合流して、ぐるっとこの都の中を回ったわけだけど、至る所にツッコミどころがあって処理が大変だった。

 玲音ちゃんと合流したと言っても、別に玲音ちゃんが通話に参加したというわけではない。結局一瞬顔を見せてすぐ去って行ったし。私たち2人の配信を邪魔するわけには行かないと言うことだろうか。


 なんやかんやで2時間くらい配信もしていて、そろそろ終わろうかなと言った頃合いだ。

 そういうタイミングで、私のスマホに通知がなった。それはメッセージアプリのものだった。

 このパソコンにはメッセージアプリは入っていない。これは配信用だからだ。

 だからスマホだけになったわけ。


 チラッとスマホを見てみると、そこにあったのは社長からのメールであった。


『時間は決まってないけど、近々発表あるよって言うのを言っておいて欲しいかも』


 ということだった。これはおそらく3期生とサポート事業のことを指しているのだろう。


茶葉「ということで、そろそろ配信終わるんですが! ここで軽く匂わせをしておこうと思います。

 近々SunLive.で発表がありますので、そのときを楽しみに待っていてください」

つぼみ「えー! たのしみ!」

茶葉「大分棒読みだな……」


コメント

:まじ!?

:3期生来たか?

:うぉぉおおお

:きたきた

:最高

:発表?


茶葉「まだ出せる情報が少ないので、また細かい情報なんかはSNSや他の所属Vの配信で出ていくと思うので、そのときをお待ちください!」

つぼみ「じゃあ、今日はこれで配信閉じますよー! お疲れ様でした!」






「いやぁ、お疲れ」

「汐ちゃんもお疲れ様! 良かったね!」


 香織は一度配信の切り忘れをやったことがある。これは企業に所属する前のことだね。幸い重要な情報が出なかったので良かったものの、これ以降私たちは配信が終わった後はリビングに出て話すと言うことに決めているのだ。

 だからこうしてリビングに出てきているわけ。

 リビングに出てきて、しっかりと配信が切れているかをチェックしてから話し出すというのが決まり。

 とは言っても、たまにそれもおろそかになるときはあるけど、一応そういうのはやろうねという話にしている。

 もちろん切り忘れは今回もしていない。以前に何回かこれで重大な事故を防いだことがあるので、VTuberは全員これを実践して欲しいと思っているよ。


「いやぁ、ついに3期生だね」

「それはそう。私たちが1期生で、新しく仲間も加わって2期生が出来て、ついに3期生。まだ1年と経っていないけど、なんか長かったのか短かったのか分からないかなぁ」

「構想自体を含めると相当長い年月やってきたよね」

「そうだね」


 この前の夏から計画が動き出したわけではもちろんない。

 いろいろなところに協力を依頼して、資金を集めて話し合いをして、そうして裏でコツコツと準備をしてきてようやく作れたこの会社。

 正直不安が多かったからね。どうやって社員さんを養うだけの資金を得るかとか、もしかしたら赤字になる可能性もあったわけだから。

 ていうか準備費用とか考えたらまだ赤字だからね。


「いやぁ、私本当は会社が出来たらVTuberやめようと思っていたの」

「……は? 初耳なんだけど」

「ていうか正直この会社が大きくなったらやめようとは思っているよ。汐ちゃんがこうやって裏方で頑張ってくれててさ、私だけ何もしてないって言うのも嫌で、ちゃんと裏方としてみんなを支えていきたいなって」

「……はえ? 何言ってんのさ。別に香織はしっかりと配信をしてさ、……まあ確かにちょっとだらけているところはあるかもしれないけど、2期生がデビューする前のしばらくとかは香織が1人で支えてたところもあるし、やっぱり続けた方が良いよ」

「そう?」

「そうだよ。リスナーとかもみんな香織の配信を楽しみにしているみたいだし、私だって楽しみだからさ」


 突然何言いだしたのかと思った。

 やっぱり香織も人間だ。何も考えていないと思っていたら、彼女なりにもいろいろと考えていたんだなって。

 ……ていうかやめようと思っていたのか。以外だった。

 私はこの仕事が天職だ! とか言っていたからね。


「まあ以前に比べればやめようって言う気持ちは薄れてきてるよ。茶葉ちゃんも本格的にVTuberやるんでしょ?」

「……ちょっと、それは……」

「えーー! やろうよいっしょに!」

「まあ今日の配信は楽しかったよ」

「でしょ!?」

「そんな頻度は出来ないけど、まあちょっとは増やすって。ていうか私ももっとワタクラやりたくなった……」


 私の周りって変人しかいないんだなぁって思った。私は全然変人でも何でもないのだが、なんでこんなにネジが飛んでいる人が集まってくるのだろうか。

 香織がいるから?


「いやぁ、やっぱり汐ちゃんの周りって変人ばっかりだね。汐ちゃんが変人だからかな?」

「……え? 私は変人じゃないでしょ」

「え? 何言ってんの?」

「え? 香織が変人でしょ」

「いやいやいや、私は普通でしょ」

「?」

「???」


 いや、そんな“はにゃ?”みたいな顔されてもなぁ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る