第57話
梓「いや、もう本当に、本当に本当に本当に、本当に、誠に申し訳ございませんでした……!」
茶葉「ほんとだよ。わざわざ起こしに来たんだから!」
コメント
:3時間かー、思ったより
:草
:ええんやで
:おはよう
:茶葉ちゃんお疲れ
:草
:早かったな😁
慌ただしく準備を始めて、4時を回ったあたりにようやく配信が始まった。
そしてその配信になぜか私も出演している。
どうして?
時は遡ること少し前。
いや、本当に少し前ね?
「やばいやばい! 急がないと!」
「まあ落ち着いて、ゆっくり準備しよう。リスナーもみんな待ってくれるよ」
「は、はい!」
バタバタと準備を始めた梓ちゃん。急いでゲーミングチェアに座り、設定を弄っていく。
へー、ヘッドフォン派なんだぁ、とか思いながらその様子を眺めていた。しっかりと起きたことをリスナーのみんなに報告済みで、こちらも西原さんに連絡を入れている。
とりあえず何か緊急事態が発生しているわけではなくて良かった。
「じゃあ、大丈夫そうなのでそろそろ帰りますね」
「え! 配信でないんですか?」
「いやいや、出る必要ないでしょう」
こう言われる前に早く出ようと思ったのだが、案の定言われてしまったわけ。正直仕事が溜まりまくっているから早く帰りたい。思いっきり仕事放棄してきたからね。
私の仕事の進度によって会社の動く速度が変わってくるわけ。こんなところで配信なんてしてらんないのよ。
そうおもって苦笑いしながら誘いを断っていたら、突然私のスマートフォンの通知がなった。
「ん? なになに?」
そうして送られてきたメッセージ、送り主は社長。
『せっかくだから配信出てから帰ってきなさい。最近配信してないでしょ? SunLive.1期生の茶葉ちゃん♥』
ぐぎぎ……。
「茶葉ちゃんどうしたんですか?」
「いや、社長が配信出てけって」
そういうと、出ないのかぁとがっくりしていた顔に急に笑顔が戻ってきた。いや、あんた今絶賛やらかしてるんだから少しは反省しているみたいな態度見せろよ。
と思ったけどまあいい。こういう所でしっかりモチベーション管理していくのも私の仕事だから(棒)
そんなこんなで、今配信に出ているわけです。
梓「いや、本当にすみませんでした。昨日寝るのが遅くて……」
茶葉「いやね? お昼から配信するって分かってるんだから、もう少し早く寝る努力をしなさいよ」
梓「いや、まったくその通りでございます。でも今やらかしてるなぁっていう時って謎のテンションになりません?」
……たしかに次の日朝早いのに夜更かししているときとか、もうこのままオールしちゃおっかなぁ~! みたいな謎のテンションになることがある。
深夜テンションとはまた別の何か。
吹っ切れたというか、開き直ったというか。
きっとそのテンションで撫子ちゃんの配信に出てしまい、寝るタイミングを逃したのだろう。まったくもう。
でも、やっぱりこういうやらかしのときって視聴者の数が増える傾向にある。今回の3時間遅刻。いつもの配信よりも明らかに同接が多い。きっとやらかして落ち込んでいる梓ちゃんを見に来たのだろうけど、コイツ開き直ってるからもう無理だよ。
コメント
:開き直ってて草
:反省してんのか?
:www
:おもしれー女
:茶葉ちゃん苦労人だなぁ
:SunLive.初の大遅刻が3時間スタートとは。
:3時間=1梓
:1梓の遅刻かぁ
梓「ちょっとまって、勝手に単位化するのやめてくれる?」
茶葉「あれ? 今日はこの後何梓配信するんですか?」
梓「茶葉ちゃんまで……」
VTuberの遅刻した際の定番として、単位が作られることがある。
うん、謎だよね。
今回も例に漏れず“梓”と言う新しい時間の単位が誕生したそう。1梓=3時間だそう。この記録を超す遅刻者が出た場合、またこの不名誉な単位が追加されていくのだろう。
遅刻があったことを忘れられてしばらく、誰かが遅刻する度にこのことが掘り起こされるわけ。ちょっとは反省するだろう。
いや、人気商売の私たちにとってはありがたいことかもしれない?
茶葉「もう、私仕事あるんだが」
梓「いや、もう本当にすみませんでした。そういえばなんで茶葉ちゃんが来たんですか? 最近マネージャー替わったのに」
茶葉「ああ、担当の人忙しくて私に仕事回ってきたんだよ」
梓「え? 茶葉ちゃんも忙しいんじゃないですか?」
茶葉「張本人が何いっとんじゃ! 忙しいわワレ!」
コイツ本当に反省しているのか? 普通に不安になってきたぞ。
まあいいや。なんやかんやでリスナーのみんなは楽しそうだし。私が残業すれば良いんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます