第55話
まったく、それにしても玲音ちゃんはこっちにサムネイルを任せすぎではないか? と脳内で考えながら梓ちゃんに電話を掛ける。
配信開始の予定時刻は午後1時。現在時刻は午後1時34分。実に現段階で34分の遅刻である。
「やっぱり出ないな」
西原さんが言っていた通り、梓ちゃんは電話を掛けても全然出ない。メッセージを送っても既読にならない。心配だ。
急いでパソコンで表に起こしてあるライバー全員の配信予定表を見る。最後に配信していたライバーは撫子ちゃんで、どうやら日課の朝活らしい。撫子ちゃんは朝起きるのが早く、おそらく今はご飯を食べているだろう。
ああ、私もそろそろご飯を食べようと思っていた時間だったのに……!
まあいい。何か知っているかもしれないから一応連絡だけでも掛けてみよう。
「もしもし、今お時間大丈夫ですか?」
『大丈夫ですよ。どうしましたか?』
「それが、梓ちゃんの配信が配信予定時刻を過ぎても全然始まらなくて、連絡も付かないんです。何か知っていることとかってありますか?」
『何で私なのか分からないけど……、それは心配ですね。えっと、心当たり……』
そう言って何かひねり出そうとしている様子の撫子ちゃん。
しばらく経って、撫子ちゃんが何かを思い出したように声を上げた。
『そういえば、今日の朝活に梓ちゃんが来てくれたんですよ』
「え!? 今日の朝活にですか? と言うことは何か体調が悪くて配信が出来ない……?」
梓ちゃんには珍しくどうやら今日は早起きだったようだ。
配信予定表に記載されていないと言うことは飛び入りの参加だったのだろう。凸待ちとかやったのだろうか。
まあひとまずは目撃情報を入手できて良かった。
心配だ。梓ちゃんは一人暮らしだし、もしかしたら何かあったのかもしれない。
『あの、大変言いにくいんですが……』
「はい、どうしました?」
『えっと、朝通話をした際、これから寝ますと……』
「ッス~~~……」
いや、私の心配返せよ!!!
電話を切り、急いで朝活の配信アーカイブを見に行く。ていうか西原さんが初めに神田さんのところに行けば梓ちゃんが飛び入り参戦していたこと分かったんじゃないのか?
まあそれを責めても仕方がない。ていうかここで西原さんを責めるのもおかしい。だって悪いのは梓ちゃんなので。
西原さんは振り回されていてかわいそうな人だ。あとでねぎらってあげよう。
「えっと、朝活朝活……、これか」
撫子ちゃんのチャンネルの一番上に今日の朝活の配信アーカイブがある。
その動画のコメント欄にはありがたい視聴者さん作のタイムテーブルが置いてある。いつもありがとうございます。
その中に……。
「あった。礼文梓凸」
配信の終盤らへん。よりにもよって、終盤らへんにその文字はあった。横の数字ボタンを押して配信のその部分までとんでいく。
『あ、梓ちゃん!』
『おはようございまーす』
『珍しく梓ちゃん今日は早いね』
『いや、今から寝るんですよ~』
『あれ? お昼から配信じゃなかったっけ?』
『そうなんだけど、まあ起きれるとおもう!』
コメント
:フラグ経ったな
:あーあ、茶葉ちゃんの胃が
:草
:起きれんだろうなぁ
:寝坊
:無理だな
:終わった
:終わったな
……コイツ、私が心配してやったというのにこれ完全に寝坊じゃねぇか!! 何やってるの? そういえば珍しく深夜から配信じゃないなぁ、ちゃんと配信できるのかなぁ、とか若干思っていたけど、期待を裏切らずにやっぱり寝坊かよ!
しかも7時の時点でこれから寝るだろ? 梓ちゃんの1日の睡眠時間って長いときは12時間とかあるから、もしかしたらまだ全然起きてこないと?
ずっと電話掛けるのもアレだよな。ていうか私仕事があるんですけど……!
でも、もしかしたら体調が悪いだけという可能性もあるし、気を失っていたりしたら大変だ。
今私の手元にはなぜか梓ちゃんの家の合鍵がある。これは何かあったときのために託されている物。よし、行こう。帰ってきてからでも仕事は間に合う。何かあってからでは遅いのだから。
茶葉ちゃん@chaba_Sakuragi
梓ちゃんの配信が始まらないということですが、おそらく寝坊だと思われます。
電話を掛けても一切反応がなく、連絡が取れていないため、一応今から家に向かいます。うちのバカがすみません。楽しみにしていた人はもう少しお待ちください……!
よし、これでいい。
今から急いで梓ちゃんの家に向かいます。
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