第54話

 翌日、私と香織、そして社長による会議が行われた。結構ぐだぐだと雑談をしながらだったが、なんとか今後の流れについての話し合いは終わった。


 まずは3期生の募集に関して。


 3期生は、2期生と同様に女性を集めることにした。これは、現状女性しかいない中に男性のライバーを入れてしまうと、あらぬ疑いを掛けられて炎上してしまう可能性があるからだ。

 事務所的にも、ライバー的にもそれはあまり良くない結果になってしまう。それに、男性ライバーのマネジメントに関してはこちらとしても勝手が分からず、採用するのであればもう少し間隔を空けてからにしようと言うことになった。

 個人勢のマネジメント業務できっと男性のマネジメントも行うだろうから、それを行ってみてもしかしたら男性も加えるかも、とは言っていた。

 現状は女性のみで行こうと考えている。


 募集の方式は2期生の時とほとんど変更なし。




 次に個人勢のマネジメントに関する話だが、最初は10人だけ募集をするという形になった。それは、現状マネージャーが3人しかいないと言うことによるものだ。

 今後どんどんとマネージャーの人数を増やしていき、それに伴って徐々に募集人数を増やしていくと言うことになる。所属のVTuberは、それぞれに担当のマネージャーが付くが、個人勢のマネジメント業務に関しては、手が空いている人で回していくために専属がつくわけではない。

 他にも細かい契約の内容、プランに関することも考え中。


 募集に関してだが、Webで申し込みをして貰って、それを私たちで審査するという形になる。

 審査の内容は、登録者数や再生回数、普段の同接人数やSNSでの発言など、様々な観点で行っていく。登録者が多くても再生回数が少なければ意味がないし、凄く売れていてもSNSが荒れまくっていたらこちらにまで被害が出る可能性があるので、あまり望ましくないわけだ。

 あくまで所属ではなく業務を依頼されている形になるので、炎上騒動を起こしてもこちらからキツく咎めるなどが出来ない。

 ふんわりと伝えることは出来るだろうが。そこが面倒くさいところではあるが、逆にここがいいところでもある。

 普段の自分を企業関係なく前面に押し出せて、それでいてマネジメントを受けられるわけだ。


「発表は3期生募集開始と同時で良いんですよね?」

「そうだね。募集開始等々に関しては汐ちゃんが配信をしてくれるかい?」

「げッ……、わ、わかりました~」


 ここは裏方である私が配信を行うことになった。

 まあだろうなとは思っていたよ。




「あ、そういえばグッズとかはどうしますか?」

「もう動いて貰っているよ。出来れば同時に発表をしたいから、募集開始の配信は少し後にして欲しいかな」

「わかりました」


 現状準備されているグッズが、タペストリーやアクリルキーホルダー、アクリルフィギュアなどになっているらしい。出来ればボイスなんかもやりたいけれど、それはライバーに直接事務所に来て貰う必要があるので、少し慎重に検討しているとか。

 アニメやインターネットコンテンツのグッズを扱う会社にも話をしていて、グッズショップなんかで売り出せそうだ。これは良い感じ。

 私たちには関係者としてすべてのグッズの試供品が送られてくるとか。部屋の1つをヲタ部屋に改造する必要がありそうだ。


「じゃあそういうことで、細かい資料作成なんかは汐ちゃんに任せて大丈夫かな?」

「はい。近日中に仕上げておきます」

「助かるよ。じゃあ質問とかあったら遠慮なく聞いてね」

「了解です」


 ようやく裏方らしい仕事がどさっとやってきた。それも相当な重要度!

 ただ面倒くさい仕事が振られただけだけど、そこそこうれしいな。頼られている感があって。まあ頑張ろう。






「先輩、少し大丈夫ですか?」

「どうした?」


 オフィスで書類を作成していると、子供組を担当している西原さんから声を掛けられた。


「それが、梓ちゃんが配信時刻になっても全然配信を始めなくて、チャットで呼びかけてみても全然出ないんです」

「えぇ? どういう……?」


 どうやら梓ちゃんが音信不通らしい。ど、どうして?


 まあ、音信不通という大げさなものではないかもしれないけど、配信時刻になっても配信が始まらない。連絡が付かないというのは少し不安になる。


「今って他の仕事ある?」

「あー、玲音ちゃんからサムネ作成を依頼されていて……」

「新藤さんに回せない?」


 新藤さんとは、SunLive.にて映像編集やサムネイル作成などの要員として雇われた新しい社員さんのことだ。サムネイルは新藤さんの手が空いていればそっちに回すことになっている。


「それが……」


 それがどうやら新藤さんは朱里が自分で編集して自分のチャンネルで上げる動画のチェックをしているらしい。


「ッスー……、おっけ~。じゃあとりあえずサムネイルの作成やっちゃってて。私が梓ちゃんのやつはやるから」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 そういってぺこりと一礼をして去って行った。




 梓ちゃんどうしたんだ……? 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る