第53話
「よし、マネージャーのみんなも良い感じになってきたかな?」
「また慣れていないところもありますが、大方任せられるようには」
「おっけー、じゃあそろそろ本格的に3期生の募集を始めよう。それと、この間話にあがった個人勢のマネジメントの件だけれど、こっちも同時進行で進めていこう」
マネージャーが入ってから既に2週間が経過している。初めの数日はモデレーターのやり方が分からないとか、そういうことでわちゃわちゃとしていたけれど、だんだんと慣れてきて今ではしっかりマネージャーとしてやってくれている。
私も一応マネージャーとしての業務は行っているのだが、担当が香織と私で、私に関してはほとんど配信をしないので、実質香織を1人だけ担当している形だ。
香織は個人勢だったうちはほとんど毎日配信をしていたのだが、SunLive.に入ってからは配信頻度を落としている。SunLive.で誰も配信をしていない日に入れたりとか、そういう隙間を埋める役割を自分から行っているからだ。
とは言っても根強い人気があるのは事実で、彼女が配信をしているときはやはり忙しい。見ないといけないコメントの数が多いからだ。
試しに他の2人にやらせてみたけれど、目が痛いとかそういうので即刻リタイアしていた。まあ香織のマネージャーは私で固定だから大丈夫だけれど、私が体調崩したときとかは代わりにやって貰うこともあるだろうから、出来るようにはして欲しい。
まあそういうことで、私の仕事量が大幅に減って、時間に余裕が生まれた。
会社の社員も増えたことで、私が行うマネジメント業務以外の仕事がほとんどない。とは言っても会社の大方の書類は私の方に一度回ってくるので、そちらの処理に多少の時間を要してはいる。
それでも社員が増える前よりは明らかに仕事量は減っているわけだ。
この会社の理事は社長と私と香織の3人。この3人が比較的仕事量が減っているこのタイミングで3期生の募集を掛けることにしたのだ。
今回は2期生とは違ってしっかり準備期間をとって、キャラクターもその人の意見を多く聞く様な形で行こうと思っている。どのくらい掛かるかは分からない。前回が凄く早かったから。
個人勢のマネジメントはすぐにスタートする。まあ募集掛けて審査をして選って言う感じだから大丈夫そうだね。
問題は、人数が多すぎた場合に対応できるマネージャーの数が足りないと言うことだ。現状3人で回している所に、20人も30人も来られると非常に困る。だから厳選して審査をするという形になるだろう。
今回ばかりは勘弁して欲しい。社長はマネージャーの数がさらに増えたら応募してきた人みんながマネジメントを受けられるようにしたいと言っていた。まあ審査はあるけどね。
「まあそういうことなんで、明日香織ちゃんを入れた3人で細かい会議を行うから、よろしく」
「わかりました」
「ただいま~」
「お、早いね」
「まあね。仕事が減ったから」
最近は定時を待たずに家に戻ってきている。普通に仕事がない。
最近気づいたのだが、VTuberの事務所はまず定時という概念がない。だから定時を待たずとはいえないかもしれない。
朝早くから配信をするVTuberと、夜遅くから配信をするVTuber。それらに合わせるためには必然的に昼夜逆転する必要がある。
今まで私1人だったときは真夜中の配信を遠慮して貰っていたのだけれど、3人体制になった今、真夜中配信が出来るようになった。担当が寝ている間は起きているマネージャーが対応するという形だね。
だから家で仕事をするケースも多い。
「そういえば、そろそろ3期生募集始まるって」
「本当!? 楽しみだね~」
「で、今回は私と香織の2人をメインで審査を行うから、明日詳細の会議を行うそう」
「わかった!」
これから忙しくなりそうだなぁ。
湯船に浸かって天井を見る。
そういえば香織は足をちゃんと伸ばせないらしい。私は身長が低いからちゃんと伸ばせる……って! やかましいわ!
今、私はとある心配をしている。
これ、個人勢のマネジメント業務始まったら私らマネージャー寝る時間なくなるんじゃないか?
昼間に配信する人、夜中に配信する人、そのすべてに対応しないといけないわけだ。しかも現段階は3人で。正直言って人数によっては人手が全然足りない。新卒で相当雇うというのは聞いているけど、応募人数によってはすぐにマネージャーを募集に掛ける必要がある。
それでオフィスに席を用意するとなると……、思ったより早くこの場所ともおさらばかもしれないな。
はぁ、落ち着いたと思ったけど、また忙しくなるだろうなぁ……。
私としては、所属と提携でどれくらい対応に差をもうけるのかを早めに決めないとダメかもしれないな。
まあそこらへんは明日の会議で話し合うとしよう。
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