第52話 マネージャーが増えた
「本日からよろしくお願いします」
また時は流れ、新しく社員さん達が入ってきた。今日から私も先輩ですね~!
「じゃあ、マネージャーの2人は汐ちゃんお願いね」
「了解です」
私にも直属の部下が出来たわけだ。
マネージャーの最高責任者は私。マネージャー長みたいなかんじ? なので私が新しく来てくれた2人の教育を行う。
ちなみに、2人とも私より年上です……。やりにくい。
「おはようございます。浅海汐です。小さいですがちゃんと社会人ですよ」
「「よろしくお願いします!」」
「じゃあ軽く自己紹介をお願いします」
場所を事務所内の1室に移して、そこで今後について話し合いを行うことにした。まずは軽く自己紹介をした。2人とも女性で、西原さんと神田さん。2人とも桜木つぼみを見てくれていたらしい。
西原さんは元気で活発な体育会系っていった感じの子だ。すこし天然っぽいオーラが出ている。実際神田さんより若くて、私に年齢が近い。ただ、社会人として数年働いているので、頼りになりそうだ。
私に年齢が近いと行っても、私よりも身長が高くて髪もロングだ。ただ、凄いさらさらで凄いきれい。美しい髪をしている。声もクリーンで透き通る様な美しい声。百合ちゃんに近いかな?
神田さんは落ち着いた人。前職が相当なブラック企業だったらしく、トラブルに強そうな予感がしている。正直頼りにしている。
年齢は西原さんよりも少し上。髪の毛はショートで、ブラック企業で働いていたと聞いて納得するような闇のオーラを放っている。ちょっと圧があるかも。
黒い眼鏡を掛けていて、弱々しそうな声なのに迫力が込められていて不思議な感じだ。うちのVTuberには似ている人はいないかな。
なんか私より2人の方が優秀かも……。
「現状、当事務所所属のVTuberは私が1人でマネジメントをしていますが、だんだんと引き継ぎを行っていきます。しばらくは私もつきますが、早速西原さんは礼文梓と柊玲音の2人を、神田さんは鷹治百合、鬼灯朱里そして桔梗撫子の3人をお願いします」
「わかりました」
「玲音ちゃんに関してはまだ未成年ですので、そこら辺の意識をお願いしますね」
「了解です」
うちの事務所にもついに動画編集者が入る。とは言ってもまだ1人だけなので、公式チャンネルの編集をメインに行う。
VTuberの個人チャンネルの編集はタレントがやる場合が多いのだが、たまに手伝いをする場合や、突然サムネイルの依頼が来たりと言うことがあるので、編集関連も話した。
「確かに先ほど行ったとおりのVTuberを担当して貰いますが、困ったことなどがあればマネージャー、現状3人ですが、全員で協力して仕事を分担しながら行きましょう」
「わかりました」
「何か質問とかはありますか?」
「はい! 業務に就く前に、実際にVTuberの方とお話をしたいのですが、時間を設けてもらえたり出来ますか?」
と西原さん。たしかに西原さんが担当する子供組(ファンの間で呼ばれている梓ちゃんと玲音ちゃんのグループ)は、実際に話して信頼関係を築いた方がやりやすいかもしれない。
「そうですね……、少し連絡を取ってみましょうか。あ、神田さんも話しますか?」
「是非お願いします」
神田さんが担当する大人組は、正直凄く扱いが大変だと思うので、最初から振り回されないと良いなって言う感じかな。
でも多分大丈夫だと思う。どこから湧いてくるか分からないけれど、神田さんなら大人組をなんとか出来る予感がする。
「どうします? それぞれの担当と話しますか? それとも全員と話してみます?」
「是非全員でお願いします。担当以外の子でも関わるところがあると思うので」
「そうですね。じゃあ全員でいきましょう」
こうしてVTuberの子達との初対面が始まった。
初対面は順調に行われた。2期生の配信で言われていたとおり、玲音ちゃんが裏でめちゃくちゃ清楚の可愛い系って言うことに驚いていたり、朱里が配信とまったく同じキャラなことに少し引いていたり。
まあ短い時間だったけれど、2人のコミュニケーション能力のすごさが分かった。
西原さんは陽オーラを出しながら巧みな話術で相手の心を開き、神田さんはブラック企業で培った(と思われる)相手の感情を読み解きながら最適な言葉を繰り出す。そんな特殊な話法でペースを奪っていた。
いける。これなら大丈夫そうだ。
「よし、これで顔合わせは終わりだね」
「え? まだ2期生の人しかお話しできていないです。つぼみさんと茶葉さんともお話ししたいです」
「あ~、ちょっと待っててください」
そういえば忘れていた。
香織起きてるかなぁ……。なんか昨日「インスピレーションが湧いた!!!」とかいって真夜中に大声を出しながら絵を描きに行ってたから、もしかしたらまだ寝てるかもなぁ。
いそいで寝室に向かう。
「ん? 汐ちゃん」
「あ、起きてた」
ベッドに横になりながらスマホを弄る香織の姿があった。様子を見る感じ、多分1時間前には起きていた感じかな。
「ちっと来て欲しい。新入社員さんがVTuberと顔合わせしたいって」
「ん? 了解~」
ということで、香織にササッと準備をさせて、2人が待つ部屋まで一緒に降りる。
「こんにちは! 桜木つぼみこと花咲香織です! これからよろしくお願いします~」
「おお! 本物!」
「本物って、そういえば見てくれてたんだって? うれしいね!」
「そうだね」
香織って配信とリアルのテンションがあまり変わらない人なのだ。声を作ったりとかもしてないので、2人は一瞬で気がついたらしい。
「茶葉さんはいらっしゃらないですか?」
「え? いらっしゃいますよ? ほら、って!! 汐ちゃんまた言ってないの?」
「あ、忘れてた」
2期生の時のことを繰り返してしまった。また私が茶葉ですって言うのを忘れていた。
「えっと、茶葉こと浅海汐です。よろしくお願いします」
「あ、裏方って本当だったんですね」
「うぐッ……、そ、そうなんですよ~」
なんか全然とげがない言葉なんだけど、凄いチクチク刺さった。
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