第45話

 疲れたなぁ~。


 ご飯を食べ終え、湯船に浸かりながらそう心の中でそうつぶやく。ぐーっと腕を伸ばし、肩までしっかりと浸かる。

 私たちの家のお風呂は広いと思う。私がちっさいというのもあるのだろうが、私くらいなら横になっても大丈夫。たまに香織と入るときがあるが、全然狭いとは感じない。

 お風呂というのはベッドと並んでその日の疲れを癒やすところ。湯船に浸かって天井の隅っこを眺めると、ほうっと息が出る。


 私が動く度、水が音を立て、浴室内に反響する。耳を澄ませばリビングから2人が何やら歓談をしている声……。


「でねでね、これが汐ちゃん小学生時代~」

「えぇ!? 全然変わってないですね! 可愛い!!」


 ……。


「こおおぉぉぉおらああああッ!!!」






「で、何この写真」

「はい。すみませんでした……」


 私の目の前、香織が正座をしている。ちなみに玲音ちゃんは巻き込まれただけだと思うので、ソファーでくつろいで貰っているよ。

 そんな玲音ちゃんが一言。


「コラって怒る人初めて見た……」

「む」






 私の目の前、香織と玲音ちゃんが正座をしている。ソファーの上にはぽつりと遊び相手を待つクマのぬいぐるみ。


「で、何この写真」

「わ、私の秘蔵写真です」

「いつ撮った?」

「えっと、おかあさまに頂きました」

「そう。……ちょっとまって、おかあさまって義の方? 普通の方?」

「義の方だけど?」

「……ちょっとまて」


 机の上に置かれたスマホから母に電話を掛ける。

 夜中だろうと気にしない。ていうか多分起きてると思う。


「もしもし?」

『あら、汐ちゃん夜遅くにどうしたの?』

「まま香織に私が小学生の時の写真上げたでしょ!」

『上げたわよ? 悪い?』

「あのさぁ、プライバシー!!」

『あんたらに2人の間にプライバシーも糞もないでしょ。もう切ってもいい? 私今ドライヤー中』

「え? ちょ!」

『――――』


 ……。


「汐ちゃん、もう正座やめていい?」

「いいよ。香織、人の写真勝手に見せないで」

「え~、可愛いじゃん。玲音ちゃんもそう思うでしょ?」

「はい。可愛いです」

「そんなことは関係ないの! ダメなもんはダメだからね!」

「はーい……」


 はぁ、困ったやつだ。






 赤の2を出す。私のカードはこれで残り1枚。

 私の次は香織で、香織は私が出してすぐに緑の2を出してきた。それもなにか企んでいるような目で私を見ながら。


「ハイ~! 汐ちゃんアウト~!」

「は? なぜ?」

「ウノって言ってない~!! ダメですぅ~」

「はぁ!? ちょ、おかしいおかしい!!」

「ダメなもんはダメですよ~! ルールだからね!」


 そう勝ち誇ったような顔で私を見る香織。


「まあいいや。だって、香織のカード数、ぷぷぷっ!」

「ムキーーっ!! ここからだから!!」


 今、香織の手にはカードが11枚ほどある。ちなみに玲音ちゃんは5枚。

 私は残り1枚だったのだが、ウノって言わなかったので2枚追加で3枚だ。


 そう、私たちは今カードゲームで遊んでいる。


「すみません!」


 そう言って玲音ちゃんが出したカードは+2のカード。ふふふ、大丈夫だよ玲音ちゃん。


「はい、私もぷらす~」

「……こんなにカードを持っていて私がプラスを持っていないとでも???」

「えぇ!?」


 玲音ちゃんが素っ頓狂な声を出す。そりゃそうだ。だって香織はいま7枚もカードがあるんだから。


「……持ってないです~」

「なんだよおまえ!」


 そうしてすぼすぼと4枚のカードを引く香織。どうやら香織は絶望的に運がないらしい。


 私が出したプラスカードは緑色。玲音ちゃんは緑を持っていないらしく、1枚引いて私の番だ。

 私は緑を持っている。そうして準備は万端。


「ウノッ!!!」


 そう勢いよく宣言しながら緑のカードを置く。


「くぅ~、負けるー! このままじゃ負ける!」


 そううねる香織。勝ったな。


「玲音ちゃんつないでくれぇ!」


 そういって香織が出したのが+2のカード。


「任せてください!」


 そうして出された+4のカード。


「……くそっ」


 私の手元に6枚追加。大分接戦のゲーム。非常に面白かった。




 ちなみに、1位が玲音ちゃんで2位が私。もちろん香織が3位だった。 

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