第40話 クリスマス配信⑪
2時間後、目覚ましの音で目を覚ました。
「おはよ」
「おはよう」
そう言って香織といつものようにほっぺにキスをする。
「はわわわわ……」
「「あ……」」
玲音ちゃんがいるのを忘れていた。
今の時刻は午前6時。玲音ちゃんの配信が8時からで、香織が9時から。私は11時からなので、5時間ほど時間がある。
とりあえず玲音ちゃんのご飯を準備しないといけないので、ベッドから起き上がってリビングへと向かう。
「おはよー」
「あ、おはようございます」
リビングにいくと、梓ちゃんが起きていた。なお、百合ちゃんはスースーと可愛く寝ている。
ひとまず顔を洗うために洗面所に向かい、パシャパシャと顔を洗う。2時間程度しか眠れていないけれど、大分気分がすっきりした。
もかもかのタオルで優しく顔を拭き、キッチンへと向かう。
「玲音ちゃん朝はパンとご飯どっち派?」
「パンです」
「おっけー」
5枚切りの食パンをトースターに入れて焼いていく。
その間に目玉焼きを作ろうと思う。私は目玉焼きの下にベーコンを敷く。
軽く油を塗ったフライパンにベーコンを並べ、その上に卵を落とす。ある程度卵に火が入ったら少し水を入れ、蓋をして軽く蒸し焼きにする。
ひっくり返す家もあるらしいが、私はひっくり返さない。ちなみに半熟だ。
焼けたパンを取り出し、マーガリンを塗っていく。
「いただきます」
「どうぞ~」
玲音ちゃんはまだ高校生だから、やはり規則正しい生活を送らせてあげたい。
そっかぁ、玲音ちゃんはまだ高校生なのかぁ……。ピチピチだね。
「汐ちゃ~ん、私のは?」
「自分でやれや……」
パクパクとパンをかじる玲音ちゃんを観察しながらぼーっとしていると、玲音ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
天使だね。
結局香織と梓ちゃん、起きてきた百合ちゃんの分のご飯を準備していたら、気がつけばもう6時半を回っていた。
例の汚部屋に向かい、配信で作っていた曲を完成させるため、パソコンに向かう。
細かいサウンドを追加して、できるだけ重厚感のある、何回聞いても飽きないような曲にしたい。
結構作業にこだわりが強くて、いくつものバージョンを作ってしまうと言うのが悩みだ。
ただ、今回の場合はイメージがしっかりと固まっているので、案外サクサク作業が進む。
“間”を大事にしながらも、できるだけ無音の時間をなくす。また、音の疎密を調整し、音圧を調整しといろいろやっていると、時間はどんどん溶けていく。
「こんなもんかなぁ」
相当手を加え、自分でも納得できるほどまで曲を作ることが出来た。
時刻は9時ちょっと前で、どうやら2時間以上もパソコンに向かっていたらしい。
実は配信で作っていたメロディーの部分も一部変更を入れたりしていたのだ。ただ、私にしてはこれでも短いと思う。いや、普通くらいかな?
後はこれをアップロードするだけ。
TeaCloud用のオープニングというか、曲が始まったときに出てくるアイコンのアニメーションというのは用意されていて、そういうのを組み合わせて動画を作っていく。
その際、背景の絵を用意しなければいけないのだが、私はとあるフォルダに大量の絵を保存している。
そのフォルダの名前は『落書き集』だ。このフォルダだが、香織が暇つぶしに描いた絵がたくさん入っていて、私はこれを自由に使って良いと言うことになっている。
香織は趣味が配信と絵なので、基本配信をするか絵を描いている。そのため、このフォルダの中には大量の絵が保存されているのだ。
その中から今回着けようと思っている曲名に合う爽やかな疾走感のある絵を選ぶ。
「これかな」
やっぱり香織は絵が上手い。本当に上手い。どれもいい絵なので迷ってしまったが、なんとか1枚を選んで動画編集アプリに読み込ませる。
後は良い感じのエフェクトをつけて完成だ。
投稿のチャンネルは茶葉ちゃんのチャンネル。
「タイトルは……、まあこれでいいかな」
完成した動画をアップロードする。多くの人に聞いてもらえたらうれしいな。
TeaCloud - Fresh Start
○茶葉ちゃん 〔チャンネル登録〕 ⇒共有 +保存 …
チャンネル登録者数 16.3万人
203回視聴 1分前
お久しぶりです。茶葉ことTeaCloudです。長らく失踪していてすみませんでした。VTuber関連で忙しく、なかなか作曲をする時間がありませんでしたが、時間が出来たので少しずつ再開します。
ここから再出発という意味を込め、"Fresh St…… もっと見る
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