第38話 クリスマス配信⑨
「あーあー、マイクテス、マイクテース、聞こえてる?」
時間になったことを確認して、早速配信をつける。
マイクテストをするが、どうやら上手く音が入っていないらしく、コメント欄には『あれ、聞こえない』だとか、『音入ってないよ~』だとか打たれている。
私は普段配信しないから、こういう細かいトラブルがあるわけ。教えてくれるのはありがたい。
「直すからちょっと待ってね、と」
スマートフォンで自分のコメント欄にそう打ち込む。
『直すからちょっと待ってね、と』
「音入ってるじゃん!!」
コメント
:草
:w
:草
:www
:草
:草
:草
:一致団結すなw
:草
「せっかくリスナー良いやつだと思ってたのに、やっぱりダメじゃん」
あーあ、たち悪い。今ので嫌いになったわ。
「まあいい。気を取り直して配信始めます」
時間は1時間。先ほどの香織との配信で決めたように、今日はこの1時間という短い時間で曲を作らないといけないのだ。正直結構ギリギリ。
コピーとかでつなぎ合わせてなんとか聞ける物が出来るかな程度で、修正とかをしっかり入れるなら間に合わない。
私はライブ配信で作るのを目的とした作曲アプリを使っているため、コピーとかそう言う短時間で作ることに特化した機能がいくつか入っている。
もしかして昔の私は将来こうなることを予想していたのだろうか……?
まあんなことないよね。
「時間が結構短いので、サクッとはじめて行きます。もう配信に映ってる思うけど、私はこのアプリを使っています。使いやすいからおすすめ」
ここから私の作曲配信が始まる。
作曲の方法は人それぞれだと思う。初めにドラムを打ち込む人とか、ベースラインを引く人とか、シンセを入れる人とか、人それぞれで何が間違っていて何が一番正しいのかは存在しない。
作曲をする人の数だけ正解が存在しているのだ。どんなに有名な人がおすすめしていても、結局は慣れだからね。何事も。
ちなみに、私は最初からメロディー行っちゃう。メロディーを打ち込んで、そこからどんどん付け足していく感じ。
メロディーがあった方が曲の見通しを立てやすい。逆にメロディーがあると邪魔で他のことに集中できないから最後という人も居るらしい。
「ふん、ふん、ふ~ん、てってれてって~。よし、いいね」
こんな感じで鼻歌を歌いながらリズムを決めていく。実際に打ち込んでおかしな点があったら修正を入れる。
コメント
:鼻歌助かる
:可愛い
:可愛いなぁ
:助かる
:かわゆ
:\50000 作曲楽しんで
:既に良い感じ
:やべぇ、そのメロディー好きだわ
:もうTeaCloud味があるな
私は打ち込みにはキーボードを使っている。
あ、ややこしいんだけど、キーボードって文字を打つ方のやつじゃ無くて、ピアノの鍵盤みたいなやつね。
MIDIキーボードってやつ。
作曲を始めた当時はピアノなんてやったことが無くて、完全に独学で始めた。当時はとても苦労したけど、今はある程度弾けるようになった。
まあ良く動画とかで見るクラッシックを弾いたりとか、そういうレベルにはまだ達してないけど。
「そういえば、これ出来た音楽ってどこに上げれば良いんだろ。TeaCloudのアカウントかな。それとも茶葉の方のアカウントかな」
正直今更アカウントを分けるのも面倒くさい。
吹っ切れて切り抜きも茶葉のアカウントで上げてるし、そこにオリ曲が加わったくらい大丈夫でしょ。
「あ、ごめんね。無言になっちゃう」
コメント
:大丈夫
:眠くなる
:音が心地良い
:そういえば茶葉ちゃんって無印とKawaiiどっち派なの?
「あー、基本どっちも好きだけど、やっぱりKawaii系のポップさが好きだね。実際今作ってるのもそれだから」
FutureBassはベースミュージックカテゴリの中にあるジャンルで、重厚なサウンドが特徴だ。最近だと結構いろいろなところで聞けるよね。
まあ簡単に言うとEDM。
いろいろ細かい説明をしていると逆に分かりにくくなるから割愛するけど、比較的かっこいい感じのが多いのが無印、普通のFutureBassだ。
で、そんなFutureBassには派生形があって、それがKawaiiFutureBassっていうわけ。
名前から分かるとおり、結構珍しい日本発のジャンルで、比較的最近できたばっか。
FutureBassの重厚なサウンドを残しつつ、電子音や明るいポップな音を積極的に取り込んでいて、本当に可愛い。
実際に聞けば分かるんだけど、可愛いとしか言えないんだよね。他のどのジャンルにも変えられないかわいさがある。
そのかわいさが魅力で、私は主にこっちをメインに作ることが多い。
コメント
:TeaCloud久しぶりに聞いてきたけど、やっぱりガチで良いな
:それはそう。マジで復活うれしすぎる
:独特なリズムが好き
「いやぁ、こんなに好いてくれる人が居るとは。素直にうれしい」
そう雑談をしながらだけど、着々と曲が出来上がっていく。
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