第37話 クリスマス配信⑧
つぼみ「そういえば最近ほとんど出かけてないよね」
茶葉「そうだね。私たちも結構忙しくなってきたもんなぁ」
つぼみ「最近本当に茶葉ちゃんは忙しそうだよね。私は今まで自分でやっていたことが事務所でやってもらえるから逆に楽になったよ」
茶葉「うん。その仕事は私に来てるんだよね」
つぼみ「ごめんごめん。まあどこか遊びに行きたいね」
茶葉「そうだなぁ」
とは言っても、今は冬でどこも寒い。やはり家でぬくぬくしていた方が楽しいというのはある。
寒い冬に暖かい毛布にくるまるのが至高じゃないか?
つぼみ「そういえば、こうやって企業の裏方になったわけだけど、今のところどう? 何か変わったこととかある?」
茶葉「ある! それは相当ある!」
お酒をちびちびと飲みながらの雑談配信に方向を転換した私たちは、なんとか話題を絞り出していく。
普段私たちの身に起きる面白いことはすべて普段の香織の配信で話されてしまっているから、こうやってひねり出さないといけないわけだ。
企業の裏方になって一番違ったことと言えば、やはりタレントを支えるのが自分一人ではなくなったと言うことだと思う。
今までは得意なことも苦手なこともすべて自分一人でこなしていて、チェックは私と香織だけ。だからもちろんチェックで見つからなかったミスというのがいくつかあったわけだ。
こうやって香織は裏方がいたから良いかもしれないけれど、個人でやっている人が皆裏方をつけているわけではない。だから大変だっただろうなぁと思っている。
まって、今ので凄い案浮かんだかもしれない。
ちょっとこれはまた今度社長と話そう。
茶葉「まぁ、やっぱり一番変わったのはマネジメントの対象がつぼみだけじゃなくなったと言うことだと思う。2期生のメンバーもマネジメントをするし、多分ここから3期生4期生と入ってくることになると思う。
きっとその頃には今のように直接マネジメントをするというのは本当につぼみくらいになってくると思うんだけど、やっぱりタレントにもいろいろな性格の人が居て、いろいろな考え方で動いている。
それを1人1人あわせて対応を変えていくというのが難しいし、楽しいなって感じるよ」
つぼみ「確かに今は私含めて6人のマネジメントをほぼ1人でやってるわけだもんね」
茶葉「そうだね。いまマネージャーは私1人だけだから」
つぼみ「あれ? 確か茶葉ちゃんって最高執行責任者みたいな感じだよね?」
茶葉「そうなるね」
つぼみ「なんか凄い肩書きだね。キャリアウーマンって感じ。ちっこいのに」
茶葉「……ん? 最後余計じゃないか?」
つぼみ「気のせい気のせい」
コメント
:はえぇ、茶葉ちゃんすげえな
:がちの裏方でビビる
:\50000 頑張ってくれ
:大変そうだなぁ
:まだ2期生だけだけど、今凄い勢いでSunLive.伸びてるから、続くんだろうなぁ
:まだ出来て半年も経ってないのに、凄いよホントに
今はVTuberの事務所がいくつも建てられていて、それぞれやり方を工夫しながら頑張っている。
SunLive.よりも大きな企業もいくつかあって、私たちはその後を追うという形だと思う。
でも、そういう昔からあるような物を除けばSunLive.は頭1つ出ていて、勢いに関しては大きな企業に引けを取らない。
たぶん桜木つぼみというVTuber全体で見ても相当人気のあったVが作った箱と言うだけあって、初速が早かった。
あとは2期生の魅力だと思う。それぞれ思い思いの配信をしてくれていて、きっと悩むこととかもあると思うけど、一生懸命に配信してくれている。
本当にありがたいことだ……。
つぼみ「えぇ!? 茶葉ちゃんどうした!?」
茶葉「なんか、ちょっと、ぐっとくるものが……」
つぼみ「えー?! ま、まぁ、頑張ってきたからねぇ」
茶葉「まだまだこれからだけどね」
気がつけば私の目から涙が出てきてしまっていた。
心の底に少しそんな気持ちも芽生えているよ。
あぁ、これ酔いが覚めて見たらまた黒歴史なんだろうなって。
えぇい、今はそんなこと知ったこっちゃねぇ!
茶葉「今夜はヤケ酒だぁ~!」
つぼみ「えぇ!? ヤケ酒の意味違くない!?」
つぼみ「ということで、なかなかカオスでしたが、なんとか2人の配信も終わりの時間を迎えました」
茶葉「いやぁ、マジでここまで見てくれてありがとう」
つぼみ「本当にありがとうございます。で、ここからは茶葉ちゃんのソロ配信と言うことで、意気込みとかどうですか?」
茶葉「えっと……、マジで不安なんですが、なんとか頑張りますので、お手柔らかにお願いします……」
珍しく私が結構弱気だと思う。
自分で言うのもなんだけど、私は結構オラオラ系の体育会系だと思うし、実際そう思って生きてきた。
でも1人で周りに誰もいない状態で配信するというのは実は初めてだ。
内容は先ほど決まった作曲で、周りが言うには私の得意分野らしい。でもやっぱり不安だなぁ……。
つぼみ「私は寝ちゃうけど、何かあったら容赦なく起こして良いからね」
茶葉「うん。初めからそのつもりだ」
つぼみ「う~ん、ちょっとは遠慮して欲しい、かも?」
茶葉「知らないね。裏方に配信をやらせるのが悪い」
つぼみ「じゃあ社長たたき起こしにいったら?」
茶葉「いいね!」
どうせ私に配信を任せっきりで社長なんてもうとっくに夢の中なんだろうな。そう思うと頭に血が上ってきた。
あの野郎……。
コメント
:【Sanjo.】起きてるが? バリバリだが
茶葉「あ、起きてる」
社長の名前は実は
つぼみ「社長さんも大変だね。お疲れ様です」
香織がそういうと、長文で社長は自分が今エナドリを飲みながら作業をしていることを明かしてくれた。
どうやら彼女は今晩寝ないらしい。社長として頑張るんだ!だと。
あら、案外かっこいいところもあるもんだな。
つぼみ「ということで、私は寝ますので、茶葉ちゃん頑張ってね」
茶葉「はい。ぼちぼち頑張る」
つぼみ「じゃあ、これから5分間のインターバルです。今のうちのトイレとか水取りいったりとかしてね~! じゃ、お疲れ~」
「汐ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。香織はしっかり休んで」
「うん。お言葉に甘えさせて貰うね。おやすみ」
「うん。おやすみ」
そう言って頬に軽い口づけを交わすと、香織は少し不安そうな表情をしながら寝室へ戻っていった。
私は1度頬をペチンと叩いて、小さくよしっ、とつぶやく。
そろそろ私の配信が始まる。
そういえば、作曲配信をしようと思っていたけれど、ここに機材がない。
私のPC部屋にある。一応この家は防音設備がバッチリなので、私の部屋で配信したとしてもそう大きく外に音が漏れることはない。
私の部屋で配信をしよう。
そう言って私も香織の配信部屋から出る。
「おっとっと、その前にトイレトイレ……」
私の戦場に足を踏み入れる前にトイレに入っておく。
あぁ、私の部屋で配信することになるなら少し部屋を片付けておけば良かった……。
まあいい。視聴者には汚部屋と言うことをばらさないようにいこう。
あれ? もうバレてる?
……うるさいっ!!
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