第33話 クリスマス配信④

茶葉「はぁ……、もういい?」

百合「すみません。ありがとうございました」

茶葉「おう……」


 私たち2人の新衣装発表で相当な時間を取ってしまった。

 私は悪くないと思う。悪いのは周りの人たちだ。


 みんな笑顔、ほくほくとした顔でカメラと向かい合っている。もちろん香織も例外では無い。

 そんな中たった一人の例外が浅海汐。そう、私である。

 非常に疲れた。疲労困憊だ。

 少し休憩したい。


つぼみ「進行役の茶葉ちゃんが疲れているご様子なので、ここからは私が司会を受け継ぐね~!

 新衣装をしっかり発表できたと言うことで、さっそく番組表の通り、次の配信に移っていきます。諸事情で少し早めに行きますよ~

 じゃあ玲音ちゃんよろしく!」

玲音「おう。次は我ら2期生で配信、と行きたい所なんだが、生憎この日本という国では未成年は午後10時以降仕事が出来ないらしい……。

 我が元居た暗黒王の支配する国、†グラムレインビュルド†ではそんなことは無かったのだが……」


 う゛っ……。






「おわったあ……」

「お疲れ様」

「お疲れ様です……」

「おつかれ~」


 オープニングが終了して、私と香織は私たちの家へと帰ってきた。

 今は2期生たちがみんなで配信をしていて、私たちは休憩時間だ。

 社長に聞いたところ、クリスマス配信中は私の裏方としての仕事はほとんど無いらしく、他のVTuberと同じようにしてくれて良いらしい。

 ただ、2期生のおもてなしは頼んだ。もしかしたら途中で普通に裏方もやって貰うかも。

 とは言っていた。


 あくまで裏方仕事がほとんど無いだけ。

 一応私裏方なんだけどなぁ……。


「番組表では一応ここから1時間半くらい暇みたいだけど、どうする?」

「そうだな……、夕飯食べるか?」


 バタバタしていて少し遅くなってしまったのだが、先ほどからおなかがすいている。

 配信中におなかが鳴ってしまったら大変と言うことで、休憩の間にサクッと食べることにする。

 せっかく泊まりに来るから料理頑張らないと! と2人して意気込んでいたのだが、どうやらクリスマス配信中はロケ弁のような物が出るらしい。

 そのお金はどこから出てきたんだ……、と突っ込みたくなるがまあそれは良い。


「あ、あの、我ここにいても良いのか?」

「いいんだよ玲音ちゃん。玲音ちゃんはまだ高校生だから! たくさん甘えな!」

「う、うぅ……」


 2期生1人だけ仲間はずれみたいでかわいそうだけれど、一応法律に従おうと言うことで私たちに加わって玲音ちゃんは休憩中だ。

 玲音ちゃんはやっぱり裏では可愛い高校生だ。真面目でかわいい。


「「「いただきまーす!」」」


 配られた唐揚げ弁当を3人で食べる。

 私は片栗粉タイプよりもバッター液タイプの唐揚げが好きだ。あのじゅわっとジューシーな感じがたまらない。

 香織は「どっちもおいしい!」らしい。


「げ、タルタルソース入ってる……」

「あー、汐ちゃんタルタルソース嫌いだもんね」

「え!? 茶葉先輩タルタル嫌いなんですか?!」

「そうだよ……」

「おいしいのに……」

「おいしくない! ほら香織! あげる!」

「ありがと!」


 私はタルタルソースが嫌いだ。

 マヨネーズは好きで、卵も好きだ。でもそれを混ぜ合わせてタマネギを入れるのは認められない。

 いつもこうやって香織にタルタルソースを渡している。

 香織はタルタルソースが好きらしく、たっぷりと唐揚げにつけて食べている。

 せっかくの唐揚げの味は感じているのだろうか……?


「いやぁ、配信疲れたね~」

「そうだね。この後どうする?」

「そうだねぇ、私はこのまま2連で配信だから今やってる配信を見ておこうかな。

 汐ちゃんはどうする?」

「私は仮眠かなぁ……。一応3時間くらい配信無いし、次は深夜だからね。寝落ちとかになるとやべぇ」

「汐ちゃん夜弱いもんね」

「やっぱり人間夜に寝ないとダメだよ」

「えらいね」

「んなことないよ。玲音ちゃんはどうする?」

「えっと、私も仮眠しようかなと……」

「玲音ちゃんの場合は仮眠じゃ無くてガチ寝だよね~」


 私たちがこうやってのんびりとご飯を食べている間も、2期生のみんなは下で配信をしているわけだ。

 そう考えると凄いなって思う。私がこの後仮眠を取っている間も配信している人はしているだろうし、リビングではきっと待機組がご飯を食べているのだろう。

 そうやってかわりばんこで配信していく。

 それを眠い目を擦りながら見てくれるリスナー。もしかしたら今起きたという人も居るかもだけど、そうやってみんなで1つの配信を作り上げていくわけだ。

 なんか不思議な感じ。


「あれ? 次の配信は何?」

「なんか私たちが交代で時間を稼いで、その間に2期生のみんなが眠るらしい。

 だから私のソロ、1期生2人、汐ちゃんのソロって言う感じで4時間稼ぐよ」

「うわ~、ソロ来た~……」


 ソロが1時間、2人で2時間といった感じの配信のようだ。

 夜中の0時に香織のソロ配信がスタート。1時頃から私との2人配信。そして3時頃から1時間私がソロをするという形。

 そこから2期生の朱里、撫子で大人組2人配信がある。

 玲音ちゃんは一番長く睡眠時間が取れるようにしてある。

 玲音ちゃんの次の配信は8時からで、今の時刻が午後10時を過ぎたあたりだから、次の配信までは9時間以上も時間がある。


「じゃあ玲音ちゃん一緒にお風呂入ろっか!」

「え?!」

「なんか中学生のお泊まり会みたい」

「「誰が中学生じゃッ!!」」






「玲音ちゃん、SunLive.はどう? 何か困ったことは無い?」

「えっと、今は大丈夫です。みんないい人ばかりで」

「学校はどう? たのし?」

「楽しいです。でも、少し厨二病っぽい時期があって、少し恥ずかしいです……」

「あぁ……」


 お風呂の中で玲音ちゃんと2人で話をしている。

 玲音ちゃんは恥ずかしそうに他所を向きながらで目を合わせようとはしてくれない。

 と言うわけは無く、普通に目を合わせている。

 なに? 私が子供っぽいって言うこと?


「今でこそ私の立場曖昧だけど、一応これでも昔から香織、いや、つぼみの裏方として活動してきた。だからVTuber関連で困ったことがあったら声かけて。

 VTuber以外でも良い。学校とかもな。

 私はちっこいし童顔だからあんまりそう見えないかもだけど、一応成人でこれでも社会人だから、何かあったら頼ってな」

「はい。ありがとうございます」

「多分クリスマス配信が終わったら3期生の募集とかも始まると思う。玲音ちゃんはすぐ先輩だよ。頑張ってな」

「頑張ります。とりあえずはこのクリスマス配信を成功させたいですね」

「そうだね。結構急ぎ足で準備してたから細かいトラブルはあると思う。臨機応変に行こう」


 お風呂の中で雑談をして距離を近づけた私たち。

 香織がリビングで配信を見ていると言うことや、残りの2期生が戻ってきたら使うと言うこともあるので、私と香織で話し合って玲音ちゃんも私たちのベッドで眠ることにした。

 少し気まずそうに顔を赤らめていたけど、しっかりシーツとか変えているから気にしないで欲しいな……。

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