第32話 クリスマス配信③

 こうして順調にお披露目は行われていった。

 やはりみんな私たちは最後に発表したいらしく、2期生のみんなから順番に。

 みんなのママ、パパが頑張ってくれたと言うだけ合って、リスナーのみんなの盛り上がりも凄かった。どれも凄い良いデザインだ。

 私のママとパパは香織だ。もちろん香織も負けていない。


梓「ということで、ここまで2期生の新衣装をお披露目してきましたが、さぁ大本命。1期生の先輩お二人の衣装をついにお披露目です!」

百合「ぜひ同時にお願いします」

朱里「確かに、これは同時が良いわね」


 なんか凄い視線を感じる。

 ニヤニヤとした視線だ。

 特に暑いのが百合ちゃんからの視線。さすがは百合オタクなだけある。

 私に恥ずかしそうな反応をさせたいのかもしれないが、さすがに私とてこんなにカップリングとして言われてくれば慣れる。

 ここはつまらないかもしれないが、平然な表情を保っておける。




 わけないだろ……。

 無理でしょ。普通に恥ずかしいんだが。


 いや、全部香織に任せた私も悪いんだと思う。なんなら私の方が悪い割合大きいと思う。でもね、まさかこうなるとは思わないじゃん?

 せいぜいブレスレットとか、手袋とか、そういう系を予想していたのよ。

 私はモデリングとか出来ないから、せっかく作ってくれた指輪を外してと強く言うことは出来なかった。


 もうしょうがない。開き直ろう。頑張って開き直ろう。


梓「ということで、2期生の熱い希望もあり、先輩方は同時に発表させていただきます! 準備は良いですか?」

つぼみ「はーい!」

茶葉「お、おう……」

梓「いきますよ~!!」


 梓ちゃんがそう言った後、スタッフ含めての10秒前からのカウントダウンが始まった。

 カウントダウンの数字が小さくなるにつれて、私の心臓が徐々にきゅうと締め付けられていく。

 マイクに入らない程度で小さく息を吐く。




 そうして、カウントが0になると同時に、私たちの新衣装が画面上に映し出された。

 それからしばらく、無言の時間がやってくる。

 先ほどまでは活発に動いていたコメント欄も流れる速度が遅くなり、何かやらかしてしまったかと辺りを見回してしまう。


茶葉「え? ど、どうして静かになるんだ……?」

梓「あ~、多分みんなあんな感じになっているのかと……」


 そういって梓ちゃんが指を指したのは、胸を押さえながら神に感謝を捧げる百合ちゃんの姿。

 どうやらあまりの尊いに晒されて声が出ず、身動きも取れなくなっているらしい。


つぼみ「あー、所有アピールしすぎたかぁ……」

茶葉「所有アピールってなんだよ!」

朱里「あの~、追い打ち掛けないであげてもろて……」

茶葉「えぇ、ごめん」


コメント

:なんか川が見えたわ

:三途の川が渋滞してたんだがwww

:これが尊いか……

:正統派

:まって、指輪してない?!

:ホントだ指輪してる!!!

:今気がついた!

:ガチか……

:追い打ちが……


茶葉「えぇ!? 指輪気がついてなかったの!?」

つぼみ「じゃじゃーん、2人も左手薬指に指輪つけてるよ~」


 そういいながら設定を弄って左手を画面に大きく映すつぼみ。

 どうやらコメントのみんなは指輪の存在に気がついていなかったらしく、一瞬盛り上がったと思ったらまたコメントの流れが遅くなっていった。


百合「あぁ、尊い。私SunLive.に入れて良かった……」

茶葉「ねぇ、そんなことで涙流すなよ」

百合「ここで流さなくていつ流せと?」

茶葉「あぁ、もういいや」


 なんか緊張全部とんだ。

 私の周りにはこんなやばいやつしか居ないのだろうか……。


玲音「なるほど、これが尊いというやつなのだな」

茶葉「玲音ちゃん、玲音ちゃんは知らなくて良いよ?」

つぼみ「照れるなぁ。ごめんねリスナーのみんな。茶葉ちゃんは私のだから?」

百合「はうっ……?!」

茶葉「つぼみ……、もうやめてくれ」

梓「この2人裏でもこんな感じなんですよ。この前お泊まりさせて貰ったとき、家の中に愛が満ちあふれていて少し気まずかったです」

茶葉「余計なこと言うなよ!!」

朱里「さっきもバチやってたからねぇ……」

茶葉「ちょっとまって、マジで待って。ねぇ、エグいって!」


コメント

:ありがとうございます

:壁になりたい

:この世界に生まれてこられて感謝。生まれてきてくれてありがとう

:はぁ、尊い

:心臓止まった

:裏でもこれなのかぁ

:営業じゃ無いんだよな

:茶葉ちゃん指輪のこと否定してないからね

:なんか、すごいです(語彙力)


 落ち着いたと思ったコメントに活気が戻ってきた。

 百合ちゃんは未だに机に突っ伏しているようだけど、なんか短い時間なのに疲れちゃったな。


 ゲーミングチェアに深くもたれかかってチラリと香織の方に目を向ける。

 そうすると、香織は配信のカメラが反応しない程度ににこりと笑ってまたカメラの方をむき直した。


百合「まって!? 今の通じ合ってる感何!?」

玲音「……ちょっと、やばいな」

撫子「あれは、破壊力が……」


 そろそろ新衣装発表を閉めようと思っていたのに、どうやらまだ続くらしい。

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