第31話 クリスマス配信②
なぜか普通のVTuberと同じ量の名前がスケジュールに刻まれていて、スタッフにキレ散らかしてしまった私。
何で教えてくれなかったんだ。といった感じの視線を社長に送ったら、『普通に言ったら断るでしょ』というメッセージが送られてきた。
いや、断るけど……。
コメント
:茶葉ちゃんガチギレで草
:マジで知らされてなかったんだな
:ガチ草
:まあ、勝手に仕事入れられてたらキレるよな
:↑確かにそう考えると地獄だな
:うっ、ブラック……、頭が……
:マジかよ社長最低だな
:【悲報】SunLive.はブラックだった
茶葉「は?」
つぼみ「さっき社長から送られてきたメッセージを見てみて」
茶葉「うん。わかった」
つぼみにそう言われて、先ほど社長から送られてきたメッセージにもう1度目を通してみる。
その間、他のVTuberたちは「確かに許可は取っていた」だとか、「あれは許可と言えるのか?」だとか、そういう私にとって都合の悪い発言をしているようだ。
メッセージを開いて、心の中で社長からのメッセージを読み上げる。
えっとなになに、ちゃんと許可取ったら断られる?
……え? ちゃんと?
つぼみ「そう! ちゃんと許可取ったら断られるのです。ちゃんと! このちゃんとという部分がポイントです!」
茶葉「え? え?」
つぼみ「では、証拠映像を、どうぞ!」
つぼみがそういうと、配信画面にはとある配信の切り抜きが映された。
そう、これは紛れもない、私の黒歴史配信の切り抜きである。
茶葉「ぎゃあぁぁあああっ!! ちょっと、ちょっと、ストップストップ!」
茶葉『えー? まだ宣伝してないよ』
つぼみ『はい。今から私がします!
えっと、クリスマスにSunLive.のみんなで24時間の耐久オフコラボ配信をします。
テレビみたいに番組表を組んでお送りするので、気になる企画だけでも見に来てください!
もちろん茶葉ちゃんもいます!』
茶葉『え? 私聞いてないんだけど~』
つぼみ『言ってないからね! 来てくれる?』
茶葉『いいよ~』
……。
茶葉「ガチか……」
朱里「ぎゃははははっ、ホントに言ってるじゃん!」
撫子「あ~、これは言い逃れできませんね」
茶葉「いやいやいや! おかしいでしょ!? 完全に酔っ払ってるだろ!?」
つぼみ「ということで、合法的に出演しているわけですね。では、この話題はここで一度ぶった切りまして、ここでリスナーのみんなにサプライズがあります!」
コメント
:不憫な子……
:言ってて草
:確かに言ってたな
:あーあ
:サプライズ?
:言ってるなぁ
:サプライズってなんだ?
:なんだろ
:サプライズ?
つぼみ「サプライズ準備のため、少しだけ画面が真っ暗になりますよ~」
そんなことをつぼみが言っているが、私の脳内は大混乱でぼーっとキーボードを眺めている。
まさか酔っ払っているときに言質を取られていたとは……。一生の不覚。
もうお酒を飲んでの配信はしない。
……いや、普通に配信もしないけどね!?
「ほらほらー、茶葉ちゃんも早く設定してね」
ぼーっとしているわたしに、社長が声を掛けてきた。
今はマイクもミュートになっているので、声を上げても大丈夫なのだ。
せっかく香織が用意してくれた衣装。しっかりと発表しなければいけない。
少しドキドキする。なんて言ったって衣装の内容が内容だからだ。まぁ、そんなドキドキは過去への後悔と社長への恨みである程度はかき消されている。
ここまで来ればヤケクソだ。もうどうとでもなれ。
あまり慣れていないので少しおぼつかないが、なんとか設定を変更して衣装を変える。
私たちがこうやって設定を弄っている間、リスナーのみんなは真っ暗で音も聞こえないデバイスをひたすらと眺めているのだ。
あまり長い時間掛けるわけにはいかない。
「よしっ」
両手を握って深く息をつく。
本来は裏方である私だけど、こうやって配信に映っている間はSunLive.のVTuberとして仕事をしなければならない。
いつまでも自分のわがままで駄々を捏ねていてはダメだ。
完了のサインを送ると、スタッフが配信開始のカウントダウンを始めた。
「じゃあ、配信つけまーす。3、2……」
そうして真っ暗だった配信画面に光が戻ってきた。
そこには先ほどの背景が映っているだけで、私たちはどこにも居ない。
一見放送事故かと思うかもしれないが、これも立派な演出なのだ。
茶葉「ということで! お待たせしました!」
つぼみ「なんと私たちはこのタイミングで新衣装を発表します!!」
コメント
:新衣装!?
:ぉぉぉぽぉぉおぉぉぉぉおぉぉおおお
:ガチか!
:キターーーーッ
:新衣装きた
:うわわわああわああわわああああ
:きたぁぁぁあ
:新衣装!
“新衣装”と言うワードに反応したリスナー。コメントの流れが速くなる。
ここで新衣装を発表することはトップシークレットで、部外者には一切告げていなかった。
実は何回か配信でもらしそうになった。と言うのを何人かから聞いている。
なんとかここまで守り切った。
玲音「誰から発表するんだ?」
梓「出来れば先輩たちは最後に取っておきたいですね」
朱里「それはそうかも。じゃあ私たちから行こ~」
百合「先輩たちの衣装楽しみ~! あぁ、鼻血止まらん」
百合ちゃんは先ほどからティッシュを大量消費している。
配信画面では無く、私たちのパソコンの方の画面にはなるのだが、先ほどから全員の新衣装がモニターに映っているのだ。
私たちの超絶ペアルック&左手薬指にはめられた指輪を見ながら鼻血を垂らしている。
なんとか配信上では平常を保っているが、現実視点はひどいものだ。
さすがは限界百合オタクである。
玲音「はいはーい! じゃあ我から先に行っていいか?」
撫子「いいよ~」
茶葉「分かった。じゃあ玲音ちゃん行こう!」
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