第30話 クリスマス配信①

つぼみ「ということで! 第1回SunLive.クリスマス配信の始まり始まり~!」

全員「いえーーーい!」


 裏方陣も含め、みんなで拍手を送る。

 ついに配信が始まった。

 さすがは香織。緊張するみんなを引っ張るかのように、元気いっぱいで配信がスタートした。


つぼみ「ということで、SunLive.1期生の桜木つぼみと!」

梓「はい、こんばんは。SunLive.2期生の礼文梓と」

玲音「同じく2期生の柊玲音と」

百合「鷹治百合と!」

朱里「鬼灯朱里と」

撫子「桔梗撫子です」


つぼみ「はい。今回のクリスマス配信はこの6人でやっていきますよ~」


 配信にはまだ通常衣装を着ているみんなが映っている。

 みんないえーいと言ったり、拍手をしたりしながら盛り上がっている。

 出だしは順調。コメントの反応も良さそうだし、同接もみるみる伸びている。


コメント

:きたぁああ

:始まった!!

:¥5000 全部見るぞ!

:楽しみすぎる

:みんなかわいい!

:あれ? 茶葉ちゃんは?

:つぼみが先輩だ! かわいい

:玲音ちゃん推しです

:かわいい

:頑張れー


 そんな盛り上がりを見せる配信。


朱里「ちょっと待ったー!」


 なぜか突然朱里さんが大きな声で配信の流れを切った。

 それに対してみんなわざとらしく「なになに?」だとか、「どうした?」とか言っている。

 こっちには台本がないのでどうなっているのか分からないが、反応的におそらく台本通り進んでいるはずだ。

 心配せずに後方腕組みで見守る。


朱里「我々SunLive.のVTuberは6人じゃなくない?」

玲音「……言われてみれば、確かに1人足りないな」


 は? ちょっと待って?


つぼみ「あれ? 私のフィアンセがいない……」

百合「〜ーーーーーッッッッ!!!」


 フィアンセに反応したのか、突然百合ちゃんが悶え死にそうなくらいに興奮しながら机に突っ伏した。

 お前何やっとんじゃ……。


撫子(百合ちゃん、台本……)

百合(あぁ、)


 ひそひそとそうつぶやき、胸を押さえて深呼吸をする百合ちゃん。

 数秒後、まだ興奮冷めやまぬと言った感じであったが、なんとか台本を読み上げる。


百合「確かに、大事な人を忘れているような……」


コメント

:あれ? 誰だろう……

:確かに誰かがいない……

:ガバガバで草

:百合オタクを公言しているだけある

:誰がいないんだろう

:あれ?

:あー、お茶おいしー

:誰がいないんだ?


 ッスー……。

 明らかにタレント共の目線こっち向いてるし、裏方陣もみんなこっちを見てるよね。

 これってそういうこと? だからスケジュール触らせてくれなかったってこと?


朱里「ということで、茶葉先輩、こっちに来てください!」


 ……こいつら普段は茶葉ちゃん茶葉ちゃん言って来るくせに、配信上では先輩と呼ぶらしい。

 私裏方だから先輩後輩とか関係ないのだけれど、お前はタレントだろ、と言うのをアピールしているのだろうか。


社長(ほら、早く行きなさい!)


 はぁ……。


 重い腰を上げながらコントロールルームを出て、配信ブースへと足を踏み入れる。

 香織の隣の空いている席に座り、マイクの位置を調整する。


茶葉「どうもこんにちは。SunLive.茶葉です」

朱里「ということで、足りなかったのはSunLive.茶葉先輩です~」


 「センパーイ!」「やったー」などとわけの分からない言葉がとんでくる。

 やはりこれは仕込んであったことらしい。私は見事はめられてしまったというわけだ。


百合「あ、あの、やっぱりフィアンセですか?」

茶葉「ノーコメントで」


コメント

:茶葉ちゃんだ!

:はいてぇてぇ

:これ認めたようなものやろ

:¥50000 ありがとうございます。

:はぁ、心臓止めといて良かった

:ありがとうございます

:感謝過ぎる


つぼみ「ということで、ここからは進行茶葉ちゃんでお送りしますよ~」

茶葉「は? ちょっとまて。まって、1つ良い?」

玲音「いいぞ?」

茶葉「私マジで何も聞いてないんだけど。私マジで裏方なんだけど! 

 ていうかさっきまでコントロールルームで後方腕組みしてたからな!?」

梓「はい。見てました」


 見てましたじゃ無いんだよ。

 本当に私何も知らない。なに? 私この後も配信に出るって言うこと?

 ま、まぁ、とりあえず進行しよう。台本もあるし、なんとかなんとかつなげよう。


 ……この会社私の扱いひどくない?


茶葉「まぁ、ひとまず行きます」


 そういうと、配信上にスケジュール表が表示された。


茶葉「はい。今回の24時間配信のスケジュールはこのような形になります。

 実は私たちタレントも今知った形になります。みんなと一緒に新鮮な気持ちで楽しんでいきますよ~」

撫子「へぇ~、茶葉ちゃんも歌ってみたやるんですね」

茶葉「はぁ!?!??!??!?!?

 ちょちょちょ、ちょ、ちょっとまって、は!? ……ガチで言ってる?」

撫子「はい。歌ってみたのところに全員の名前書いてありますよ」

茶葉「……スタッフマジで恨むからな! お前ら覚えとけ!」

つぼみ「あーぁー! 茶葉ちゃん抑えて!!」


 どうしてこうなった……。

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