第16話 礼文梓収益化配信

梓「ということで、今日はパソコンを作っていきまーす!」

茶葉「いえーい、ぱちぱち~」

梓「茶葉ちゃん! なんでそんなに死んだ目をしているの!?」


 どうしてこうなった……。






「もう困るよ汐ちゃん」

「はい。すみませんでした……」


 今日は朝早くから怒られています。

 なぜなら、私が梓ちゃんのパソコン準備をすっかり忘れていたからです。

 梓ちゃんは相当な機械音痴で、放っておくとよく分からない低スペックのノートパソコンを高額で買わされてしまいます。

 なので私がやらないといけないはずだったのに……。


「もう。これはどうにかお金に換えて貰わないと困りますねぇ~」

「……すみません。……ん? お金に?」


 俯いて説教を受けていたのだが、説教でなかなか聞かないような言葉が出てきたので、思わず顔を上げてしまった。


 そこには、ニヤニヤと楽しそうな顔で私を見下ろす社長がいた。


「しゃちょおおおおっ! これっぽっちも怒ってないじゃないですか!!」

「まあ、人間ミスはあるものでしょ? こんなことじゃ攻めないわよ」


 今の社長の発言に、思わずキュンッと来てしまった。

 社長って変人なだけではなかったんだ……。


「何か失礼なことを考えてない?」

「いえ。これっぽっちも」

「そう? で、話を戻すけどね?」

「……どこに?」

「収益化」

「冗談じゃなかったんですね……」

「梓ちゃんって実は収益化通ったのよ」

「え!? おめでたいですね!!」

「実は昨日の段階で全員通っているから、今日から収益化配信を始めるのよ」

「……聞いてないんですが」

「ああ、収益化配信のモデレーターは私たちでやるから大丈夫」

「なるほど」


 まあ通ると思っていたけどね、実際にこうやって収益化通ったって聞かされるとうれしいね。

 ようやくSunLive.もここまで来たかという感じ。

 まだ実感湧かないけど。これでマネージャー雇える……。


「でね、梓ちゃんの収益化配信が出来ないじゃない?」

「オフィスでやれば良いのでは?」

「出来ないでしょ!?」


 なぜか今日1番の大声と、思わず笑ってしまいそうになるような鬼の形相で怒鳴られた。

 それには思わず後ずさり。座っているから出来ないけど。


「あ、はい」

「だからね、オフィスでパソコン組み立てて貰おうかなって」

「オフィスで配信してるじゃないですか!!」

「これとこれとは話が別よ」

「いや、同じでしょう!」

「別なの!!

 でね、パソコン組み立て配信を収益化配信にするから、汐ちゃんも出演してね!」

「……は?」

「大丈夫! 映り込みとかはこっちで全部対応するから」

「いや、それはいいんですけど、私裏方なので配信には出ません!」

「だめよもう決定しちゃったから! はい決定~。社長の言うことは絶対ですぅ~」


 うぜええええええっ!!






 とまあ、こんな感じだ。


コメント

:¥12000 投げれるようになってる!!

:¥4000 収益化おめでとーーー!

:実写!?

:¥50000

:¥50000

:実写だ!

:¥5000 どっちがあずちゃん? ちっちゃい方?


梓「あ、ちっちゃい方が茶葉ちゃんです」

茶葉「ちっちゃい言うな!」

梓「かわい~」


コメント

:かわいい

:かわいい

:¥8000 小学生迷い込んでて草

:合法ロリ??

:¥2000 かわいいいいいいい

:¥50000 茶葉ちゃん養いたい……

:おかしいっぱいあるよぉ

:どうしちゃったのかな? おじさんのところおいで

:おぢさんのおうちくるかい?

:地獄で草


梓「ということで、皆さん気がつかれているかと思うんですけど、収益化通りました!」

茶葉「いえーーい! おめでとーー!」

梓「ありがとおおお」


 今度はちゃんと感情を込めて言いました。

 実はさっきからニヤニヤしっぱなしです。だって収益化通ったんだよ?

 ようやくブラックな日々から解放される。なに? ここは天国?


梓「やっぱり茶葉ちゃんかわうぃぃ~! 抱きしめたいけどつぼみ先輩に怒られそうだからやめときます~」

茶葉「どうしてつぼみが出てくる」




~~~~~~~~~~~~~~




梓「ということで、いまからパソコンを組み立てていきますよ~。

 そういえば最近配信できてなくてすみません! この前の配信で話したと思うけど、パソコンが壊れちゃって。

 私機械音痴だから事務所に頼んでたんだけど、なかなか送られてこなくて」

茶葉「その節は、誠にご迷惑をおかけいたしました……」


コメント

:ちゃばぁあああ!

:まったく……

:¥50000 茶葉ちゃん許せん。

:やっぱり社畜なんやなって

:¥4000 茶葉ちゃんさぁ……

:茶葉ちゃん……

:仕事はしないとねぇ

:まったく。これだから……


茶葉「ううぇぇ」

梓「茶葉ちゃんが変な声を出しちゃうので説教タイムはここまで! 

 茶葉ちゃんがPONしてくれたおかげで実写配信でナマの茶葉ちゃんを拝めるわけですよ。ナマですよナマ~。

 みんなは感謝すべきです!」

茶葉「言い方言い方!」


梓「冗談はここまでにして、早速組み立てていきますよ~。

 じゃあ、茶葉ちゃんよろしく!」

茶葉「うぃい」


 ん? なんかカンペが。


『やる気なさ過ぎ! もっとキャピキャピ!』


 は? 社長ふざけすぎじゃない?

 何キャピキャピって!


 最近社長に日々イライラきている。

 こういうときにしか仕返しできないということで、置いてあったカメラを掴んで社長の方に向けて、社長を全世界デビューさせる。

 社長は普通に顔出しをしているので、映しても何ら問題はない。


茶葉「これがパワハラ現場です」

社長「ちょっと茶葉ちゃん! いや~、パワハラで訴えられる!」


コメント

:社長……

:社長www

:草

:アットホームな会社

:草

:¥1200 社長!

:¥20000 しゃちょさん~


梓「もう、ぐだぐだですよ! さっさとやりましょう!」

茶葉「はーい」






茶葉「今回のスペックはこんな感じ。

 結構コスパ良く良い感じのスペックになるようにしてあるから、参考にしてな~」

梓「うわーすごいー」

茶葉「何も分かってないだろ」

梓「はい。なにもわかりません」

茶葉「正直でよろしい」


 机の上に大量に並ぶのはパソコンパーツ。

 CPUにグラフィックボードにマザボ。電源やメモリにSSDなどなど……。

 梓ちゃんは防音室を使っていて、パソコン本体は防音室の外に出しちゃうので見た目とかは本来気にしなくてもいい。

 だが、配信で組み立てるということで見た目にもいろいろとこだわった。

 専用のコードを買ったりとかして、極限まで真っ白けっけだ。


茶葉「じゃあ、まずはケースの蓋を開けて」

梓「はーい」


コメント

:これ顔写らない?


茶葉「顔? ああ大丈夫だよ。ほら見て」


 コメント欄が映り込みを心配していたので、パソコンに向けていたカメラを私たちの方へと向ける。

 配信には私たちの姿がはっきり。

 先ほどまでは首より下しか映っていなかったのだが、別に頭まで映しても大丈夫なようになっている。


コメント

:鳩と、猿?

:マスク着けてるwww

:はとぽっぽーwww

:¥8080 鳩さんじゃん

:猿ww

:動物園かな?


茶葉「今日私たちマスクかぶってる。これ暑いから早く終わらせて取りたい。ちょっと臭いし」

梓「分かりますそれ! なんか変な匂いしますよね」

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