第14話 お買い物
昨日は動画を投稿した後、適当に夕飯を食べて寝ることにした。
最近は疲れてよく寝られていなかったので、たまにはぐっすりと早めに寝た。
今日は久しぶりのお買い物で、最寄り駅から電車に乗って10分ほどの所にある家具のお店にやってきた。
100均とかでも良かったのだが、せっかくなのでちゃんとしたお店にやってきたのだ。
私たちの家の最寄り駅は電車の始発駅で、絶対に座れるのはありがたい。
私たちは体力がないので10分だけでも座っていたいのさ。
家具と言っても、ソファーだとか、そういうたいそうな物を買いに来たわけではない。
食器とか、インテリアとか、あとこれは大きめだが、来客用の布団だね。
今あるものでも十分だけれど、交換したい物。なくても困らないけれどあった方がうれしいものなどを中心的に買っていく。
「何が必要だ?」
「うーん、いざこうやって買いに来るとパッと出てこなくなるね」
家に居るときや、生活しているときは案外すぐに出てくるけれど、お店に来てみると出てこなかったりする。
逆にいらない物を買ったりすることがあるので、私はネットショップが好きだ。
しかし、こうやって実店舗で見てから買うというのも良い。
1つの茶碗というジャンルでも、大きさや色、形などたくさんの種類がある。
実際にこの目で見てみてどういうのが自分に合うのか。そうやって考えるのも楽しい。
「ねえねえ汐ちゃん」
「なに?」
スッカラカンのカートをガラガラ転がしながら歩いていると、香織が何やら2つのマグカップを取ってきた。
「マグカップ?」
「そう! ペアルックだよ!」
「えぇ? 恥ずかしいからやだ」
「えー、いいじゃん!」
2つとも水色に白いハートマークが書かれたマグカップ。
前の家なら良かったけれど、今の家はこれからたくさんの人が遊びに来る。
そんなときにペアのマグカップを見られるのは少し恥ずかしい。
サイズは少し小さめで、持ちやすそうな持ち手もついている。
……可愛いけど。凄く可愛いけど、欲しいけど。
恥ずかしいかなぁ。
「……だめ?」
「ッスー……。……いいよ」
「やった!」
負けた。
「ねぇ、ロボット掃除機買わない?」
「それ私も思った。てか汐ちゃん部屋汚すぎだよ!」
「別に汚くない」
「汚いよ! どうしてそんなに汚すの?」
「別に汚そうと思ってない。勝手に汚れていくだけ」
「掃除しよ!」
「……来週やる」
「それやらないやつ!!」
「私の部屋の話は良いだろ。早く会計してロボット掃除機見に行くよ」
一通りの小物はチェックし終えた。かごには必要な物からいつ使うのか分からない物まで、いろいろなグッズが入っている。
ここは小物とかも売っている家具屋が2階で、1階には家電製品屋さんが入っている建物だ。
地下にはスーパーもある。
私たちは会計を済ませた後、エスカレーターを使って1階に移動した。
「ロボット掃除機って全部同じに見える」
「一応形は違うぞ。中身はわかんない」
違いはあるらしいけれど、難しい。
今時アプリで制御できるやつとかあるのか。やっぱり科学の力ってすげーな。
「あれだな。ゴミを充電の時に勝手にまとめてくれるやつ買おう。取り出すのめんどくさい」
「たしかに。毎回取り出すのは面倒だもんね」
本体にゴミをためるやつと、充電機についている容器に移してくれるやつがあるらしい。
自動で袋に入れてくれて、定期的にその袋を付け替えるだけでいいらしい。非常に便利だ。
ロボット掃除機1つ取ってもいろいろな種類がある。
薄型のタイプから、大きくてパワーがありそうなやつ。
四角かったり三角だったり丸かったり。
「高いの買っておけば良いよね~」
できるだけコスパの良いやつを……、といろいろ眺めている私を無視し、めんどくさいからと近くにあった高い掃除機を取ってかごに入れる香織。
香織は金銭感覚がおかしい。
「ちょいちょい、性能とか見たのか?」
「いや? みてないけど」
「みてないけど、じゃなくてさ、……てかそれ何円?」
「30万」
「さんじゅうッ!? ……ちょっと高すぎない?」
「大丈夫だよ。やっぱり2人の愛の巣は常にきれいにしたいでしょ? 私は汚れた家や部屋に住むのは嫌だな~」
「私は気にしない」
「……気にしてたらあんな汚部屋にはならないもんね」
「うるせえな」
「まあ、私はこれが良いからこれ買ってくる~」
「おい! ちょっと!!」
香織は金銭感覚がおかしい。
そして時々言い返せないようなことを話に混ぜてくる。
私が汚部屋なのを今ここで話に出す必要はないと思います。
「「おお~」」
早速家に帰ってスイッチを入れてみると、丸いロボットがパタパタと部屋を歩き出した。
こりゃ便利だ。
物にぶつかりそうになると向きを変えて動いている。
いろいろセンサーがあるらしい。赤外線だとか、超音波だとか、本当にいろいろ。
どれが何のために使われているのか分からないけど、ぶつかっていないから凄いと思いました。
「私踏んじゃいそう」
「絶対に踏むなよ? 30万だから」
箱の中を開けてまず驚いたのが、その大きさだ。
想像していたよりも小さかった。
それと、本体と充電が1個ずつ入っているだけかと思ったのだが、小さい掃除機が2つ入っていた。
どうやら拭き掃除までやってくれるらしい。
これは凄い。
「アプリでいろいろ設定できるみたいだぞ」
「じゃあ全部掃除してって設定にしとこう!」
「雑だなぁおい。……部屋とかには入れないみたいだね。さすがに扉は自分では開けられないか」
「扉の下側削れば良いんじゃない?」
「嫌だよ」
思ったより音は静か。
これなら配信とかにも乗らなそうだし、昼寝の邪魔にもならなそう。
ロボットに面倒くさい掃除という家事を任せている間、久しぶりの買い物で疲れたのでソファーにだらっと横になる。
そうしてスマホを眺めていると、昨日上げた切り抜き動画にたくさんコメントがついていた。
“初投稿動画がつぼみちゃんの切り抜きとは。てぇてぇ”
「ふぁッ!?」
思いもしていなかったコメントが目についたので、勢いよくソファーから顔を上げてしまった。
「「いてっ」」
顔を上げた先には香織がいて、おでこをごっつんこしてしまった。
「痛いよ~、汐ちゃんどうしたのー、急に顔上げて。なに? 勢いよくキスしたくなったの?」
「なんでもないなんでもない。私部屋片付けてくる~」
「えー? 私も手伝う!」
「大丈夫汚部屋だから」
「??? 大丈夫な理由になってないよ」
「大丈夫だから!」
勢いよくソファーから立ち上がり、コーナーで差を付けながら汚部屋へと駆け込む。
バタンッと音を立てて勢いよく扉をしめ、床になだれるように腰を下ろし、もう一度投稿先を確認。
なに? 私上げるチャンネル間違えた?
……間違えてる。まじか……。
えぇ? うわぁ。ちゃんと確認すれば良かった。
切り抜き用のチャンネルに上げていたと思っていたのに、茶葉ちゃんの方のアカウントで上げちゃった……。
いまから動画を消す?
いや、もう遅いだろ。
逆に怪しまれるだけだ。ここはもう堂々としていよう。
いやね、マネージャーがタレントの切り抜きを上げるのはおかしくないよね?
うん。おかしくない。大丈夫だ。
いやまてよ? こっちをSunLive.の公式切り抜きチャンネルにすれば良いのか?
幸いまだ香織にはバレていないらしいし……。
「えぇ!? 汐ちゃんが私の切り抜き動画上げてる!!!」
……終わった。
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