第8話
茶葉「あのねぇ、私本当に裏方なの。だってチャンネルはおろか、SNSのアカウントまでないんだから」
梓「えっと、それに関しては今情報が入ってきました。えー、ただいま茶葉ちゃんのチャンネル及びアカウントを開設したとのことです。
なお、チャンネルに関しては、これがSunLive.の公式チャンネルとなります!
SNSアカウントは茶葉ちゃん個人で使うそうです! 桜木先輩がいろいろやってくれたので、桜木仕様になっているそうですよ~」
茶葉「は?」
玲音「皆、フォローチャンネル登録頼むぞ!」
コメント
:キターーーッ!
:神
:¥8000 おめでとう!!
:www
私本当に知らないんだけど。
確かにアカウント作らない? とは言われていたけど……。
ていうか私のチャンネルが公式になるっていうことは、SunLive.の公式動画投稿チャンネルは茶葉って名前ってこと?
あ、『茶葉【SunLive.公式チャンネル】』?
いや、なんか絶対SunLive.という企業の公式チャンネルだとは思わないだろそれ!
茶葉「ああ、もういいや。疲れた私は。
もういい? 私司会やらなくて。梓ちゃん後は任せたわ」
梓「え? ちょっと、えぇ??」
そう言って困惑する梓ちゃんをよそに、私はヘッドフォンを取り外して席を立った。
私が席から立ち上がるのと同時に、画面上から私のアバターが消え、背景が変わって2期生メインの画面になった。
別にこれは放送事故というわけではない。
一応予定では5人の発表の後はすべて2期生に任せる予定だったのだ。それがなぜか私の話題が始まってしまったので、席を立つタイミングを伺っていたということだ。
ただそれだけの話。
そんな感じで、ここから先は多少のぐだぐだはあったものの、大きなトラブルなく配信は終了した。
ツッコミが足りないというのはあったけれど、なんとか梓ちゃんがさばいていたし、時折玲音ちゃんもツッコミに回っていたので、まあなんとかなった。
私という2期生とは関係のない人がいるよりも、2期生だけで話していた方がいい。
正直不安だった。けど、この配信を後半から一視聴者として眺めていて、本当に安心した。
みんな仲良くて、楽しくわいわい出来ている。
SunLive.所属のVTuberとしてよりも、やっぱり個人として楽しんで配信をしてほしいと思う。
例えば何かやらかしてしまった。そういうときは企業として本気でタレントを守る。
だから、楽しく、のびのび自由に活動してほしい。
多分これは社員みんなの共通な意見だろう。
桔梗撫子【SunLive.】@kikyo_SunLive
みんな配信来てくれてありがとう! 緊張していたけど順調に進められて良かった!
茶葉ちゃんも協力ありがとー!
→茶葉ちゃん@chaba_Sakuragi
まあなんやかんやあったけど、無事にデビューできて良かった。
これからバシバシ頑張ってね!
→桔梗撫子【SunLive.】@kikyo_SunLive
ありがとうございます!
マネージャーとして、先輩としてこれからよろしくお願いします!
ちなみに、SNSの@の後ろのユーザー名は、キャラの名前の後に“_SunLive”とつく。
梓ちゃんだと@Azusa_SunLiveで、玲音ちゃんだと@HiragiRei_SunLiveだ。
姓か名かそれともフルかは本人に任せている。
……で、本当は私も@Chaba_SunLiveとなるのだろうが、先ほど梓ちゃんは“桜木仕様”といったね?
そのため、私のユーザー名は@Chaba_Sakuragiだ。
ちなみに、つぼみのユーザー名は@Tsubomi_Sakuragiだ。
アイコンは茶葉とつぼみのツーショットだ。
なんか匂わせみたいなアイコンになっている。
今エゴサするとてぇてぇ、てぇてぇ言われている。そして、私のタイムラインにもそれが上がってきているので、私はそっと電源ボタンを押してスマートフォンの画面を消した。
「香織、なんで_SunLiveに揃えなかったの? 別に後からでも変えられるじゃん」
「いや、私たちは元から2人で1人の桜木つぼみって言うキャラだったでしょ? こうやって企業になった今でも、その記録を残しておきたかったんだよ」
「……そっか」
少し恥ずかしい。いや、かなり恥ずかしいけどいずれ慣れるだろう。
確かに_SunLiveよりもこっちの方が良い気がしてきた。
本日の仕事を終え、居住フロアの汐ちゃん用PC室という札の掛かった部屋で久しぶりのゲームを楽しんでいたところ、私のパソコンにこんな通知が届いた。
『柊玲音 10/02 19:23
茶葉さんすみません。本当にすみません。今晩の初配信のサムネイルをお願いできませんか?』
ピロンッ♪という通知音とともにパソコンの左下に現れた文字。
玲音ちゃんは複数人でいるときは厨二病キャラを出してくるものの、1対1の時は非常に礼儀正しくて、これがまた可愛いのだ。
……通知内容は可愛くないけどね。
『茶葉 10/02 19:24
えっと、今電話大丈夫でしょうか』
『柊玲音 10/02 19:24
大丈夫です』
思わず画面を見返したくなるような内容。
今晩の初配信のサムネイルをお願いできませんか……?
思わず頭を抱えてしまいました。現在の時刻は19時24分。
さて、初配信は何時からでしょう!
正解は、21時からでした!
……あと1時間半です。
「あの、すみません。あの、えっと……」
『本当にすみませんでした! いま、配信の準備をしていたんですけど、サムネイルがないことに気がついたんです』
「え? でも枠取っていたんですよね?」
『サムネイルの設定をし忘れていて、作ったと思っていたんですけど……』
「……そうですか。わかりました。急いで作りますので、準備を続けていてください」
今日の配信は玲音ちゃんだけ。後の4人は明日明後日で配信をするようだ。
ふぅ、そう息を吐き出して気合いを入れる。
「やるかぁ!!!」
久しぶりの大仕事だ。
さすがのつぼみもサムネイルは前日までには言ってくれる。1時間半前に言われたのは初めてだ。
ここがマネージャーとしての、裏方としての腕の見せ所だ。
数年間も裏方としての仕事を頑張ってきた努力の結晶、今見せたる!
急いでアプリを開き、玲音のキャラクターをパソコンにインストールする。
正直1時間半あればサムネイルは余裕で出来る。ただ、そんなにギリギリになってしまえば玲音ちゃんが心配してしまう。
30分で終わらせたい。
まあ、こうやって焦ってる風を出しているけれど、30分あれば余裕なんだよね。
確かに裏方初めてすぐの頃は、サムネ1枚作るのにも2時間くらい掛かっていた。
でも作り続けて作り続けて、今では1枚20分もあれば作れる。
まあ、せっかくの玲音ちゃんの初配信だ。気合い入れた良いサムネイルで送り出してあげたい。本当にそう思っているんだ。
できるだけ急ぎながら。それでいて豪華に、丁寧に作っていく。
「終わったぁ!!」
「お疲れ」
「うわぁぁああッ!?」
「ぷはははッ!!!」
暗い部屋、後ろを向いたら香織がいて、思わず大声を出してしまった。
笑われた……。
「ちょ、香織!? いつからいたんだ!?」
「ん? 10分くらい前からだよ。全然気がつかなかったね」
「もう、驚かすなよ……」
「ごめんごめん。ご飯出来てるよ。一緒に食べよ?」
「うん。ありがと。玲音ちゃんにサムネ送ったら行くね」
「はーい、まってまーす」
『茶葉 10/02 20:13
完成しました。配信、見守っていますから、楽しんで!
玲音ちゃんが楽しんでいれば、きっと来てくれた視聴者さんにもその楽しみは波及します。頑張れ( ^^)/』
『柊玲音 10/02 20:13
本当にありがとうございます!!!!!!!!!!!!!
頑張ります!!!』
良かった。
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