第6話 お披露目配信①

「まず、デビューの日付なんですけど、凄い早いんですけど1週間後でも大丈夫でしょうか」

「はい。私は問題ありません」

「我もないぞ」


 時間がない。ある程度の設定はもう済んでいて、個人個人でデビューさせていきたいと思っている。

 デビュー数日前にSNSや投稿チャンネルを作り、個人のチャンネルで初配信をすると言った形になるだろう。


 順調に話が進むかと思われていたが、ここで桔梗さんが手を上げた。


「あの、私たち少し昨日話して、やりたいことがあるんですけど……」

「ん? なんですか?」

「個人個人でデビューする様にこのままだとなると思うんです」

「そうですね」

「でもそれじゃあ面白みがないじゃないですか」

「??? と、いいますと?」

「だってその場合って外見とかはデビューの前にバレますよね?」

「まあ、そういうことになりますね」

「それは面白みがないんです。発表配信でガワを公開したいんです」

「は、はあ、そうですか……」


 彼女らの説明はこうだ。

 個人のチャンネルでのデビュー配信は行わず、桜木つぼみのチャンネルまたはSunLive.の公式チャンネルで一斉にデビュー配信をしたい。

 ちなみに、これをやる場合はまだSunLive.のチャンネルが存在しないので、つぼみのチャンネルでやることになるだろう。

 誰かしらに司会をやって貰って、順番に登場していく。

 最後にその場でアカウントを作成して、フォローするように促していくという形だ。

 これならつぼみの登録者を一気に2期生に移すことが出来る。


 ……アリかも?

 それにいきなり2期生同士の掛け合いを見られるのはうれしいだろう。

 いちいちそれぞれの配信を見なくても、一気に2期生全員を知ってもらえるし、推してくれるかもしれない。


「えっと、その場合は司会はつぼみですかね」

「えっと、茶葉ちゃんさんにお願いしたいです」

「私もそれが良いと思う!」


 2期生のメンバーとつぼみがそう言っている。

 ていうか茶葉ちゃんさんってなんかひどいな。


「いや、私は裏方なんで」

「私たちをサポートするのが仕事なんですよね? なら司会進行も仕事の内では?」

「んんん? ちょ、それは裏ではなくて表ですよね」

「茶葉ちゃん、裏だと思うよ。だってあくまでメインは2期生で、私たちはそれをサポートする立場だよ」

「えぇ? それは……」


 そう私が渋っていると、またもや突然会議室の扉が開いた。


「いいんじゃないか? やってあげなよ茶葉ちゃん」

「社長まで……」






茶葉「ということで、みなさんこんにちは。いやぁ、なぜ私が今ここにいるのか私でも分かっていませんが! お待たせしました! 今日はSunLive.2期生のお披露目会です!」


コメント

:茶葉ちゃんきたぁぁぁああ!!

:88888888

:¥8000 待ってた!!

:ついにか!

:¥12000 私を負かした猛者たちだ。マジで推す!

:88888888

:このときを待っていた!

:茶葉ちゃーん!!

:裏方とは!?

:茶葉ちゃんだ!

:きたぁぁあああ


 ど、どうしてこうなった……。

 私は今会社の撮影ブースに座り、社員のみんなと香織、そして2期生のみんなに見られながら配信をしています。

 いや、恥ずかしいて!

 みんな配信画面見とけよ。なんでわたし見てるの!?

 ちょ、社長写真撮るな!


茶葉「司会進行はSunLive.裏方の茶葉がお送りします。今日はどうぞ、よろしくお願いします!」


コメント

:裏方とは

:裏方?

:まあ頑張れ!!

:茶葉ちゃん可愛い!

:桜木つぼみと並ぶSunLive.の1期生茶葉ちゃんだ!


「おい、私は1期生ではない。裏方な」


コメント

:1期生だろ

:1期生だな

:裏方(キャラ設定)


茶葉「おいおいキャラ設定とか言うな。ていうかいつまでも私が話していたらなんなので、早速行きますよ~! 時間ないんで! 

 今回デビューする2期生の数は全部で5人です! みんな緊張していると思うので、温かい目で見てくださいね~」


コメント

:はーい

:いいよ~

:¥50000 茶葉ちゃん推し

:楽しみすぎる……

:¥120

:時間ないんでって草

:やっぱり茶葉ちゃんだわ。このバッサリ行く感じがたまらん

:唯一無二だよな


茶葉「じゃあ早速登場していただきましょう! 一人目はこの方です!」


 そう言うと、社員さんたちがパソコンをいじって礼文梓のアバターを表示させた。


梓「あー、あー、聞こえていますか? 

 えっと、SunLive.の知識担当、礼文梓と申します! よろしくお願いします!」


コメント

:きたぁぁぁあああ

:うぉおおおお!!

:かわいい!

:¥15000 この知的ながらも感じるポンコツさがたまらん!

:おおお

:かわいいいい

:声が良い……


茶葉「詳細に関しましては、後日行われる個人配信で発表となりますので、軽く意気込みなどをお願いします」

梓「はい。こうやっていろいろな方に見ていただけて非常にうれしいです。少しでもこのVTuberという界隈を盛り上げていけるように頑張りますので、これから応援お願いします!」


コメント

:はい推し

:推しだろこんなの

:¥3000 きゃわわ……


 それから少し簡単な自己紹介を行い、次の人の発表に移る。

 大体こんな感じの流れであと4人の紹介をしていく。


茶葉「はい、ということで一人目は礼文梓さんでした。って、ちょっと! まだですよー」

梓「え!? あ、あの、すみません!」


 これで役目が終わったと思って席から立ち上がった梓をなんとか引き留める。

 これからずっと画面に映って貰わないといけないからね。


コメント

:初PONおめでとう

:ポンコツ来たぁぁ

:かわいい……

:¥50000


梓「はわ、恥ずかしい……」

茶葉「そんなに緊張しないで、リラックスしていきましょう。

 では、次はこちらの方です! どうぞ!」

玲音「ふむ、ついに我の番がやってきたか」


 配信に乗らないのにもかかわらず、謎の身振り手振りを入れ、かっこつけて言う玲音に、思わず私の古傷がえぐれてしまう。


コメント

:グウェッ、古傷が……

:厨二病ロリ来たあああ

:やばい

:苦しいよぉ


茶葉「苦しい……」


コメント

:茶葉ちゃんwww

:草

:茶葉ちゃんもかよwww

:www

:草

:wwwww

:茶葉ちゃんw


玲音「何が苦しいのか分からんが進めさせて貰う。

 私はこの星の救世主となる者、名を柊玲音と言う。諸君らよろしく頼む」

茶葉「うわぁぁぁああああ!! 古傷、古傷がぁぁああ!!」

梓「ちょっと、茶葉さん落ち着いて!」


コメント

:2期生になだめられる1期生

:裏方な

:こりゃきつい……

:¥4000 茶葉ちゃん親近感。好き……

:¥34000 茶葉ちゃん好きだわやっぱり


玲音「あの、我より目立つのやめてほしい……」

茶葉「ほんとにすみませんでした」


コメント

:茶葉ちゃん……

:これは怒られるぞ

:いや、玲音ちゃんが悪い

:痛い痛い

:俺は今、茶葉ちゃんの気持ちを完全に理解している。

:↑なんかきしょいな


茶葉「では、玲音ちゃんコメントお願いします」

玲音「下部共、我についてくればこの世のすべてを見せてやろう! 世界は闇に支配されかけて――」

茶葉「はーい、ありがとうございました」

玲音「えっ!? ちょっ!」


コメント

:草

:おい、今明らかに外野からの笑い声入っただろwww

:あーあ、いじられキャラ確立しちゃった


 やらかした?

 これまずい? 思わず保身に走ってしまったのだが……。


 あ、大丈夫そうだ。

 社員さんみんな笑っているし、社長に関しては必死に声押し殺しながら涙を流して爆笑している。


 いじけている玲音ちゃん可愛い。

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