第18話
益井が死を選んだ本当の理由を知らないまままた一つ灯火がこの世から消えてしまった。だが、嘆く事も責める事もしなくとも僕との間に芽生えた友情がこの身体に焼きついて僕の中の
診療室での勤務が終わり帰宅をしようとした時医局から連絡が入ったので向かっていくと院長が誰かと電話をしていたのでしばらく待っているとある人物が電話に出て欲しいと言っていると告げてきたので受話器を取ると、相手は首相からだった。
女性島での救助隊の一員として任務を果たしたことを称えたいと言い、彼が直に僕と面会をしたいと言ってきた。すると、警備室から連絡が来て首相官邸の護衛官の車が迎えに来ているので直ぐに来てくれと告げてきた。
一階の職員玄関口から外に出て車に乗り官邸へ向かい到着した後、応接室に案内されてしばらく中で待機していると、数名の警護官が入ってきたその後に首相が入ってきて僕に向かって一礼をしてきた。
「どうぞ、お掛けください」
目の前にして見る彼の姿はメディアを通して見ている印象とは違い、穏やかな表情でこちらを見ている。
「突然呼び出しで驚いたでしょう。官房長官からあなたのことを伺いまして、急遽お会いしたくなりました」
「僅かな人間に過ぎない僕をなぜ指名してこちらに呼んだのでしょうか?」
「兵頭さんのこれまでの経歴や医療チームリーダーとしてのこと、女性島へ救助隊として、亡くなられたパートナーの益井さんと任務を終えて無事に帰還したこと。あとは、後藤との関連性です」
「僕はただひたすら人命救助に勤しんでいる医師の中の一人にすぎません。総理に直にお会いするというのは失礼にあたるものと考えていましたが、あれだけの戦場のような状況下で苦しんでいる人たちと対話するように手助けした経験は……今後の医師不足の中で後輩たちをどう育てていこうか、正直悩むところです」
「兵頭さん。あなたのように悩み考える人たちはたくさんいらっしゃいます。それでも、先頭に立ちリードしてきた事には称賛してあげたいのです。皆が持つ平和のためにあなたの行いは様々なところで感銘を受けた方もいらっしゃる。堂々と構えていていいんですよ」
「総理……」
「どうしました?」
「治安維持法はとうの昔に破棄されたものを、なぜこの時代に復活させたのですか?」
「それは第一に、親衛隊や国を阻害する者たちの放棄や収束のために一時的に発令したものです。彼らの勢力が衰退したことができたので、近くにその法は破棄します。私はなるべくどんな手を使ってでも国のためにより良い和平を求むなど……そのようなことは断じて許すものとしてはいません」
「では、親衛隊の発足は何のためにあったのですか?」
「元々は彼らも国衛のために認可した。だが過激派になることをには想像もしていなかった。それは私の甘さだった」
「兄が……後藤がリーダーになったが為に激化してしまったんです。僕も誰にも言えずに胸を痛みながら生きてきました」
「対話か。皆の引き裂かれた心身をどう守るべきか、できるなら私も外に出て直接人々の意見を聞きたいものです」
「あと……あなたはこの国をどう守ってどう生かしていきたいのですか?」
「皆さんが持っている理想の力がどう活用すべきかが第一となります。力というのは未来の為の心強い正義が前提としてその人たちに根付いているかというところ。力ひとつで変革してしまうこともあるが、利害が生じた時にその一人一人がどう生きていきたいをもっと耳を傾けていきたいのです」
「人々はこれまで何かと尽くしてきています。ただあなたにそれが届いていないのが惜しい。僕がこうしてお会いできたのは縁ではなく宿命にも感じます。あなたが守りたい一心でいることを、僕を通じて皆に届けたい。そのような場を設けさせていただけませんか?」
「ええ、そうおっしゃると思いました。兵頭さんから発信する事で信頼がたくさん生まれます。男女共存化を迅速に進めていきますので、どうか表明していただきたい」
「できるなら恐れない国として挙げていきたいです。どうか僕たちに力になっていただけたらと思います」
「あなたの意思を受け取りました。改めて国会で議論して法案を進めていけるよう、私も努めていきます。……ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございます」
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