第2話
親衛隊の発案した条例に民間人が反対抗議のデモが国内の各地で行われるなか、防衛省の機密機関に潜伏する親衛隊の役職者たちがある人名名簿録から特定の男性を取り上げて、組み合わせた者たちが性交渉して感情の抑制頻度によってはその者たちをパートナーとして共存させる方針を企てていた。
「それでは、同性愛者などの性的少数派と呼ばれる者以外の男をカップリングする実験を行うということで?」
「ああ。ここに記載してある人物たちの組み合わせによっては条件が合意すれば共存させる」
「デモはまだ収まらないですよ。首相官邸の周辺も人集りが増える一方です」
「その中に必ずリーダー格のやつがいる。その者を捕らえてアキレス腱を切れば大人しくなるだろう。急いで捜索するように手配しろ」
都市部の交差点に設置している街頭ビジョンでは、親衛隊のトップである後藤の姿が映り条例の発令を近日中に下す情報を流すとそれを眺める民間の男性たちがスマートフォンからSNSの特例措置法の忠告項目のメールを読み出し不穏げな声を上げていた。
一方とある大手の企業の部署間では条例の件について社員同士がニュースを見ながら会話をしていた。
「なぁ益井聞いたか?親衛隊のやつら国会に例の条例の決議案を提出したって」
「そんなもの信じたくない。それなら女の島に行って彼女らに殺される方がマシだ」
「困ったもんだよな。赤ん坊だって保育所に行っても男ばっかりだし、風営法も撤退されたから風俗すらいけなくなったし、どこに行っても男しかいない世の中。ああ、欲求が溜まるばかりで頭がおかしくなりそうだ」
「遊園地のツイスター級のジェットコースターでも乗って気晴らしに行ったらどうすか?スカッとしますよ」
「ひたすら吐くだけだろ。逆に気分悪くなるだけだわ」
「明日の会議資料できましたよ」
「おお助かった。タブレットに送っておいてくれ」
その後彼らが退社して数時間後、警備室のパソコンに一通のメールが届く。そこには差出人が不明の不可解な項目が書かれた文章のメールが一斉に社内のパソコンに送られてきた。そこにはこう綴られている。
『優秀たる日本男児たちよ。今こそ立ち上がる時が来た。女性島への合同侵入に挑み集団
翌朝になり、僕は休憩所から外に出ると早速テントへ行き負傷者の状態を見ては処置にあたった。そこへある若手の救護士が僕のところへ来てタブレットに送られてきたメールを見てくれと興奮気味で話しかけてきた。
「女性島への集団殺戮?誰がこんなものを?」
「恐らくですが、親衛隊か自衛官組織の一部の者かと。ここに記載してある連絡先と書かれているところをインセプションコードを使って割り出してみたら隣県の軍事演習所から発信したものだと他の皆も言っています」
「防衛省には届いていないのか?」
「今のところは。兵頭さん、これ無視した方がよさそうですよね?」
「そうだな。俺らはそれより目の前の人たちの救護が先だ。取り敢えずここは終わったから次のテントに移る。一緒について来てくれ」
「はい」
僕らはひたすら人命救助に立ち向かう。数台のドクターヘリが救護所から飛び立っていくと束の間の休息を取り、また応援要請が入るとドクターカーで隣町へと行き救助に当たり再び救護所へ戻ると夜が更け新しい朝が来る。
ここ数週間は自宅にも帰ってないため疲労がかなりたまっている。他の救護士も帰宅してもよいと気を遣ってくれるが一人でも抜けてしまうと数倍以上の負傷者がここに運ばれてくるのでそう簡単には帰るわけにもいかないのだ。
僕は休息を取った後にテントへ向かおうとしたら急に体がふらつき始めて他の救護士から安静にしているように告げてきたが、そうもいかないと栄養剤で補給してからテントの中へ入りオペの準備に取り掛かろうとした時だった。
「兵頭。お前は休んでいろ。そんな身体じゃ患者が不安になる。今すぐここから離れて点滴でも受けてこい」
先輩にあたる救護士が僕にそう声をかけてきたのでため息をはいた後仕方なく休憩所へと入り看護士に点滴を刺してもらい俯きながらテントから聞こえてくる負傷者の
一刻でも早く助けたい。やがて自分の身体も重くなっていき目がかすみ始めてきたのでベッドに横になり眠りについていった。
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