第36話 大技

 近づいてきたスケルトンの首をはねると同時に無数の鉄を発現して放った。鉄によりコアを破壊されたスケルトン達は次々と倒れていくが、倒れたスケルトンの後ろから止まることなくスケルトンが前に出てきてスケルトンを倒したことがなかったことにされる。


 このままじゃ、体力が減る一方で前に進めない。


 先程と同様に砂地獄を使うのもありだが、敵と味方の位置を完璧に把握できていないので、他の受験者を巻き込む可能性がある。それに砂地獄を使ってもすぐにスケルトンを生み出される可能性がある。


「離れすぎると分断されるからできるだけ俺から離れないでついてきてくれ」


 そう言ってヒカリ達の方を向くとヒカリ達の背後にスケルトンが迫っていた。


 全身で振り返りヒカリと男の間に剣を通し、迫っていたスケルトンの頭を突き刺す。


「きゃっ」 「なっ」


 と二人は声を出して反射的に目を瞑る。


 恐る恐る二人は目を開くとの剣を一度見た後、俺の方を見て固まる。


 その間に無数の鉄を発現して飛ばして周りにスケルトンが来ないようにする。


「あまり気を抜くなよ。危なくなっても助けられないかもしれないから。とりあえず、自分達である程度身を守ってくれ」


 と付け足してもう一度前を向く。


 たとえヒカリ達のスキルが強く、そこそこ腕がいいとしても初めてダンジョンに潜ったのには変わりなく万が一のことがあるかも知れない。


 そんなことを考えるとヒカリ達を先に逃しておけばよかったかなとかなとも考えてしまう。これは考えても意味ないことだ。ヒカリ達は俺が思っている以上に戦える。だから大丈夫。


 スケルトンの数を少しずつ減らしていると、奥で今にもスケルトンにやられそうな人が見え始める。


「早くしないとな」


 迷うことなく地面を強く蹴り、前にいたスケルトンを次々に切り裂き殺していく。休むことなくスケルトンを切り、止まることなく、道を作っていく。スケルトンに道を塞がせない。


 スケルトンを倒しながら背後に気を配る。ヒカリ達の足音が一定間隔で聞こえるためついてきていることはわかる。そして背中の方で熱気が伝わってくるので男が炎を使って攻撃していることも伝わってくる。


 さっきまで全く言うことを聞かなかった男がちゃんと従ってくれていることに少しだけ安心する。



 少しずつではあるがかなりの数のスケルトンを倒したお陰でだんだんと奥のクラスメイトの姿をはっきりと捉えることができるようになってきた。


 後少しで状況がわかる。


 走りながら一つの金属を生成する。奥の方でスケルトンが他のクラスメイトを攻撃しようとした瞬間にその金属を放ちスケルトン達の間を通して奥のスケルトンを倒す。しかし、他のスケルトンも止まることなくクラスメイトに迫っている。


「ここからなら全て見えるな」


 他クラスメイトの状況把握完了。居場所がわかればスキルの調整で一掃できる。このままスケルトンを倒しながらクラスメイトの元まで道を切り開くのに時間がかかりすぎる。


 だが、クラスメイトに当たらないようにスキルを使えさえすれば。


 俺は


「やるか」


 と呟いて自分の周囲に鉄を生み出す。その数は100、1000、10000と一瞬にして増えていく。


 鉄は俺を包み込み


「鉄屑の龍」


 という声と共に手を伸ばす。


 無数の鉄は規則正しく一つの物体のように並ぶと龍の如く目の前のスケルトンを喰らうかのように飲み込みバラバラに破壊していく。


 クラスメイトの前まで辿り着くと方向を上と変え天井まで登り、そこで形を崩し弾けるように周囲へと散らばり周囲に残っていたスケルトンに向けて落ちていく。


 落ちていく鉄屑にスケルトンはコアを貫かれて消えていき、俺たちとクラスメイトとの間に広い道ができる。


「さて、炎のお前はヒカリを守りながら他の奴らを助けに向かってくれ。ヒカリはさっきも言った通り怪我人の治療を頼む」


 男は何も言わなかったがヒカリと二人でクラスメイトの元に向かう。


 スケルトンはいきなり4分の1程度の仲間が破壊され戸惑っているのか動きを止めている。


「後は俺がヤツらを倒すだけだ」


 そう言って残ったスケルトンたちとスケルトルキングの方を向く。


「まずは雑魚処理」


 そう呟いて、先程落とした鉄屑を操り再び天井に敷き詰める。更に追加で鉄を発現してその量を増やす。


 自分の周りに発現できる鉄の量は限られている。だが、場所を変えればその量は増やす事ができる。


 スケルトンが俺を最大の敵だと判断して一斉に向かってくる。


 しかし、もう遅い。


「鉄の雨」


 スケルトンが走り出した瞬間、俺は手を振り下ろし、天井に敷き詰めていた鉄を一気に落とした。


 鉄はスケルトンの頭を貫き、腕を破壊し、コアを貫く。スケルトンは何もできずに倒されていく。


 流石に今の一瞬で、体力をそれなりに削られたが、部屋にいたスケルトンの殆どが倒せた。中にはコアを破壊できていなくまだ完全に倒れていないスケルトンがいたが、手足を破壊され殆ど動けない状態。再生までに時間がかかるので後ででもいいだろう。


「やっぱり今のじゃ、倒せないよな」


 動けないスケルトンが散らばっている中、スケルトンキングは殆ど無傷で立っていた。今ので威力が足りてないことから、ただスキルを当てるだけでは倒しきれないという事。


 剣で戦うしかないかな。


 スケルトンキングと対峙する前に、ヒカリたちの方を確認する。スケルトンを殲滅している間にヒカリに回復してもらい動けるようになった人が増えていた。


 かなりのスケルトンを倒したし、戦える人もそれなりにいる。再生したスケルトンやスケルトンキングがこれから生み出すスケルトンは自分たちで対処できるだろう。


 だから後は、俺が他の人のことを気にせずスケルトンキングを倒すのみ。


 俺はスケルトンキングに剣を向ける。


 それを見たスケルトンキングは顎の骨を動かしてカチカチと鳴らすと、自身の周りにスケルトンを生み出す。それを見て俺はスケルトンキングに向けて走り出した。

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