第35話 砂地獄
「砂地獄」
そう呟くと次の瞬間、スケルトンの足が地面に飲み込まれて行く。どうにか抜け出そうとするがそれが逆に沈んでいくのを加速させていた。
砂地獄
範囲指定した砂を操作する技。地面が土や砂などである場合、その地面の砂の間隔を操作して底なし沼に変える能力。
遠ければ遠いほどその効果は弱まり簡単に抜け出すことができるが、今回の場合スケルトンが次から次へこちらに向かってくるため、あまり距離は関係ない。
その場にいたスケルトンたちは俺のスキルにより地面に埋められ完全に姿を消す。
「今、何をした...」
と男が
「凄い」
とヒカリの声がする。
振り返ると男は何が起きたかわからず困惑していて、ヒカリの方は驚いていた。
相手の能力関係なしに強制的に埋める技。正直、今のを見ただけならチート級の技のように見える。
しかし、弱点は普通にあるので最強技とは言えない。
まず、使用中はその場から動けない。
既存の指定した範囲に存在する砂を動かすため、自分で生成した砂などと違って直接触る必要がある。直接といっても砂経由でも問題ない。ただし経由すればする程、制御が効かなくなる。
次に機動力が高い敵には無効化されるということ、魔物が飛んでたらそもそも使えないということ、大型の魔物だと一歩で上がって来れるなど使える魔物の種類も限定される。
またこのスキルを使えば階段を使わないで下の階に降りれると思うが、降りようとしても途中で謎の障壁に塞がれてスキルが弾かれるため、このスキルで降りることはできない。
まあ、そんな感じで全然万能ではない。
今回は普通に使ったが、普段は移動制限が邪魔で使わない。
これ操作する砂の量がそれなりに多くて創造がない分、楽だがそれでもそれなりに疲れる。
この後に影響が出るほどではないが。
目の前のスケルトンが完全に沈んでいったのを見て
「細かいことはボスを倒してから説明するよ」
そう言って駆け足で目の前に見えた開けた部屋に向かう。
部屋から何体かのスケルトンが出てくるが、鉄を生み出し放ち、一撃でコアを破壊して部屋の前までたどり着く。
部屋を覗くとそこには物凄い数のスケルトンと複数の装備を身につけた他のスケルトンよりも明らかに強そうなスケルトン。そして、そのスケルトン達の中心に堂々と立つ他よりも大きな王様のようなスケルトンがいた。
そんなスケルトンの群れに囲まれるように壁際にクラスメイトの姿を見つける。雷の壁でスケルトンを防ぎ、近づいたスケルトンを誰かが倒していた。
何人か負傷しているが見渡した限りではまだ死者は出ていないようだ。
「なんで。あんなに」
後ろから来たヒカリたちはスケルトンの量に驚いている。
「あれが統率者か」
王冠を被ったスケルトン。
《スケルトン・キング》
他のスケルトンの5倍ほどのサイズで全身に鎧を纏っている。
《スケルトン・キング》は自分よりも弱いスケルトンを生み出すことができ、生み出したスケルトンに支持を出すことができる個体。
スケルトンに統制が取れていたのは《スケルトン・キング》が生み出していたからで間違いなさそうだ。
「あいつをどうにかすればどうにかなるか」
キングが出現させた雑魚はキングを倒せば消滅する。
そのため集中して狙うのは勿論キング。
ヒカリと男には俺がキングと戦っている間にクラスメイトを守り続けて貰う、もしくは後方まで逃げてもらう。そうすれば何も心配せずにキングと戦える。俺1人で生き残るのは余裕だが、初心者を守りながらは少々きつい。だからキングに集中できる状況が作れるだけでも自分一人だけで潜っていなくてよかったと思う。
「ヒカリ、俺が他の受験者までの道を作る。だから、負傷した人を癒してくれ」
俺が頼むと
「わかりました」
と迷うことなく返事をした。
怪我人を癒せるヒカリがいるは心強い。あとは、後ろの男だが。
「君もヒカリと一緒に怪我人を助けてくれ」
と尋ねるとこちらも即答してくる。
「俺はお前と戦う」
「いや、君はヒカリの援護を」
「ここで俺はお前と戦わないと」
必死に俺と戦いたいと言う男。
こんな時に。なんで言うことを聞かないんだ。
「何言ってんだ。ここで俺と一緒に戦っても足手纏いになるだけだ」
「わかってる。でも、俺はダンジョン攻略者だ。ここであの強そうな奴と戦わなかったら、俺はスケルトンから逃げたことになる。だから、俺はあいつと戦いたい」
男がそう熱く述べる。
ここで戦わなかったら負けっぱなしか。男がなんのために、1人で戦おうとしているのか、どうして強くなろうとしているのかわからない。
そしてそんな感情、今は必要ない。
「そっか。だけど、それは今じゃない」
と冷たく言い放った。
「はぁ!今じゃなきゃ、いつやるんだ!」
男は反論されて気持ちが昂っていた。
だが、それに対して
「君には色々、こだわりがあるみたいだけど、今はそんなことどうでもいい。今は自分にできることをして人を助ける。それだけでいいんだ」
と告げる。
それでも信じようとせず反論しようとしているので、
「実際は自分でもわかってるんだろ。今は戦うとかじゃないって」
「...。」
図星だ。ついさっき自分の無力さを感じている。反論はできない。
「まあ、別に今すぐに考えを変える必要はない。キングと戦いたいなら勝手しろ。俺は自分の実力を受け入れることも強さだと思うけどな」
俺の言葉に男は黙り考え込む。そして、深呼吸をとる。
「わかった。俺はヒカリを手伝う」
男は俺の目をしっかり見てそう言った。
「よし。なら、今はヒカリの側にいてくれ」
とお願いした。
男はそう言われると、何も言わずヒカリの近くまで歩いていく。
此方に気づいたスケルトン達を見て、
「さて、まずはヒカリ達が他の受験者を助けられるように道を切り開くか」
そう呟くと同時に近づいてきたスケルトンの首をはねた。
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