第34話 統率者
歩き出し始めると、また数体の魔物の気配がする。
またスケルトンの可能性がある。スケルトンだけとの遭遇。魔物の種類はそれなりにいるから今回は別の魔物だろ。
「まさかな」
そう呟いて駆け足で魔物に近づき確認するとまたしてもスケルトンだった。
現れたのはさっきと同じ鎧のスケルトンと鎧をきていないスケルトンで数は8匹。今回はさっきよりも数が多い。スケルトンに近づきながら鉄を発現する。しかし、そこでその後ろにも気配があることに気づく。スケルトンの後ろは曲がり角になっていてなんの魔物かは判別できないが、数が多い。
「そいつらもスケルトンか。そうだったら嫌な予感しかしない」
こんなにスケルトンがいる理由。
それはたぶんスケルトンを生み出す魔物がいるからだ。
さっきまでに出会った同じ武器のスケルトンの数は20。少なくとも30以上のスケルトンを生み出すことのできるレベルの魔物ということは神格ダンジョン20層クラス以上であることが確定する。
もしその魔物から生み出されていた場合、この階層から3層に登ったスケルトンがあの兎の魔物を攻撃した可能性が挙げられる。その場合、階層移動ができるほどに統率が取れることになる。
そして、このダンジョンのレベル的に神格ダンジョン20層クラスの魔物が出るのはおかしい。イレギュラーな魔物。
「まずいかもしれない」
俺たちは最後尾から多くのチームを抜かしてここまできたがカイラのチームなどまだ抜かしきれていないチームが存在する。
この量のスケルトンがいるということはまだ統率する魔物が倒しきれていない可能性が高い。
急がないとな。
20層クラスともう出会している場合、前の人たちが殺されている可能性も考えられる。上手く逃げていればいいが。
一人そんなことを考えている中、ヒカリは慌てる様子もなく
「何がまずいんですか?」
と首を傾げて聞いてくる。
「この奥にかなり強い魔物が存在する可能性がある」
他の人が危険だ。
それを伝えようとしたが思い留まる。他の人が危ないとわかったヒカリ達がどのような動きをとるかわからない。カイラたちもいる。気が動転してたり焦って下手な動きをしたりした場合、ヒカリの方が危険な状況に追い込まれるかもしれない。なるべくそれは避けたい。
「そうなんですか?」
まだ実感が湧いていないようでヒカリに焦りは見えない。
「それを確かめるためにも一気にここを突破する。ちゃんとついてきて」
ヒカリにそう告げると無数の鉄を発現して走り出す。
発現した鉄を数回に分けながらスケルトンの足目掛けて飛ばし、スケルトンを倒していく。完全に殺し切りたいが鎧を装備している奴は殺しきれないので全て足を狙い、進行の邪魔にならないよう地面に倒しておく。
曲がり角を曲がるとその先には初心者のためのダンジョンとは思えない程のスケルトンが存在していた。しかも、通路の先には部屋が広がっているのも見え、そこから多くのスケルトンが湧いて出てくる。
スケルトンの数が多すぎた為、俺は一旦そこで足を止める。
「何なんですか。これ」
普通ではありえない量のスケルトンを目の当たりにしてヒカリは驚きを隠せていない。
「あそこにスケルトンの統率者がいる」
スケルトンが多くてスケルトン以外確認できない。とりあえず、この先の部屋までの間にクラスメイトはいないがあの部屋がどうかはわかない。統率者やクラスメイトを確認するには早くあそこに行かなければならない。
「まずはあいつらをどうするかだな」
目の前の無数のスケルトン。
スキルを使い一体一体または乱射して複数体倒しながらスケルトンの間を通って先の部屋にたどり着くことは容易だ。
しかしそれだと時間がかかる。
俺のスキルを使い鉄や炎を生み出し一気に放ったとしてもこの数では途中でこっちの鉄などの強度が持たず消える。何発も打って倒すのもいいが統率者がどんな魔物かわかっていない以上、無駄に体力を削りたくない。
魔剣を持っていれば体力を気にせず戦えたのに。
「これを使うしかないか」
少し疲れるがしょうがない。何発も乱射するよりは体力を使わない。これだけの量には最適なアレを。
俺は地面に手を付き砂に対してそのままスキルを発動する。
「砂地獄」
そう呟くと突然スケルトンたちの足が地面に飲み込まれて行った。
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