第31話 仲間割れ

 2体のスケルトンを倒し終え、俺は男の元に戻った。


 周りを確認したがもう近くに魔物はいない。一安心だ。


 俺は駆け足で戻り、


「ごめん。少し時間かかった」


 と軽く謝る。

 それに対して、男は無言のままだった。


 代わりに俺が戦っている間に男の近くに移動していたヒカリが返事を返す。


「そんなことはないですよ」

「ヒカリもいたのか。一応、聞いておくけど、二人とも怪我はないよな?」


 あのスケルトンの攻撃が当たる前に助けに入ったので怪我はないとは思うが念のために聞いておく。


「そこの人に怪我はありませんでした。もちろん、私も何もしてないの怪我なんてないです」

「なら、よかった」


 あったとしてもヒカリのスキルで治療はできるので心配はない。まあ、とりあえず、何もなくて良かった。


「2人とも大丈夫なら先に進むか。こんなところで止まっていても何の意味もないし」


 その提案に男は何も発しない。


「はい」


 と光だけが嬉しそうに返事をしてくれる。返事がないので嫌なのか?


 仕方がない。疲れているならここで少し休憩するか。


「これからどうする?疲れたみたいだし、一回休憩してからにするか?」


 そう提案すると男が初めて答える。


「疲れてない」

「そっか。なら、先に進むけど、さっきみたいに一人じゃ敵わないかもしれない魔物もいる。だから1人で戦うんじゃなくてカイラたちみたいに協力しないか?」


 ととりあえず提案してみる。


「あの時はアイツらが勝手に俺に合わせただけで俺の意思じゃない。俺は1人で勝てるようにならなきゃいけないんだ」


 と文句を言って断られた。


「そうだったのか」


 エミのスキルでこいつの思考に合わせて動いていたのか。こいつが何を考えているのかエミが分かったからこそあの動きができた訳だ。


「でもダンジョンは1人で戦う場所じゃない。個の強さも大事だけど協調性も大事だよ」


 1人でダンジョンに潜っていた時期もあった俺が言っても説得力はないが、昨日のカイラたちみたいに上手く協力すればそれだけ強くなる。それくらいはわかって欲しい。


「それでも俺は1人で強くならなきゃいけないんだ」


 ならしょうがない。諦めるか。


「なら、交代だ。今度は俺が1人で戦う」

「えっ」


 俺の発言に男は驚く。


「これは学校行事。さっきまでチームだと思って君の言うことを聞いていたけど、1人で攻略、形だけのチームでチーム攻略をする気がないなら君の指示を受ける理由はない」


 男は事実を述べられそっぽを向く。


「さっきまでのがもしチームだったとしたら、そもそも俺にもこのダンジョン攻略を楽しむ権利があるから、チーム1から3層までを攻略した君には半分のこれからの層を攻略する権利はない」


「それは」


「もしチームだと思ってないなら疲れ切った君を置いて俺は攻略を始める。そしてこのことを学校に伝える」


「くっ」


 男はかなり悔しそうだ。反論したいができない状況。何も言えずに黙って聞いている。


「ま、その体力で後半分を1人で攻略するのは無理だろ。だから黙ってついて来い」


 かなり酷いことを言った。だが、これくらい言わないとこの男は勝手に無理をして身体と心を壊す。それにこれからも誰かに迷惑をかける。そんな気がした。


 男は考え込んでから、


「わかったよ。黙ってついてくよ」


 と渋々だが俺の指示に従う。


 自分ではこれ以上は無理だと実感した訳だ。認めたくはないと思うが


「なら、俺たちの後について来い」


 と返した。


 男の方はもう問題はない。次はヒカリとどう言う動きをするかだ。


 パーティを組んだ時、メンバーや魔物の種類によって動きや立ち回りが変わってくる。


 本来ならヒカリには治癒によるサポートをしてもらうのだが、俺が前に出るとそのサポートの仕事は殆どない。この層程度ならヒカリも戦えるはずなのでヒカリにも前に出て戦ってもらってもいい。そしたら俺は援護射撃でもすればいいし。


「ヒカリも戦うか?」

「いえ、私は後ろで待機でいいですよ」

「それだと何もすることなくなると思うんだけど」

「まあ、それでもいいですよ。先輩の戦う姿を見れればこのダンジョン攻略に今はあったので。それに後ろで先輩を見ているだけでもダンジョンでの歩き方や戦い方とか多くのことを学べるので」


 俺から学べるか。基本的には参考にならないと思うが、何かしら盗める行動はあるだろう。これでいいならそれでいいか。


「よし、じゃあ、それで決定ってことで行くか」


 そう言って俺たちは速攻で三層を攻略し始めた。

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