第24話 vsカイラチーム(後半)

 それによって第二ラウンドが始まった。


 炎を鉄が覆い炎を潰すように打ち消す。その直後、少女が電気を放つ。電気が眩い光を放ちながら飛んでくる。


 その程度ならその場に立って一歩も動かずに防げる。


 俺は砂を大量に発現して壁のようにして地面に電気を逃す。


 前方に砂の壁を生み出したが後ろがガラ空きだったので背後に移動したカイラが矢を放つ。


 狙われている場所がわかっていれば対処は簡単。


 飛んでくる矢に向かって発現できる最大のサイズである掌サイズの鉄をいくつか発現して放ち矢の軌道を逸らす。


 ちょっとした鉄の発現だけで矢の殆どを破壊した俺は鉄の一部を軽くカイラに放つ。しかし、それは障壁を生み出されて弾かれる。


 炎による高火力攻撃と障壁による全体防御。そして、電気の攻撃による妨害と隙を埋める為の手数の多い矢による攻撃。そして、俺の行動を先読みし、うまく噛み合わせているスキルの連携。


 1つ崩れれば後は簡単に倒せる。だが、殺さない、大怪我をさせないと言う条件ありだとそれが意外にも難しい。どうにかするけど。


 そもそもあの連携、弱点を補うような連携は即席のチームで簡単にできることじゃない。対人経験もしくは戦闘経験がある奴があのグループの中にいる。まあ、それは的確な防御でこっちが攻撃で踏み込めないようしている障壁の奴だろうけど。


 さて、どうするか。ちまちまと鬱陶しい弓矢を封じる為にカイラを先に倒したいが、あの障壁のやつがいるせいでなかなか攻められない。だからと言って障壁の男を狙っても防御されるので一番時間がかかりそう。


 俺がそう考えている間に炎の男が高火力の炎を放ち砂の壁を破壊する。そして再び電気が飛んでくる。連携としては良くできている。短期間でよくここまで動けるな。


 少し感心した俺は鉄を地面目掛けて一直線に並べて電気を逃す。そして小さな岩を作り放つ。


 これは炎で追撃をさせないようにするための軽い牽制。


 そして予想通り男が炎を発現し防ぐ。


 そして、攻撃の嵐が一度止んだ。第二ラウンド一発目は終わりのようだ。


「次は俺から行くか」


 そう呟いて自分の周囲に鉄を発現して炎の男の元に走り出す。男は俺を止めるために弱い炎を放つが全部避ける。その間に電気を放つが鉄で電気を逃すので特に気にならない。また後ろからは矢が飛んでくるがそれを纏った鉄で処理していく。


 あと少しで炎の男ところまで辿り着く。そんなところで前方に展開していた鉄が何かに触れた。風が来なくなったことから障壁が展開されている。


 今回も強度がわからないので障壁を軽く蹴飛ばして少し下がる。


 次第に何処からも風の通りがなくなったので障壁で全方位囲まれたのだろう。


「またか」


 今回はさっき上空で暴れたれたのを踏まえて上までしっかり障壁を展開していて、俺の逃げ道を完全に奪う。


 ちゃんと改善をしているのはいいが。


「チッ」


 炎の男は舌打ちをして炎を撃つのをやめる。

 男が舌打ちをしたのは連携は取れていないから。仕留められる攻撃チャンスで障壁が邪魔になって俺も相手も攻撃ができない。


 動きを封じられたが破壊すれば問題ない。

 とりあえず、この障壁を破壊して進むか。


 俺は周囲の鉄を左右にそれぞれに集めて、障壁内を自分に当たらない程度に乱雑に操作する。


 障壁は所々穴が空き割れすぐに解放されたのでそのまま足を踏み出す。その瞬間、前から強烈な熱気を感じる。目の前には限界まで一点に集中させた炎の弾があり、それを男が生み出していた。


 多分、全ての体力を使って放つ最高火力の一撃。


「くるか」


 連携は取れていないと思ったがそうでもないらしい。障壁は目の前の一撃を生み出すための時間稼ぎ。


 まあ、時間は足りなかったみたいだけど。


 まだ炎の球は最大まで溜まりきっていない。今、少しでも鉄を放てば溜まりきる前にエネルギーに揺らぎが生じて扱いづらくなって消えるだろう。


 でも、そんなことしない。


 それをしてもつまらない。避けることだって不発にすることだってできる。だが、それじゃ面白くない。だから正面からぶつかってやる。


 時間稼ぎをするように矢と雷が前後から飛んでくる。矢と電気の同時攻撃だがあまり関係ない。その場で鉄を操作して受け流し、周囲の鉄を解放して、熱エネルギーを限界まで蓄積させた溶岩を生み出す。


「さあ、こい!」


 男の目を見てそう言い放つ。

 それを合図として男は炎を放つ。それと同時に俺も『凝熱岩』を放つ。


 二つの弾がぶつかり合い、膨大なエネルギー衝突が起こる。眩い光、爆発音、爆風が起きて熱風が全身に伝わってくる。


 そして爆風によって砂や瓦礫が飛ばされて視界が悪くなる。


 俺はそれを利用する。周囲に飛び散る砂の量を意図的に増やして完全に視界を潰し、砂の動きから相手の居場所を把握する。


 俺の居場所がわからないので矢を放つことはないし、炎の男も大技を打った直後で動けない。電気は砂で遮られ、障壁も俺の姿を捉えられないので使っても動きを封じることができない。


 俺はそのまま砂を操作して4人の周囲に多く配置する。これは視界を遮断している間にいつでも捕らえ負けを認めさせることができる状態にする為だ。


 今、動いている奴はいな。

 いや、1人だけいる。


 まだ一度もスキルを使っていない奴。そいつが俺の近くまで来ている。


 スキルはなんだ。わからない。

 動きは単調。俺目掛けて一直線に走ってくる。


 俺は近づいて来た人の剣を持ち付き伸ばしている腕を掴み、その腕を相手の背中側に引っ張り、捻り上げる。


「いたっ」


 と女の声が聞こえる。その声に構わず腕を掴みながら残りの4人に鉄を放つ。それぞれを囲む砂の間を抜けて目の前と左右に鉄を配置しておく。そして砂を解く。


 視界が晴れてカイラたちは状況を把握する。目の前には鉄、そして自分たちを囲うようにして舞っている砂。すでに自分たちが負けていることを自覚するのに時間はかからなかった。


 俺が砂を展開し続けていると観念したのかカイラは


「参ったよ」


 と敗北を告げる。障壁の男、電気の女も同様に警戒を解いて気を楽にする。炎の男は最後まで警戒していたが、それから数分だけ砂と鉄を展開していたが攻撃をする気配はなかった為、発現していたものを全て消し去る。


 これによってカイラたちとの戦闘は終わった。

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