第25話 宝探し終了

 全ての展開を解除した俺は少女の腕を離す。少女は一歩前にでると振り返りこちらを見る。


 そして


「負けちゃいましたね」


 と呟く。俺に襲いかかって来たのはカイラの幼なじみであるエミだった。


 最後の1人はエミ。カイラとチームを組むのは当たり前か。


「いい動きだった」

「いえ、私は何も」


 結局、エミのスキルはわからなかった。同じクラスならそのうちわかるだろうから気にしなくていいか。


「カイラのところに行くか」


 エミと共にカイラの元に歩み寄る。


「お疲れ」

「流石だね。全く歯が立たなかったよ」

「俺も結構危ない場面はあったけどな」


 負けることはなかったが苦戦した場面はあった。流石最強のチームって言わざる負えない。


 そう言うとカイラは苦笑いを浮かべる。


「あれでか。まあ、それでも君が僕より格上なのは変わらないさ」


 カイラは少し悔しそうな表情をしたがすぐにそれを消して微笑む。


「それじゃあ、僕たちは街に戻るとするよ」


 カイラの言葉を聞いてエミと歩き出す。


「次は絶対に勝つよ」

「ああ、楽しみにしてるよ」


 俺は笑顔を浮かべてそう言う。


 2人に着いていくように電気を使っていた少女が後を追う。俺の前を通り過ぎるタイミングで


「君、めちゃくちゃ強かったね!」


 と話しかけてくる。そして返事をする前に


「またね」


 と手を振って歩いて行ってしまう。障壁の男と炎の男もその後を追うように歩いていく。その間、2人から話しかけられることはなかった。


 5人がいなくなり静かになる。辺りには人も魔物もいない。今ここにいるのは俺1人。何もすることがなくただ時間が過ぎてゆき、しばらくして空に何かが放たれるのが見える。それは空中で眩く光り輝く。


 あの光は最初の説明にあった終わりの合図。


「時間か」


 木にもたれかかっていた俺は木にもたれかかっていた俺は立ち上がり歩き始める。


 最後の最後は何もすることがなかったが楽しいゲームだった。今回のゲームによって話のきっかけを作れたし、後で戦ったクラスメイトに話しかけるか。


 そんなことを考えながら街に戻る。しばらく歩いていると街の入口が見えてくる。


 街には俺以外の殆どのクラスメイトが集まっていた。まだ数人いないが最後の方であることは間違いない。


 街に戻りヒカリに話しかけようとしたが他の子と話し込んでいたのでカイラに話しかける。


「戻ったぞ」


 軽く手を振りながらカイラに近づき声をかける。


「おかえり」


 カイラはいつも通りの笑みを浮かべる。エミは電気の子と話しているため、今はカイラ1人。


「僕たちと戦った後、何かあったかい?」


「いや、何もなくて暇だったよ。どうせなら他のカイラたちみたいな強いチームと戦いたかった」


 俺が答えるとカイラは少し考えるような素振りを見せる。


「ふーん。そっか」


 なんとなく含みのある言い方だったがそれ以上聞いてくることはなく話が変わる。


「そういえば、戦ってて気になったんだけどユヅキのスキルってなんなんだ? 砂や鉄を操るスキルだと思ってたんだけど、最後の方、炎を使っていただろ」


 スキルの種類。俺のスキルサイズが限られているだけで様々なものを生み出し、操れる。俺と戦っただけだと俺のスキルがなんであるかを断言することはできない。


 スキルの種類。俺のスキルサイズが限られているだけで様々なものを生み出し、操れる。俺と戦っただけだと俺のスキルがなんであるかを断言することはできない。


「その話ですが、僕にも聞かせてくれませんか?」


 カイラの話に割って入ってきたのはいつの間にか近くにいた細身の障壁を扱う男。


「君は?」

「えっと、まだ自己紹介をしていませんでしたね。僕はアオギと言います」


 アオギと名乗った男はお辞儀をする。


「俺はユヅキ。アオギ、よろしくな」

「よろしくお願いします」


そう言って握手する。


「あの、少し気になったんですけど、スキルについて教えてくれませんか? 複数属性の使用なんて初めてみたので」


 一度溶岩を見たカイラやアオギが気になるのはわかる。だが、今話したばかりの人間性をまだ知らないアオギに話すのは少しだけ気がひける。


「うーん。どうしようか」


 とりあえず、今の考えを聞いてみてそこから少し訂正でもすればいいか。


「そうだな。逆に聞くけど、俺のスキルはなんだと思う?」


 俺は2人にそう聞く。


「ユヅキのスキルか。僕は予想すらできないよ。アオギはどうなんだい? 何かわかってそうだけど」


「僕の予想ですがユヅキさんのスキルは砂と鉄など鉱物を支配する者だと考えています。それならあの溶岩もギリギリだがありえない話ではないと思いますが違いますか?」


 鉱石か。確かに使っているものは基本鉱石だ。だが、それは単に扱いやすくダンジョン内に多く存在するからという理由だ。昔は氷や水なんかも使っていた。


「かなり近いかな」


 いい線を突いてくる。というか、今出ている情報をしっかりとまとめ答えを導き出している。やっぱり只者じゃないな。


「やっぱりですか! それなら」

「でも、ハズレだよ」

「え!?」


 俺の言葉に驚くアオギ。


「俺のスキルは鉱物を支配する者じゃない。俺のスキルではこの世界にある鉱物は全てを支配できる訳じゃない。今言えるのはこれくらいかな」


「......」


 アオギは何も言わずに考え込む。そんなアオギとは対照的に


「鉱物系ってことは金属や砂以外にも生み出せるんだよね」


 カイラが興味津々に聞いてくる。


 そして俺は


「ああ。宝石だって生み出せる」


 と指を鳴らして目の前にダイヤモンドを生み出してみせる。


「凄いな。しかも支配系か」


 そう呟いてカイラも考え込む。


「ま、そのうち詳しいことは教えてやるよ」


 正直、俺のスキルが鉱物を支配していると思われているのなら特に問題はない気がする。俺のスキルは鉱物を操れる。これは事実であり間違いはない。ただ、それはあくまで俺のスキルの一部。これからも鉱物系を使うので特に問題ない。


「わかりました。また今度頼みますね」


 アオギは考えるのをやめ前を向いてそう答える。


「そうだ。アオギとカイラってどうやってあの連携をとっていたんだ? あれは即席じゃできないだろ」


「あの連携ができたのは戦う前に少し話し合ったからかな。自分たちがどんな動きをするべきか、どんな役割を果たせばいいか。それを事前に決めて戦ってたんだよ」

「自分たちの役割分担がないと動きがぎこちなくなりますからね」

「そういうこと。それと連携の要はエミのスキルかな」

「エミのスキル...」


 戦っていてエミのスキルはわからなかった。それが連携を支えていたか。


「エミのスキルって何なんだ?」


 そう聞くとカイラは


「スキルについては僕から言えないかな」


 スキルは個人の大切な情報。そう易々と話すことではないし、普通は信頼している人にしか話さない。俺だって正確なことは話してないし。


「そうだな。すまん」


 俺は謝る。


「まあ、エミに直接聞けば教えてくれると思うよ」


 その発言を聞いていたのかタイミングよく、エミがカイラの後ろからひょっこりと顔を出す。その後ろから


「やっ。私もいるよ」


 と電気を操る少女が顔を出す。


「私の話してましたか?」


 首を傾げながら俺たちを見てくる。


「エミのスキルについて気になって」

「スキルですか? 私のスキルは《触れた者の思考を受け渡す力》です」


 エミはあっさりスキルを教えてくれる。隠すそぶりも見せなかったことき俺は驚く。


 触れた人の思考を読み取る? つまり頭の中で考えていたことをエミを介して共有することができるスキルということ。このスキルがカイラたちが上手く連携できた最大の理由。


「エミのそのスキルのお陰で上手く連携が取れたんだ」

「5人もいれば常に敵の居場所や行動は把握できますし、1人の思考に合わせれば連携も崩れないのであるとないとでは大違いでした」


 俺だって意思疎通ができたらいいなと思う場面に何度も出会している。2人が絶賛するのもわかる。


「凄いスキルだな」


 俺が驚いていると


「私のスキルはねー。《電気を生み出す力》だよ」


 と聞いてもいないのにエミの隣にいた少女は自分のスキルを笑顔で話し始める。


「えっとね。君のスキルは何かな?」


 少女は無邪気に笑いながら俺に聞いてくる。


「......」


 少し悩み黙っていると


「教えてくれないの?」


 少女は悲しそうな表情をする。仕方がないので答えようと


「無理にスキルを聞き出そうとするのは駄目ですよ。ネネ」


 とエミが止める。ネネと呼ばれた少女はつまらなさそうに俺を見る。


「俺のスキルは《鉱物の一部を支配する力》だよ」


 とカイラたちに言った仮のスキルの名を伝える。


「ユヅキのスキルは宝石も出せるみたいだよ」


 と言うとカイラがそう言うと2人は目を輝かせて俺の方を見てくる。


 俺は指を鳴らして再びダイヤモンドを生み出す。2人ともダイヤモンドの美しさに見惚れている。


 そんな俺たちの元に


「せんぱーい。何してるんですかー」


 とヒカリがやってくる。俺はダイヤモンドをネネに渡し、ヒカリに返答する。


「丁度今、このチームの強さの秘訣を聞いていたところだ」


 俺の隣に来たヒカリは


「へー。先輩が気になるチームですか。強かったんですか?」

「ああ。このクラス1のチームだと思うよ」


 俺のその発言に


「本当かい?」


 とヒカリだけでなくカイラたちも食いつく。


「本当だ。俺がまともにスキルを使って戦ったのはこのチームだけだよ。ヒカリも始めの方は見てたからわかるだろ」

「はい。最初のチームは剣で瞬殺でしたよね」


「そうだったんだ。なんか嬉しいな」

「そうですね。上手く戦えて良かったです」

「私たちが一番か」


 と3人で喜び合っている。アオギは


「僕たちの動きであれば当たり前ですね」


 と誇った顔をしている。


「どんな戦いだったんですか?」


 とヒカリが聞いてくる。そんなヒカリにさっきあったことを話し始める。


 そしてヒカリにカイラたちとの戦いについて話していると全員揃ったようでセルビアが話を始めた。


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