第22話 魔物と戯れる
戦闘が終わり、
「出て来ていいぞ」
とヒカリに向けて言う。すると、ヒカリは木の陰から姿を出し駆け足で戻ってくる。そして、俺の前まで歩いてきて後ろに手を組みながら
「お疲れ様です!」
と言ってくる。その表情はとても嬉しそうだった。
「楽しめたか?」
「はい!とても!」
そう言って満面の笑みを浮かべる。
「それなら良かった」
「あ、でもまだ戦い見足りないですよ。先輩には時間までもっと戦って貰わないと」
本当に遠慮がないな。まぁ別に良いんだけどさ。
「わかってる。勿論、クラスメイトが来たら戦うよ。でも、さっきみたいに叫んで呼び寄せるようなことはするなよ」
俺は念を押すようにそう言う。
「はいはーい」
ヒカリは気分が良いのか軽めの返事をする。
「さて、近くに他のチームもいるみたいだけど攻めてくる気配がないから待ってるか」
と俺たちは再び休憩に入ることにした。
それから30分が経ったが1人の視線をずっと感じているが攻めてくることはなく、それ以外でも他のチームはやってこない為、戦闘は発生していない。流石に暇になって来たので、少し魔物と戦うことにする。
「暇だし、魔物を狩りにでも行くか」
「そうですね」
俺の言葉にヒカリも賛同した。俺たちは森の奥へと進む。歩いていると目の前に3匹の獣の魔物が並んで現れる。
「見てろよ」
俺はヒカリにそう言って一歩踏み出す。魔物は俺の一歩を合図として真ん中以外の魔物が走り出す。
走り出した魔物は口を開けて火の球を放つ。
スキルが使えるのか?
俺は飛んできた火弾をギリギリで避ける。しかし、魔物は次から次へと火弾を放ってくる。
まずはサイドの魔物二体からだな。
火弾の弾道を確認して自分の道筋を決める。そして、一気に地面を蹴って加速する。
魔法に当たることなく一瞬で魔物を二匹の間に辿り着くと、走りながら止まることなく両サイドの魔物の横を通り過ぎながら右の魔物の首を、左の魔物の胴体を斬る。
胴体を斬られた魔物はバランスが取れなくなりその場で倒れ、首を斬られた方の魔物は俺を見失い隣にいることにも何をされたのかすらにも気づくことなく走り続けたが脚に力が入らなくなったことで首が落ち消えていく。
そして残り一匹となる。
二匹が消えてことを確認して再び加速する。残り一匹の最後の足掻きとして炎を放ってくるが、当たることなく魔物の前にたどり着き、次のスキルが放たれる前に剣を横に振る。
しかし、そんな俺の攻撃に気づいてスキルを放つのをやめ後ろに下がり攻撃を避ける。
まあ、そんなことをしても無駄だ。もう逃げ場はない。
「終わりだ」
俺は振り切った剣を一気に魔物の額に突き刺す。魔物はそのまま地にはい動かなくなる。そして消えていく。
「よし。次だ」
と倒し終え次の魔物を狩ろうとしたところで、持っていた《連絡》の魔道具が鳴る。
時間か。
「ユヅキくん、ヒカリさん。負傷した人が多くなって来たので戻って来てもらえますか?」
思ったより早かったな。俺の予想だと後、2時間までつまり後30分程あると思ったが半分の1時間半で切り上げか。
「了解です。今からヒカリを連れて戻ります」
そう伝えて魔道具をしまう。そして、後ろで待っていたヒカリに向き直り手招きをして
「行くぞヒカリ」
と街の方を目指して歩く。
「えっ、もう終わりですか!」
ヒカリは駆け足でついてくる。
「そうみたいだ」
「えー、そんなー」
とヒカリは不満げに口を尖らせる。
まぁ、気持ちはわかる。ゲームに参加できないのは可哀想だとは思う。だから、後で何かご褒美はあげた方がいい気がする。
まあ、非戦闘スキルのヒカリは障壁の魔道具が破壊されたら終了というルール上、今回のゲームでスキルが使えない。それだったら治癒の練習や治癒中にコミニケーションとった方がいいという先生たちの配慮。そして多分、回復の輝石の消費を防ぐことが目的。
「明日もある。今日は我慢な」
「でもー」
「明日は一日貰えるように頼んでおくよ。あと、なんかご褒美をお願いしておく」
「ご褒美は先輩とダンジョンです」
と即座に返答する。
そろそろ行ってやらないとなと思う。このオリエンテーション合宿が終わったら行ってやるか。
「いいぞ。ただ、階層はヒカリの実力に合わせるからな」
「本当ですか!なら、仕方ないですね。それなら許します」
ヒカリは上機嫌に歩き始める。行きと同じように魔物を狩りながら街に戻るとセルビアの姿と数名の負傷者らしき姿が確認できた。
「戻りました」
ヒカリはセルビアを前にして気を引き締め真面目キャラを演じ始める。
セルビアに近寄り指示を受けたヒカリはそのまま負傷者の近くに行って治療を始める。ヒカリが腫れた箇所が光ると傷が癒えていくのがわかる。
これがヒカリの治癒スキルの力かと感心する。
そしてセルビアはヒカリが治療に入り問題ないことを確認し俺の元にくる。
「ユヅキくん。ボスの仕事、後は任せました」
「先生はこの後、ボス役しないんですか?」
「はい。教師として治療をしているヒカリさんを1人残すわけにはいかないので」
俺は行かなきゃなと感じヒカリの方を向いて
「それじゃ、行ってくる」
と言って街から出ていく。ヒカリはそんな俺を見て
「頑張ってくださーい」
と手を振った。
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