第21話 vsクラスメイト

 ダンジョンに向かう途中、弱い魔物が現れたがスキルを使うことなく走りながら魔物を切り裂いて倒す。軽い準備運動。


「流石、先輩ですねー」

「そうか?そこら辺の魔物はそんなに強くないから簡単に倒せるだろ」

「その余裕が流石なんですよー」

「そうか」


 そう言いながら目の前に現れた魔物を倒していく。


 ダンジョン1層程度で苦戦してたら40層ボスなんて倒せない。余裕なのが当たり前だ。


「ここでいいか」


 ある程度開けた場所についたのでそこで止まる。周囲には何匹か魔物がいて殆どが俺のことを見て警戒しているが攻めてくる気配はない。


「さて、一気に行くか」


 そう呟くと周囲に落ちていた石や木の枝を操作して宙に浮かせる。


「ヒカリ、少し頭を下げてくれ」


 そう言ってヒカリをしゃがませると腕を振って一気に全方向に石や木の枝を飛ばす。


 その速度は極めて速く一瞬で、簡単に魔物を貫く。一撃で周囲の魔物を一掃し自分の戦う場所を確保した俺はヒカリに


「もう頭あげていいぞ」


 と声をかける。


「これで準備ができた。後は他の奴らが来るのを待つだけだ」


 今回は自分から攻めることはしない。俺から探して攻撃すれば無駄な時間がなく戦うことができると思うが今の俺はボス役。相手が戦いたい時に戦うのがボスの役目だ。


「少し暇だけどいいか?」

「全然大丈夫ですよ!」


 それを聞いて俺たちは近くの岩に座り、少しの間、周囲を警戒しながらヒカリと暇潰しの会話を始めた。


 ヒカリと話していると草が揺れる音が聞こえてくる。歩く音と人の声もだ。


「そこの木下にあるかもよ」「そっちじゃね?」


 ボス探しと言うよりは宝探し優先か。


「来たみたいだな」

「先輩やるんですか?」

「うーん。こっちからは何もせず待機かな。あっちに戦う意志があるってわかり次第、俺も動こうと思う。先生たちもそうすると思うし」


 正直、こっちから攻撃はしなくない。不意打ちに対応できればいいができない可能性がある。対応できなければ彼らは即失格になってしまう。まだ始まって少ししか時間は経っていない。流石に今失格は可哀想だ。


「うーん。そうですね。なら!」


 そう言って立ち上がり軽く息を吸って、


「ユヅキさんを見つけましたーーーーー!」


 と大きな声で叫んだ。


「おい、何してんだ」


 俺も立ち上がり剣を構える。


「こうすれば戦う意志がある人しか寄ってこないですし、みんなが寄ってきて早く先輩の戦いが見れます!」

「はあ、全く、そんなに俺との会話がつまらなかったか?」


 俺はため息を吐く。ヒカリには振り回されてばかりだ。


「いえ、楽しかったですよ? でも、もっと楽しいことをしたいと思ったんですよ」


 ヒカリは出会ってからずっと俺に期待してくるな。まあ、嫌じゃないからやれる範囲でその期待に応えようと思う。今回も。


「楽しいことか。なら楽しませてやるから、他の人の邪魔にならない程度に少し距離をとって待ってろ。すぐ始まる」


 ヒカリは木の影に隠れる。


 もう既に動き始めている人達がいる。視線も感じるためすぐ近くで俺の姿を捉えている人もいる。数人が俺を囲い込むようにバラけて待機している。人数は今のところ5人。1グループか。


 様子を伺っているようだったが俺の背後で待機していた一人が動き出す。俺はそれを感じとり振り向く。


 スキルはなんだ?


 スキルがわからなければ対策できない。動き出した人、容姿は男。そいつは葉っぱを握っている。草を操作するスキルかな。


 男は握っている葉っぱを大きく腕を振り投げる。一度、ふわりと舞った葉っぱだったがすぐに速度を変えて俺に向かってくる。


「スキルは予想通り。これなら」


 そして、背後の男が動き出したことで他の人たちも一斉に動き出していた。向かってくるのは前方の2人。どちらも男。特別なものを持っているわけじゃないのでスキルはわからない。


 葉っぱは直進していてすぐには曲げられなさそうだし、地面の葉っぱを警戒していれば不意打ちにも対応は可能。今、注意すべきはこっちに向かってくる2人。まず、そいつらから先にやるか。


 飛んでくる葉っぱを軽く避けて、振り返り俺に向かって来ていた二人の攻撃に備える。


 一人は獣のような爪を生やしていて、1人は剣を使って近づいて来ている。


 一人は爪を操作する系のスキル。

 警戒するべきは爪を飛ばせるかどうかだが、多分できない。


 だから


「まずは剣士の方かな」


 そう考えて強く地面を踏み込む。そして、一気に地面を蹴飛ばす。


 無駄のない最速の加速。


 そのまま相手の剣のガードを目掛けて剣を振り上げる。スキルや剣による攻撃をさせる隙を与えない攻撃により相手の剣は飛ばされる。


 その直後、俺は再び左足に力を入れてそこで踏ん張る。そして、左足を軸とし回転して獣の爪を生やす男の腹を蹴り飛ばす。


 勿論、蹴る瞬間に力をかなり抜いてダメージを和らげておく。


 障壁の魔道具を腕につけていたので試験同様、これが破壊されると終了。だから、破壊できないくらいの威力まで抑える。


 爪の男は蹴りを防ぐことができずお腹に喰らって軽く飛ばされて体勢を崩す。そして、そのまま回転して剣を持っていた男の方に向き直ると剣を男の目の前に突きつける。


 次の攻撃はこない。


 葉っぱのやつもまだ攻撃をしていない2人も今の一瞬の出来事に驚き止まっている。


 そんな3人に向けて石を生み出して俺の周りに浮かせる。3人とも動き出すタイミングを見失ったため、その場から動くことはない。動けば石弾が飛ぶ。もう勝ち目はない。


「さて、まだやる?」


 俺は剣を突きつけている奴に向かってそう聞いてみる。


 他の宝を探して点数を稼ぎたいと思うし、今はまだゲームが始まったばかり。俺としては戦ってくれると時間が潰せて嬉しいが宝をあげる気のない俺と戦っていても時間の無駄でしかない。そんな暇はないだろう。


「は、これが入試トップの実力か。このままやっても勝てる気がしないからやめておく」


 男は苦笑しながら握っていた剣を離す。それを見て俺は剣を下げ展開していた石弾を消す。そして、男に手を差し伸べ、手を握り立たせる。


「もっと連携が上手くなったら出直してきな」

「はは。今回は諦めるよ」

「残りも頑張れよ」


 俺はそう言って広い忘れていた剣を拾い男に投げる。男はそれをキャッチし、他のメンバーに


「行こうぜ」


 と言ってこの場から去っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る