第20話 宝探しゲーム

「宝探しゲームのルールは簡単です。街の外にある宝を探し、3時間の間に宝を多く手に入れたチームが勝利。少しでも負傷したら脱落。これが基本的なルールとなっています」


 ただの宝探しか。俺の仕事は宝を隠すとかかな。でもそれだと戦闘なんてないし。どういうものなのだろうか。


「一応、このゲームはダンジョン攻略を想定していて、ここら辺一帯のモンスターを倒したりちょっとしたトラップを乗り越えたりして宝を探すダンジョン0層設定のゲームになっています。そして、このゲームはダンジョン攻略なのでボスの魔物として僕や他の先生も参戦します」


 先生側の仕事ってことは俺も魔物役。魔物として他の生徒と戦うってことか。


「僕や他の先生はボスの魔物なのでダンジョンのボスの魔物が魔道具を落とすのと同様、倒したら強さに応じて宝を与えます。なので勝てそうだと思ったらどんどん攻撃を仕掛けてきてください」


 ダンジョン攻略をしたことのない人達のためのダンジョンの説明も兼ねたオリエンテーション。面白い。


「そして今回は特別ルールとして入学試験で一番高い成績で合格したユヅキ君も先生側として戦ってもらいます。君たちと同じ学生ですが貰える宝は僕らと同等なので本気で攻めて宝を手に入れてて下さい」


 全員が一斉に俺のことを見てざわつく。

 へー、俺が一番だったんだ。試合別枠だったから建前だと思うけど。


「ユヅキ君も本気で相手してくださいね」


 セルビアは笑顔でそう言う。

 本気を出すかどうかは別として仕事はこなす。皆んなが楽しく戦えるように俺もしっかりしないとな。


 セルビアの話を聞いたカイラはこちらを見て


「そういうことだったんだ」


 とと納得している様子だ。


「まあ、俺も今初めて仕事内容聞いたんだけどな」


 セルビアなりのサプライズなのかもしれない。そんなサプライズいらないと思うけど。


「やっぱりこのクラスでユヅキくんが一番強いんだ。こんな機会はないだろうし、本気で倒しに行こうかな」


 カイラはやる気満々といった感じだが、俺は負けるつもりはない。全員倒す。勿論、カイラも。


「本気でかかってこい。返り討ちにしてやるよ」


 と少し挑発気味に言い返した。


「はい。驚くのは後でにしましょう」


 と手を叩きざわついた空気を正す。


「時間になったら《発光》の魔道具を投げるので光ったのを確認したらこの場所に戻って来て下さい。他に追加ルールはないので、チームを組んだら僕に連絡してください」


 そう言うと一斉に話し出す。


 カイラは他の人達とチームを組むために動き出す。


「いいなぁ。先輩と戦えるなんて」


 カイラとは違いその場に残っていたヒカリがそう呟く。


 ヒカリもこっち側の仕事。話がなかったってことは敵としてではなく回復系の仕事、怪我人の治療係か。


「ヒカリは救護班か」

「はい。なので全然楽しめないです」

「そっか。なら、先生に相談して最初の方は俺と行動するか?」

「えっ。いいんですか?」


 ヒカリの顔がぱっと明るくなる。


「俺は構わないよ。ヒカリも最初は怪我人もいないし暇でしょ」

「はい、お願いします!」


 俺達はその後すぐにセルビアに許可を取りに行く。


「ユヅキ君とヒカリさん。今日はよろしくお願いします」


 二人で並んで


「はい」


 と返事をする。


「これからなんですがユヅキ君はすぐにこのエリアの好きな場所にヒカリさんは街の近くの救護エリア移動してください」


 そう言われたが返事をする前に


「あの、そのことなんですけど。最初の方は怪我人もでないと思うのでヒカリと行動してもいいですか?」


 と尋ねる。セルビアは即決できる話ではないようで悩む。


「うーん。どうしましょうか」

「ヒカリもこのオリエンテーションを楽しむ権利があります。なのでそれくらいは許してもらえませんか?」


 と頭を下げる。

 セルビアは悩んだ末に OKを出してくれた。

 やった!と喜ぶヒカリ。


 しかし、セルビアは続ける。


「そうですね。ユヅキくんが一緒なら。いや、でも、連絡が取れないので他の救護班の人と離れるのは」


 連絡手段があればいいと。それくらい準備できる。


「それならこれを使ってください。」


 そう言って腰袋から《連絡》のスキルを持つ魔道具を取る。ギルドにあるものよりも能力が低く一方的な連絡しかできないが今回はそれで十分だろ。


 念の為に腰袋を身につけて来て正解だったな。


「これって」

「連絡用の魔道具です。連絡が来るまではヒカリと一緒に戦っているので時間になったらこれに向かって場所の連絡お願いします。」


 時間さえ教えてもらえれば後は俺がヒカリを救護室に戻れるようにすればいい。


「こんなもの使っていいのでしょうか?ユヅキ君の物でしょう?」


 セルビアは受け取っていいのかどうか困惑している。


「余ってるので全然いいですよ」


 と笑って答える。


「そうですか。わかりました。ありがたく使わせてもらいます」


 そんなことを考えていると 魔道具を受け取ったセルビアは笑顔でお礼を言う。


「ユヅキくんはこの剣と宝を持って行って下さい」


 魔道具と交換で剣と宝石を受け取り、


「じゃあ、行くか」

「はい!」


 とヒカリの元気な返事を聞いて早速、俺たち二人は街を出て森に入り、近くのダンジョンまで走った。

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