第29話 スケルトン

 それから二層、三層と同じようなことが続き、俺たちは男について行くだけだった。何度か手伝おうと男の元へ足を運んだが、


「俺だけでどうにかできる。手を出すな」

「下がってろ。俺はこいつらに躓くような人間じゃない」


 などと言われて渋々下がりただ邪魔しないようにしていた。


 どんにも焦っているようだった。なぜそうなのかわからない。だが、他者を見ることをせず、自分のやりたいように戦う。エミのスキルがなければ扱うのは難しいタイプの人間。


 ダンジョン攻略をしてた時にこんなやつと一緒に戦った経験がないので接し方、扱い方がわからない。ダンジョン攻略してた時にもう少し色々な人とコミュニケーションとっておけばと後悔する。


 男は言った通りに一人でダンジョンを攻略して三層までたどり着いた。その間にいくつものチームを抜かしたのでかなりペースは早いと言える。


「流石は広範囲で遠近両方に対応できる炎のスキルだな。二、三層とはいえこんなにも早く攻略できるなんて」


 かなり小さいタイプのダンジョンであるが進みは早い。ダンジョン内での動きは明らかに初心者そのものだが、スキルが強いお陰でスムーズに攻略ができている。


「これだと俺たちの出番なさそうだな」


 冗談交じりでそう言う。


「それはそれで試験の点数的に有利なので嬉しいですけど、せっかくの先輩との初めてのダンジョン攻略で先輩の戦う姿を見れないのは嫌です」


 俺とダンジョン攻略をしたいとずっと言っていたのにその機会を失うのも可哀想だし、俺としてもダンジョンに潜っているのに魔物と戦わずに終わるというのも面白くない。


「そうだなー。でも、あと少ししたら彼も疲れてくるだろうから、そしたら俺がやるよ」


 どんなにスキルが強くてもさっきの試合でかなり体力を消耗していたし、さっきの試合から見ても体力はそこまで多くないので流石に次の階に行く頃には疲れが見える筈だ。


 そしたら俺が戦えばいい。


 ダンジョン攻略をし始めてもう三層を攻略し終わる頃、目の前では未だにモンスターが出現すると炎を放っていた。しかし、その炎が最初よりも弱くなっているのは見て分かった。


「そろそろだな」


 本来なら体力も準備万端で尚且つ、三人で協力しながら攻略するものを一人でここまでやれたことは素直にすごいと思う。


 それから何度か魔物が現れるが俺が飛び出す前に倒していたが四層に続く階段見つけた時にはもう男は限界が近いようで息が荒くなっていた。


 そんな男の元にスケルトンと呼ばれる骸骨の魔物が現れる。スケルトンの手には剣が握らられていた。


 男は先ほど同様に炎を放ちスケルトンを焼き払おうとする。が、その炎の威力は弱く、炎の中からスケルトンが姿を変えずに現れる。


 骸骨なだけあってスケルトンは炎に強い。生半可な炎ではダメージを与えることは困難である。


「なんで効かないんだよ」


 と叫ぶ男に真っ直ぐ向けてスケルトン剣を振りかざす。男は威力の弱い炎を連発するがスケルトンは動きを止めない。


 男が冷静でかつ体力も残っていたら余裕だっただろう。


 しかし、さっきの対人戦から連戦でしかも全力を出し続けていたため、今は体力の消耗により思考力と身体能力はかなり下がっている。


 それゆえに何もできなかった。


 そして、スケルトンの剣が目の前に来た時、男は声が出す何も発することはできなかった。


 代わりに、


「嘘」


 と男の背後でぽつりとヒカリが呟いた。


 男は何もできなかった。男の持つ障壁の魔道具が光だし発動しそうになる。だが、発動しなかった。


 その代わりに男の背後から一気に距離を詰め


「悪いけど、こいつは俺が倒させてもらう」


 と一言だけ発して俺はスケルトンを剣で吹き飛ばした。


「どうやって」


 男は距離をとって歩いていた俺が自分の目の前にいることが信じられないようだった。


「やばいと思ったから走っただけ。あれくらいの距離ならすぐだよ」


 ダンジョンに潜り何度もスケルトンと戦った経験があったため、男の炎が効かないことくらいは知っていた。


 だから、スケルトンを見た瞬間、走り出していた。まあ、そこそこ距離があったから全力を出して走ったが。


 男の質問に答えていると吹き飛ばしたスケルトンが起き上がる。


「詳しい話をするのはあいつを倒してからだ。少し待ってろ」


 そう伝えて、動き出すスケルトン目掛けて地面を蹴る。


 スケルトンが2.3歩動いている間に距離を縮めて勢いをそのままで水平に剣を振りスケルトンを真っ二つに切り裂く。そして、中心にあるコアと呼ばれるスケルトンの魂を破壊した。


 コアがなくなったスケルトンはその場で動きを止め、バラバラに崩れた。バラバラになったスケルトンを確認すると近くで何かが動く気配がする。


「あっちもか」


 それがこちらに気づく前に距離を詰める。近づくとそれがスケルトンだとわかった。


 そのまま速度を落とさずに距離を詰める。スケルトンが俺に気がついた頃にはもうスケルトンの真横まで近づいていた。


「これで、終わりか」


 そのまま一撃を入れようとするがスケルトンのコアを軽い防具が覆っていたため、そのまま走り、軽く剣を振って防具を飛ばして、スケルトンの横を通り過ぎる。


「決めきれなかったな」


 スケルトンは身を守るために自分の体と酷似した骨の棍棒を振り上げようとするが動きを止めることなく反転して、棍棒がてっぺんまで上がり切る前に、その腕の関節部目掛けて剣を振り上げて腕を切り裂く。


 スケルトンは身体能力、索敵能力、知能などが最低クラスのモンスターで初心者でも倒すことができるが、他のモンスターよりも再生能力がすこし高く、コア以外を攻撃しても再生される可能性がある。


「これで終わりと」


 再生されないように素早く、大きく振り上げた剣を一気に下ろしてスケルトンの顔をかち割り、そのままコアまで振り下ろす。


 コアごと真っ二つにされたスケルトンはコアによる制御が効かなくなってそのまま崩れ去りただの骨となった。

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